言語聴覚士になるには?仕事内容や国家試験、学費について解説

「言語聴覚士(ST)になるにはどうしたらいい?」
「資格を取るにはどんなステップが必要?」
「学費はどれくらいかかる?」など、言語聴覚士を目指すうえで気になることはたくさんありますよね。
言語聴覚士は、話す・聞く・飲み込むといった機能のリハビリを通じて、患者さんの生活を支える専門職です。
国家資格が必要なため、養成校での学習や国家試験の合格が求められますが、効率的なルートを選ぶことで最短で資格取得を目指すことも可能です。
本記事では、言語聴覚士になるにはどうしたらいいのか、仕事内容から国家試験の詳細、学費の目安まで、必要な情報をわかりやすく解説します。
「言語聴覚士を目指したい!」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
言語聴覚士になるには?
そのためには、まず受験資格を満たす必要があります。
国家試験の受験資格を得るには、文部科学大臣が認定した学校や、都道府県知事が指定した養成所を修了しなければなりません。
受験資格を取得するためのルートはいくつかありますが、養成校に入学するためには、最低でも高校を卒業していることが前提となります。
国家試験について
言語聴覚士として働くには、「言語聴覚士国家試験」 に合格する必要があります。
この試験は、全200問の筆記試験で、5つの選択肢の中から正解を1つ選ぶ形式で行われます。
養成校では、最終学年になると国家試験に向けた集中対策が行われ、学生がスムーズに合格できるようサポートされています。
言語聴覚士国家試験の詳細
《試験内容》
筆記試験(5択問題・200問)
- 基礎医学
- 臨床医学
- 臨床歯科医学
- 音声・言語・聴覚医学
- 心理学
- 音声・言語学
- 社会福祉・教育
- 言語聴覚障がい学総論
- 失語・高次脳機能障がい学
- 言語発達障がい学
- 発声発語・嚥下障がい学
- 聴覚障がい学
《試験日程》
毎年2月に実施
《試験会場》
- 北海道
- 東京都
- 愛知県
- 大阪府
- 広島県
- 福岡県
合格率について
2024年2月17日に実施された第26回言語聴覚士国家試験の合格率は72.4%でした。
リハビリテーション職の中でも、理学療法士や作業療法士の合格率は例年80~90%前後で推移しているため、それらと比較するとやや難易度が高い試験と言えます。
しかし、養成校で学んだ知識やスキルをしっかり身につけていれば、十分に合格を目指せる試験でもあります。
以上が、言語聴覚士になるにはどうしたらいいのか、その方法についてでした。
続いて、言語聴覚士になるための養成校についてみていきましょう。
【言語聴覚士】養成校について
養成校で何を学ぶ?
言語聴覚士を目指す養成校のカリキュラムは、大きく「基礎分野」「専門基礎分野」「専門分野」の3つに分類されます。
基礎分野 では、人文科学や社会科学といった一般教養を学び、幅広い知識を身につけます。
専門基礎分野 では、基礎医学や臨床医学、臨床歯科学など、言語聴覚障がいに関する医学的な基礎知識を習得します。
専門分野 では、言語聴覚士として関わる障がいや疾患について深く学びます。
授業では、講義と演習を組み合わせながら、失語症や高次脳機能障がい、言語発達障がい、聴覚障がい、摂食・嚥下障がいなどの原因や症状、治療法について学びます。
また、実践的なリハビリ技術を身につけることで、現場で役立つスキルを養うことができます。
3~4年制の養成校
高校を卒業した方は、文部科学大臣が指定する大学や短大(3~4年制)、または都道府県知事が認定する専修・専門学校(3~4年制)を修了することで、国家試験の受験資格を得ることができます。
【4年制大学】
医療福祉系や保健科学系の学部に設置されている「言語聴覚学科」や「言語聴覚学専攻」で学ぶことができます。
これらの学科は医学や心理学と密接に関わっており、言語聴覚療法を幅広い視点から深く学べる環境が整っています。
また、専門知識だけでなく、一般教養も身につくため、視野を広げられるのが大学の特徴です。
4年間の学びや人との交流を通して得た経験は、将来、患者さんとのコミュニケーションに役立つでしょう。
【3年制短大】
短大も大学と同様に、専門知識に加えて一般教養を学ぶことができます。
4年制大学よりも1年間短いため、「基礎をしっかり学びつつ、早く現場に出て経験を積みたい」と考えている方に向いています。
また、さまざまな分野の学生と交流できる環境があるため、人との関わりを通じてコミュニケーション力を養うことも可能です。
この力は、言語聴覚士として働く際にも大いに役立つでしょう。
【専門学校(3~4年制)】
専門学校では、言語聴覚士の国家資格取得を目的とし、実践的なカリキュラムが組まれています。
大学や短大よりも臨床実習や国家試験対策に力を入れている学校が多く、即戦力として現場に出る準備をしっかり整えられるのが特徴です。
2年制の養成校
すでに4年制大学を卒業している場合は、専修・専門学校(2年制)または指定大学・大学院の専攻科に進学しましょう。
必要な課程を修了することで国家試験の受験資格を得られます。
その他
特定の大学で言語聴覚士養成に関連する科目を履修している場合は、指定校で1年間学ぶことで国家試験を受験できることがあります。
また、海外の大学で言語聴覚分野を学んだ方は、厚生労働省に書類を提出し認定を受けることで、受験資格を取得できる可能性があります。
どの進学ルートを選ぶかは、自分の学歴や目標に合わせて慎重に検討することが大切です。
修業年数の違い
言語聴覚士法に基づく国家試験の受験資格を得るためには、合計93単位(そのうち臨床実習が12単位)を修得する必要があります。
この単位数は、4年課程・3年課程・2年課程のいずれにおいても共通です。
したがって、教育課程や臨床実習の内容に違いはなく、異なるのは学習期間の長さです。
そのため、修業年限が短いほど、より密度の高い学習スケジュールになると考えられます。
なお、2年課程は大学卒業者を対象としているため、大学在学中に履修した科目(外国語や保健体育など)が一部免除されるケースもあります。
大学の学費について
初年度に必要な費用は 81万7,800円~212万3,300円 の範囲で設定されています。
学費(初年度納入金)の分布(学部・学科・コース別)
学費の範囲 | 学部・学科・コース数 |
---|---|
80万円未満 | 0校 |
80万~100万円 | 2校 |
100万~120万円 | 0校 |
120万~140万円 | 8校 |
140万~150万円 | 5校 |
150万円以上 | 46校 |
専門学校の学費について
初年度納入金は 120万円~183万円 の間で設定されています。
学費(初年度納入金)の分布(学部・学科・コース別)
学費の範囲 | 学部・学科・コース数 |
---|---|
80万円未満 | 0校 |
80万~100万円 | 0校 |
100万~120万円 | 1校 |
120万~140万円 | 9校 |
140万~150万円 | 5校 |
150万円以上 | 9校 |
※ 上記の金額は、入学時に必要な学費(初年度納入金)を示しており、スタディサプリ進路に掲載されている情報をもとにしています。
卒業までにかかる総費用については、各学校の公式ホームページをご確認ください。
通信教育では言語聴覚士になれない
言語聴覚士の資格は、通信教育だけでは取得することができません。
これは、国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣が指定した学校や、都道府県知事が認定した養成所を卒業する必要があるためです。
国家試験の受験資格を取得するルートはいくつかありますが、いずれのルートでも、養成所や学校への通学が必須となります。
また、養成所に入学するには、高校卒業が最低条件となっている点にも注意が必要です。
そのため、通信教育のみで資格を取得することは現状では不可能となっています。
加えて、言語聴覚士は、先天的または後天的に言葉によるコミュニケーションに困難を抱える方々を支援する専門職です。
現場で適切なサポートを提供するためには、専門的な知識や技術の習得が欠かせません。
そのため、学校での実践的な学びが重要になります。
働きながら取得を目指す方法
昼間に通学できる環境が整っている方であれば、通常の養成課程で学ぶことが可能です。
しかし、日中に仕事をしている方でも、言語聴覚士を目指すことは不可能ではありません。
一部の学校や養成所では夜間課程が設けられており、昼間に仕事をしながら学ぶことも可能です。
そのため、仕事と両立を考えている方は、夜間課程を提供している学校を選択肢に入れるとよいでしょう。
ただし、ここで注意すべき点として 「臨床実習」 があります。
言語聴覚士の資格取得には、現場での実習が必須となりますが、夜間の授業とは異なり、実習は昼間に行われることがほとんどです。
さらに、実習期間が1ヶ月以上に及ぶケースもあるため、仕事との両立が難しくなる可能性があります。
そのため、働きながら資格取得を目指す場合は、実習のスケジュールや勤務先の理解を事前に確認し、両立が可能かしっかり検討することが大切です。
以上が、言語聴覚士の養成校についてのお話でした。
続いて、言語聴覚士の仕事内容について詳しく解説していきます。
言語聴覚士の仕事内容について詳しく解説
脳卒中や頭部外傷などによる 「言語障がい」 では、言葉をうまく話せない、聞き取っても理解できない、文字の読み書きが難しいといった症状が現れます。
さらに、咽頭がんなどで声を失い発声が困難になる 「音声障がい」、聴力の低下が影響する 「聴覚障がい」、食べ物や飲み物を飲み込む機能が低下する 「嚥下障がい」、そして 「ことばの発達の遅れ」 など、多岐にわたる支援が求められます。
言葉を話すことが難しいといっても、その程度や原因は人それぞれ異なります。
リハビリを進めるうえでは、検査やカウンセリングを通して障がいの特性を正しく把握し、最適な訓練方法を見極めることが重要です。
「話す」「聞く」 といった能力が制限されると、人とのコミュニケーションが困難になり、精神的な影響を受けることも少なくありません。
また、原因が明確でないケースでは、心理的なストレスが要因となっている場合もあります。
そのため、表面的な症状だけでなく、患者さんの気持ちや背景にも目を向けたアプローチが大切です。
言語聴覚士は、機能回復の支援だけでなく、患者さんがより良い生活を送れるよう、実践的なコミュニケーション手段を提案することも求められます。
リハビリの流れと支援の進め方
リハビリの第一歩は、患者さんの障がいの状態を正確に把握することです。
カウンセリングや検査を通じて詳細な評価を行い、家族からの情報提供も活用しながら支援計画を立てます。
病院で勤務する場合は、医師や看護師、理学療法士、作業療法士などのリハビリスタッフと連携し、リハビリの方向性を決定します。
また、リハビリの進行状況を記録することも重要です。
日々の変化を記録しておくことで、より効果的な支援を提供できるだけでなく、他の医療スタッフと情報を共有する際にも役立ちます。
言語聴覚士が提供するリハビリ内容は、障がいの種類によって異なります。
以下に、主な障がいの種類と、それぞれのリハビリ内容について説明します。
聞こえに関する障がい
「聞こえの障がい」 とは、音や言葉が聞き取りにくい状態を指します。
難聴には、生まれつきのものや加齢によるものがあり、患者さんによって症状はさまざまです。
リハビリでは、聴力検査を行い、補聴器の調整や、聞き取りやすいコミュニケーション方法の指導を実施します。
言語発達期にある幼児の場合は、言葉の習得をサポートするトレーニングも行います。
話すことの障がい
脳卒中や事故の影響で、口や舌の動きが制限されると 「構音障がい」 が生じ、発音が不明瞭になったり、言葉がはっきりしなくなったりします。
また、スムーズに話せない 「吃音(きつおん)」 も、この分野に含まれます。
リハビリでは、口唇や舌の機能を回復させるトレーニング、発音練習、音読訓練などを行い、スムーズな発話ができるよう支援します。
食べることの障がい
食事中に食べ物をこぼす、飲み込めない、むせるといった 「摂食・嚥下障がい」 では、咀嚼や嚥下機能を改善するためのトレーニングを行います。
障がいの原因は、先天的な口腔や喉の異常、神経や筋肉の障がい、精神的な要因、加齢などさまざまです。
リハビリでは、食事の姿勢や食べ方の指導、補助器具の活用など、患者さんにとって最適な方法を見つけて支援します。
また、管理栄養士や医師と連携し、食事内容の調整や治療方針を決定することもあります。
ことばの発達の遅れ
知的障がいや発達障がいが原因で、言葉の発達が遅れるケースでは、コミュニケーション能力を高めるための支援が必要になります。
リハビリでは、絵カードを使った言葉の練習、ジェスチャーを交えた意思伝達の訓練などを行い、こどもが楽しく取り組めるよう工夫します。
また、家族へのアドバイスを通じて、こどもが安心して成長できる環境を整えることも重要な役割です。
失語症・認知症などの後天的な障がい
脳卒中や交通事故による脳の損傷が原因で、言葉を理解したり話したりすることが困難になる 「失語症」があります。
また、記憶障がいを伴う 「高次脳機能障がい(認知症)」 では、言葉だけでなく、計算や記憶力の低下が見られることもあります。
リハビリでは、言語機能の回復を目指すとともに、残された能力を活かしてコミュニケーションを補助する方法を模索します。
例えば、ジェスチャーや文字、絵を使った伝達手段を提案し、患者さんが意思を表現しやすくなるよう支援します。
就職先について
言語聴覚士(ST)は、「話す」「理解する」などのコミュニケーション能力が低下した方や、食事が困難になった高齢者、ことばの発達に課題のあるこどもなどを支援する専門職です。
そのため、働く場所は医療・福祉・教育といった幅広い分野に広がっています。
特に就職先として多いのは病院ですが、その中でも リハビリテーション科・脳神経外科・耳鼻咽喉科・神経内科・小児科・口腔外科 など、さまざまな診療科で言語聴覚士のニーズがあります。
近年では高齢化の進行に伴い、特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどの介護施設でも活躍の場が広がっています。
言語聴覚士として働く際には、「どんな人を支援したいのか」「どの分野で専門性を深めたいのか」を考えながら、適した職場を選ぶことが重要です。
医療分野での活躍
- 大学病院
- リハビリテーション専門病院
- リハビリテーションセンター など
日本言語聴覚士協会の調査(2012年7月)によると、言語聴覚士の約67.8%が医療機関で働いていると報告されています。
脳卒中などによって 話す・聞く(理解する)・読む・書く といった言語機能が低下するケースでは、早期のリハビリが重要になります。
大学病院や救急外来がある医療機関では、 急性期(発症後数日~1カ月程度) の段階から言語聴覚士が関わり、適切なリハビリを提供します。
その後、回復期に移行した患者さんのリハビリは、専門病棟やリハビリテーション病院、リハビリセンターなどで継続的に実施されます。
高齢者福祉・保健分野での活躍
- 特別養護老人ホーム
- デイサービスセンター
- 認知症専門病院
- 訪問リハビリテーション など
高齢者向けの施設では、 摂食・嚥下(えんげ)障がい のケアが言語聴覚士の重要な役割の一つです。
加齢により咀嚼や嚥下機能が低下することで、食事が困難になったり、誤嚥による肺炎のリスクが高まったりするケースが増えています。
特に、認知症の方の場合、 食べ物を正しく認識できない ことがあり、そういったケースへのサポートも求められます。
嚥下機能の低下による 誤嚥性肺炎 は、高齢者にとって生命に関わる重大なリスクとなるため、言語聴覚士が適切なトレーニングや食事指導を行うことが非常に重要です。
また、「食べること」は 生きる喜び に直結する行為であり、リハビリを通じてその楽しさを取り戻すことも、言語聴覚士の大切な役割となります。
こどもの福祉・療育分野での活躍
- 特別支援学校
- 小児療育センター
- 発達障がい児支援センター
- 児童デイサービス
- 幼稚園・保育所・小学校・中学校 など
発達障がいや知的障がい、自閉症などが原因で ことばの発達が遅れているこども に対し、適切なサポートを提供します。
言語聴覚士は、こどもが訓練に慣れるような環境を整え、あそびを交えながらことばの発達を促していきます。
例えば、以下のような方法で支援を行います。
- ボールやおもちゃを使い、自然な会話のきっかけを作る
- 絵カードを使ったクイズで楽しく単語を学ぶ
- なぞなぞやゲームを通じて言葉の理解を深める
また、こども本人だけでなく、 保護者へのサポート も重要な役割の一つです。
家庭でできるトレーニング方法のアドバイスをしたり、発達に対する不安を解消するための相談対応を行ったりすることで、親子が安心して成長できる環境づくりを支援します。
さらに、 学童期のこども には、読書・書字・計算などの学習指導を行うこともあります。
年収・給料・収入について
言語聴覚士の給与は、勤務する施設の種類や規模、地域差、また常勤・非常勤などの雇用形態によって異なります。
求人情報や関係者の話を参考にすると、年収の相場は約350万~450万円程度となっており、月収に換算すると25万~30万円前後が一般的です。
理学療法士や作業療法士と比較すると、言語聴覚士の平均給与はやや低めとされています。
その背景には、この資格が国家資格として制定されたのが1997年と比較的最近であることや、従事する年代層が20代~40代に多いことが影響しています。
また、言語聴覚士は医療職に分類されますが、看護師のように夜勤や土日勤務が発生することが少ないため、夜勤手当や休日手当による給与の上乗せがあまり見込めません。
しかし、日勤中心で安定した働き方ができることは、ワークライフバランスを重視する方にとって大きなメリットです。
国家資格を活かしながら、無理なく長く働ける環境が整っている点は、言語聴覚士の魅力のひとつと言えるでしょう。
将来性について
語聴覚士(ST)は、他の医療職やリハビリ専門職に比べると、まだ資格取得者の数が多くありません。
そのため、全体的に人材不足が続いています。
さらに、高齢化の進行や、発達障がいのあるこどもへの療育ニーズの増加といった社会的な背景から、言語聴覚士の役割は年々重要性を増しています。
加えて、国の方針として、医療保険から介護保険への移行が進められており、在宅で生活する高齢者に対するリハビリの必要性が今後ますます高まることが予想されます。
日本における言語聴覚士の現状
日本の言語聴覚士の国家資格が誕生したのは1997年と比較的新しく、現在の有資格者数は約2万7000人とされています。
一方、作業療法士(OT)は約7万人とされており、言語聴覚士の数はまだ少ない状況です。
そのため、言語聴覚士のニーズが拡大する一方で、人材が十分に確保されておらず、就職先に困ることはほとんどないと言われています。
退院後のリハビリ現場での活躍が期待される
病院での治療を終え、在宅生活へ戻る患者の支援には、介護や福祉分野での言語聴覚士の配置が求められています。
しかし、現在の言語聴覚士の多くは病院勤務が中心で、退院後のフォロー体制が十分ではないのが現状です。
今後、国の政策によって医療保険から介護保険への移行が進めば、病院以外の介護・福祉施設や訪問リハビリテーションなどでの言語聴覚士の活躍がますます求められるようになるでしょう。
特に、デイサービスや通所リハビリ施設などでは、言語や嚥下のリハビリを必要とする高齢者が増えると予想されており、今後の活躍の場として注目されています。
高齢者ケアの重要性が増す
高齢者の人口増加に伴い、介護・福祉施設や在宅でのリハビリニーズは今後も拡大すると考えられます。
加齢に伴う「老人性難聴」や「摂食・嚥下障がい」は多くの高齢者に見られる問題であり、認知症によるコミュニケーション障がいを抱える人も増えています。
そのため、高齢者向けのリハビリを深く学ぶことは、言語聴覚士としての専門性を高めるうえで非常に重要です。
摂食・嚥下障がいリハビリの専門性が求められる
言語聴覚士のリハビリ業務は、大きく分けて「言語・コミュニケーション障がい」と「摂食・嚥下障がい」の2つに分類されます。一般的には「言葉のリハビリ」がメインと思われがちですが、近年は高齢者のケアにおいて「食べること」のサポートも重要視されています。
食事を適切にとることは、栄養状態の維持や筋力の回復につながるため、リハビリの成果を左右する重要な要素です。
そのため、言語聴覚士が摂食・嚥下リハビリの専門性を高めることは、今後さらに求められるでしょう。
また、一部の現場では作業療法士(OT)が「言語リハビリ」を担当するケースも増えており、言語聴覚士としての強みを発揮するためには、「食べること」に関する専門性を高めることが差別化のポイントとなります。
今後、摂食・嚥下リハビリのスキルを深めることが、言語聴覚士としての活躍の幅を広げる鍵となるでしょう。
以上が、言語聴覚士の仕事についてのお話でした。
最後に、言語聴覚士に適している人の特徴をご紹介します。
言語聴覚士に適している人の特徴は?
また、リハビリはすぐに成果が出るものではなく、患者さんと共に根気強く取り組むことが重要です。
中には、治療への意欲を失い、リハビリに消極的になる患者さんもいます。
そうした方々に寄り添い、気持ちを尊重しながら適切にサポートできることが、言語聴覚士に適している人の特徴です。
コミュニケーション力がある
リハビリの進行は、治療プログラムの内容だけでなく、患者さんとの関係性にも大きく影響されます。
同じ治療法を用いたとしても、患者さんの個性や心理状態によって結果は異なるため、相手の考えや気持ちをくみ取りながら適切に対応する力が求められます。
人との会話を楽しめる人、相手の気持ちに寄り添うことができる人は、言語聴覚士としての適性が高いでしょう。
粘り強く取り組める
患者さんの回復ペースは人それぞれであり、時には思うような結果が得られないこともあります。
そのため、焦らずにじっくりと向き合い、相手のペースに合わせて根気よく支援できることが大切です。
長期間にわたるリハビリを続けるには、忍耐力と柔軟な対応力が不可欠です。
共感力がある
言語障がいや嚥下障がいを抱える患者さんの多くは、自分の気持ちをうまく伝えられないことにストレスを感じています。
また、病気や事故によって日常生活に支障をきたし、不安を抱えている方も少なくありません。
そうした患者さんの気持ちを理解し、心に寄り添うことができる姿勢は、言語聴覚士にとって重要な要素のひとつです。
観察力に優れている
リハビリでは、発声や口の動きなど、わずかな変化を見極めることが求められます。
患者さんの状態を的確に把握し、適切な改善策を提案するためには、細かな点に気づく力が必要です。
また、言葉での表現が難しい患者さんに対しては、表情やしぐさから気持ちを読み取ることも重要になります。
ニーズを的確に判断できる
リハビリの最終目標は、患者さんが自分らしい生活を取り戻すことです。
そのため、治療を進める上で、「今、患者さんが最も困っていることは何か?」「どのような支援が必要か?」といった視点を持つことが大切です。
家族や医療スタッフと連携しながら、患者さんに最適なリハビリプランを考えられる力が求められます。
チームワークを大切にできる
言語聴覚士は、医師や看護師、理学療法士、作業療法士、介護スタッフ、栄養士など、多くの専門職と連携しながら患者をサポートします。
それぞれの専門知識を活かしながら治療を進めるためには、協調性が不可欠です。
円滑なコミュニケーションを取りながら、チームの一員として柔軟に対応できる姿勢が求められます。
学び続ける意欲がある
言語聴覚療法に関連する分野では、日々新たな研究が進められています。
そのため、資格取得後も最新の知識を取り入れ、治療に活かしていくことが重要です。
勉強会や研修に積極的に参加し、常にスキルアップを図る姿勢を持つことで、より質の高いリハビリを提供できるでしょう。
以上が、言語聴覚士に適している人の特徴でした。
言語聴覚士になるには、指定の養成課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
養成課程には大学・専門学校があり、選ぶルートによって学費や学習期間が異なります。
また、言語聴覚士の仕事は、ことばや嚥下機能のリハビリを通じて患者さんの生活を支えるやりがいのある職業です。
資格取得までの道のりは決して簡単ではありませんが、しっかりと学び、国家試験に向けた対策をすれば、夢を実現することができます。
「言語聴覚士になりたい!」という気持ちを大切に、自分に合った学び方を見つけ、一歩ずつ進んでいきましょう!