言語聴覚士は人手不足?少ない理由や需要についてわかりやすく解説

言語聴覚士(ST)は、ことばや嚥下(飲み込み)のリハビリを専門とする重要な医療職ですが、「人手不足」「求人は多いの?」と気になる方も多いのではないでしょうか?
近年、高齢化の進行や医療の発展により、言語聴覚士の需要は年々高まっています。
しかし、言語聴覚士の数は他のリハビリ職と比べても少なく、慢性的な人手不足が課題となっています。
本記事では、言語聴覚士が人手不足になっている理由や、今後の需要についてわかりやすく解説します。
これから言語聴覚士を目指す方や、就職・転職を考えている方はぜひ参考にしてください!
言語聴覚士は人手不足なのか
言語聴覚士の有資格者数は、2019年時点で約3万人とされており、理学療法士(約17万人)や作業療法士(約9万人)と比較すると、圧倒的に少ない状況です。
その後も理学療法士・作業療法士の有資格者数は増え続けており、リハビリ職の中でも言語聴覚士の人材は限られていることがわかります。
また、2023年の国家試験の受験者数を見ても、言語聴覚士はリハビリ職の中で最も少ない人数となっています。
2023年 国家資格受験者数
- 理学療法士:12,948人
- 作業療法士:5,719人
- 言語聴覚士:2,515人
これだけの差があることから、「言語聴覚士は需要が少ないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、実際には小児から成人まで幅広い領域で高いニーズがあり、就職先も病院・介護施設・学校など多岐にわたります。
特に現場では、言語聴覚士の数が不足している状況が続いており、今後も必要とされる職種の一つです。
以上が、言語聴覚士が人手不足なのか否かについてのお話でした。
続いて、言語聴覚士の資格保有者推移をみていきましょう。
言語聴覚士の資格保有者推移
日本言語聴覚士協会の発表によると、2024年3月時点での累計有資格者数は41,000人を超え、年々増加しています。
国家試験合格者数の推移(2024年3月現在)
年/回 | 合格者数 (名) | 累計有資格者数 (名) |
---|---|---|
2024年(第26回) | 1,761 | 41,657 |
2023年(第25回) | 1,696 | 39,896 |
2022年(第24回) | 1,945 | 38,200 |
2021年(第23回) | 1,766 | 36,255 |
2020年(第22回) | 1,626 | 34,489 |
言語聴覚士として働くためには国家資格の取得が必須ですが、日本言語聴覚士協会への入会は任意となっています。
2024年3月時点での協会会員数は21,603人で、有資格者のうち約51.8%が会員登録しています。
言語聴覚士として働く人の実態
協会会員のうち、約84.7%にあたる18,290人が常勤または非常勤の言語聴覚士として勤務しており、医療・介護・教育など幅広い分野で活躍しています。
また、言語聴覚士は30~40代の女性が多く、出産や育児のために一時的に職を離れるケースもあります。
そのため、日本言語聴覚士協会に未登録の有資格者を含めると、実際に現場で働いている言語聴覚士の数はさらに多いと考えられます。
以上が、言語聴覚士の資格保有者推移についてでした。
続いて、言語聴覚士が人手不足な理由についてみていきましょう。
言語聴覚士が人手不足な理由
では、なぜ言語聴覚士は人手不足なのでしょうか?
その理由として、以下の3つが挙げられます。
- 他のリハビリ職に比べて認知度が低い
- 国家資格の取得が難しいと感じられやすい
- 転職や給与面でのネガティブなイメージがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
他のリハビリ職に比べて認知度が低い
言語聴覚士は、理学療法士や作業療法士と比べて一般的な認知度が低い傾向にあります。
理学療法士や作業療法士は、ケガや病気の治療後に直接リハビリを受ける機会が多いため、多くの人がその存在を知っています。
一方、言語聴覚士は主にことばや嚥下(飲み込み)のリハビリを担当するため、一般の人が接する機会が少なく、知られる機会が限られています。
また、言語聴覚士は他のリハビリ職に比べて歴史が浅いことも、認知度の低さに影響しています。
国家資格制定年 |
---|
理学療法士・作業療法士:1965年 |
言語聴覚士:1997年 |
このように30年以上の差があるため、他の職種と比べるとまだ広く浸透していないのが現状です。
しかし、医療や介護の分野では言語聴覚士の重要性が認識されており、需要は年々高まっています。
また、夜勤がなく、比較的ワークライフバランスをとりやすい職種でもあるため、働きやすい環境が整っている点も魅力のひとつです。
国家資格の取得が難しいと感じられやすい
言語聴覚士になるためには、国家試験に合格することが必須ですが、他のリハビリ職に比べて合格率が低いことが特徴です。
2023年 国家試験合格率
職種 | 合格率 |
---|---|
理学療法士(PT) | 87.4% |
作業療法士(OT) | 83.8% |
言語聴覚士(ST) | 67.4% |
このデータから、「言語聴覚士の試験は難しい」と感じる人が多いかもしれません。
しかし、試験の難易度自体が極端に高いわけではなく、過去問題の分析や基礎知識をしっかり押さえれば十分に合格を狙える試験です。
試験対策を計画的に行えば、合格は十分に可能です。
転職や給与面でのネガティブなイメージがある
「言語聴覚士は転職しにくい」「給料が低い」といったネガティブなイメージを持たれがちですが、実際には求人は多く、キャリアアップもしやすい職種です。
筆者自身も転職活動を始めてから2週間で希望条件に合う職場が見つかりました。
また、転職のたびに年収アップができており、経験を活かせる環境を選べば、給与面でも十分に向上が見込めます。
さらに、フリーランスや起業といった働き方を選ぶことで、より自由な働き方や収入アップの可能性も広がります。
以上が、言語聴覚士が人手不足な理由でした。
言語聴覚士の有資格者数が少ない理由として、認知度の低さ、資格取得のハードル、ネガティブなイメージが影響していることがわかりました。
しかし、実際には医療・介護現場での需要は高く、キャリアの選択肢も豊富です。
資格試験は計画的に対策をすれば合格可能であり、転職や働き方の工夫次第で年収アップのチャンスも十分にあります。
言語聴覚士としてのキャリアに興味がある方は、現状のイメージにとらわれず、長期的な視点で働き方を考えてみてはいかがでしょうか?
続いて、言語聴覚士の将来性と現状についてお話していきます。
言語聴覚士の将来性と現状について
しかし、実際には言語聴覚士の活躍の場は多岐にわたり、需要が高まっているため、就職に困ることはほとんどありません。
ここからは、言語聴覚士の現在の状況と将来性について、以下の3つの視点から解説します。
- 幅広い就職先がある
- 人手不足の業界がある
- 年収の推移と将来性
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
就職先の選択肢が豊富
言語聴覚士の仕事は、言語障がい、音声障がい、嚥下(えんげ)障がいなどのリハビリを提供することです。
対象となる患者さんは、小児から高齢者まで幅広く、就職先も多様な選択肢があります。
主な勤務先とその特徴
- 医療機関:一般病院、特定機能病院、診療所など
- 介護施設:介護老人保健施設、居宅サービス事業所など
- 福祉施設:障がい者福祉施設、児童福祉施設、保健所など
- 学校教育機関:特別支援学校、小・中・高等学校など
- 養成校:言語聴覚士指定養成所
- 研究・教育機関:研究施設、大学・専門学校など
- 企業・その他:補聴器メーカー、ST教材販売、一般企業など
出典:日本言語聴覚士協会「めざせ ST(言語聴覚士)」
このように、言語聴覚士の活躍の場は非常に広いため、将来的にも就職に困ることは少ないと考えられます。
人材が不足している分野がある
言語聴覚士の就職先が多様である一方で、業界によっては人手不足が深刻な課題となっています。
特に、医療・福祉・教育分野では言語聴覚士の需要が高まっていますが、資格取得者の数が限られているため、十分に人材が確保できていないのが現状です。
また、日本は急速に高齢化が進んでおり、高齢者の言語障がいや嚥下障がいに対応できる言語聴覚士の役割がますます重要になっています。
今後も、高齢者の増加に伴い、リハビリ職全体の需要が拡大していくと考えられます。
言語聴覚士の年収の変化
言語聴覚士の年収は、経験を積むことで着実に上がっていく傾向があります。
初年度の平均年収は約430万円ですが、年齢を重ねるにつれて増加します。
年齢別の平均年収
- 20〜24歳:3,286,000円
- 25〜29歳:3,795,600円
- 30~34歳:4,144,900円
- 35〜39歳:4,374,900円
- 40〜44歳:4,872,400円
- 45〜49歳:5,157,800円
- 50〜54歳:5,394,900円
- 55〜59歳:5,749,800円
- 60〜64歳:4,793,300円
- 65〜69歳:3,574,000円
- 70歳〜:3,296,900円
※理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士を含む平均値
年収は勤務先や地域によって差がありますが、キャリアを積むことで収入が増加し、特に管理職や専門分野でのスキルを高めることでさらなる収入アップが期待できます。
以上が、言語聴覚士の現状と将来性についてのお話でした。
続いて、言語聴覚士の供給が追いついていない理由についてお話していきます。
言語聴覚士の供給が追いついていない理由
その背景には、いくつかの要因が関係しています。
専門学校・大学の卒業生が少ない
言語聴覚士を養成する教育機関は全国的に限られており、年間の卒業生数も少ないのが現状です。
そのため、業界全体で人材の確保が難しく、各現場での負担が増大しています。
また、少ないスタッフで業務を回す必要があるため、働き方に負担がかかりやすい傾向があります。
その結果、過度な業務負担が離職につながるケースも少なくありません。
他職種への転職や離職が多い
言語聴覚士は、他の医療職と比較して転職や離職が多いとされています。
主な理由として、以下のような点が挙げられます。
- 給与水準が比較的低めである
- 業務の負担が大きい(少人数での対応が求められる)
- キャリアアップの選択肢が限られていると感じることが多い
これらの要因により、せっかく資格を取得しても長く続けられないケースがあり、人手不足の要因となっています。
地域による偏りがある
都市部と地方では、言語聴覚士の供給に大きな差があります。
特に地方では人手不足が顕著で、適切なリハビリを受ける機会が限られている患者さんも少なくありません。
その原因として、以下のような点が挙げられます。
- 地方には言語聴覚士を養成する学校が少ないため、新たな人材が育ちにくい
- 医療機関や介護施設が都市部ほど充実しておらず、働く環境が整っていない
このような地域格差が、言語聴覚士の供給不足をさらに深刻化させています。
以上が、言語聴覚士の供給が追いついていない理由でした。
言語聴覚士の需要は増え続けているものの、教育機関の数、離職率の高さ、地域ごとの人材の偏りといった要因により、供給が追いついていないのが現状です。
このまま需要と供給のバランスが崩れると、リハビリを必要とする患者への支援が十分に行き届かない可能性もあります。
次に、需要と供給のバランスが崩れるとどうなるのか、お話していきます。
需要と供給のバランスが崩れると?
言語聴覚士(ST)の人員が不足すると、医療・福祉現場に大きな負担が生じ、患者さんの回復や生活の質(QOL)にも影響を与えます。
リハビリを適切に提供できなければ、回復の遅れやスタッフの業務負担の増加につながるため、現場全体の効率が低下する可能性があります。
ここでは、言語聴覚士の供給不足が引き起こす具体的な影響について詳しく解説します。
患者さん一人あたりのリハビリ時間が不足する
言語聴覚士の数が足りない場合、患者さん一人に確保できるリハビリ時間が短縮され、回復が遅れるリスクがあります。
また、担当するスタッフの業務負担が増えることで、リハビリの質が十分に確保できない可能性もあります。
言語訓練や嚥下リハビリは、継続的なサポートが必要なため、十分な時間と質の高い指導が求められます。
医療・福祉現場の負担が増大
言語聴覚士の人員不足により、他の医療スタッフが業務を補う必要が出てきます。
その結果、現場全体の業務量が増え、チーム医療の効率が低下する恐れがあります。
特に、病院や介護施設ではリハビリを担当する職種が限られているため、言語聴覚士が不足すると現場の負担が大きくなるのが現実です。
十分なスタッフが配置されていないと、働きやすい環境の維持が難しくなる可能性もあります。
患者さんのQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす
リハビリが十分に提供されないと、言葉や嚥下機能の回復が遅れ、患者さんの生活の質が低下する要因となります。
特に、高齢者や障がいを持つ方にとって、適切なリハビリを受けられないことは精神的なストレスにもつながるため、孤立感や意欲の低下を引き起こすこともあります。
リハビリが十分に行われないことで、社会とのつながりが減少し、精神的な負担が増加するケースも考えられます。
家族や介護者の負担が増える
言語聴覚士の支援が十分に受けられない場合、家族や介護者がリハビリを補助しなければならない状況が発生します。
しかし、言語や嚥下のリハビリは専門的な知識や技術が必要なため、適切な指導なしでは十分なケアが難しくなります。
さらに、家族がリハビリを担うことで、介護疲れや精神的ストレスを感じるケースも多くなります。
支援体制が整っていないと、長期的なケアが負担となり、家族全体の生活にも影響を及ぼすことが懸念されます。
以上が、需要と供給のバランスが崩れたらどうなるかについてのお話でした。
言語聴覚士の人手が足りないと、患者さんの回復が遅れ、医療現場の負担が増し、介護者の負担も大きくなるという問題が生じます。
特に、リハビリの提供時間が短縮されることで、患者さんの生活の質が低下し、他職種の負担増加による医療サービスの質の低下にもつながる可能性があります。
また、家族や介護者にとっても、専門的な支援を受けられないことで介護負担が増し、精神的・身体的な負担が大きくなることが懸念されます。
言語聴覚士の適正な配置を進めることで、より良い医療・福祉環境を実現し、患者さん・家族・医療従事者の負担を軽減することが求められます。
次に、言語聴覚士の人手不足に対する対策について詳しく解説していきます。
言語聴覚士の人手不足への対策
言語聴覚士の人手不足を改善するためには、さまざまな対策が求められています。
特に、養成機関の拡充、資格取得の支援、待遇改善、職場環境の整備、職業の認知度向上が重要なポイントとなります。
養成機関の増設と支援制度の充実
言語聴覚士の人材を増やすためには、養成機関の拡充が不可欠です。
特に、地方に教育機関を設置することで、地域で学び、そのまま地元で働く人材を育成することが可能になります。
また、学費の補助や奨学金制度を充実させることで、経済的な理由で進学を諦める人を減らすことが期待されます。
これらの支援策は、地域ごとの人手不足の解消にもつながるでしょう。
資格取得のサポート体制の強化
言語聴覚士の国家試験は決して簡単ではないため、受験をサポートする仕組みが必要です。
具体的には、試験対策講座の提供や受験費用の補助といった支援が有効です。
こうした取り組みを充実させることで、資格取得を目指す人が増え、業界全体の人材不足を改善することができます。
特に、学生や若年層への支援を強化することで、将来的な言語聴覚士の確保につながるでしょう。
待遇の向上とキャリアアップの明確化
言語聴覚士が安心して長く働ける環境を作るためには、給与や待遇の改善が重要です。
特に、キャリアパスを明確にすることで、将来のビジョンが描きやすくなり、離職率の低下が期待されます。
例えば、管理職や専門職としてのキャリアアップの道を整えることで、仕事へのモチベーションを高め、より長く働ける環境を作ることが求められます。
働きやすい職場環境の整備
言語聴覚士が長く活躍できるためには、職場環境の改善も欠かせません。
- 人手不足の解消に向けた支援
- 労働時間の適正化
- ワークライフバランスの確保
こうした環境が整えば、資格取得後の定着率が向上し、業界全体の人材不足の解決につながります。
言語聴覚士の認知度向上
言語聴覚士の認知度を上げるためには、積極的な情報発信が必要です。
SNSやテレビ、新聞などのメディアを活用し、言語聴覚士の役割や社会的重要性を広めることが求められます。
また、学生向けの進路ガイダンスや講演会を通じて、言語聴覚士という職業の魅力を伝えることで、志望者の増加が期待できます。
職業の知名度が上がることで、将来的な人手不足の解決につながるでしょう。
以上が、言語聴覚士の人手不足に対する対策についてのお話でした。
言語聴覚士の人手不足を解消するためには、養成機関の拡充、資格取得の支援、待遇や職場環境の改善、認知度向上が不可欠です。
こうした取り組みを進めることで、より多くの人が言語聴覚士を目指し、業界全体の人材不足が改善されることが期待されます。
今後は、言語聴覚士という職業の魅力をより多くの人に伝え、働きやすい環境を整えることが重要となるでしょう。
最後に、言語聴覚士が求められる分野についても詳しくご紹介します。
言語聴覚士が求められている分野
現在では、医療現場にとどまらず、介護や教育、福祉分野など、多様な領域で求められる職種となっています。
最後は、言語聴覚士が活躍する分野ごとのニーズについて詳しく解説します。
医療分野でのニーズ
言語聴覚士の主な活躍の場は、病院やクリニックなどの医療機関です。
日本言語聴覚士協会の調査によると、会員の約60%が医療分野で働いており、特にリハビリテーション科、耳鼻咽喉科、小児科、形成外科、口腔外科などでの勤務が多くなっています。
患者さんの年齢層や疾患は施設によって異なりますが、言語聴覚士は治療や機能回復を目的に、患者さん本人や家族のニーズに応じた個別リハビリを提供します。
また、リハビリの進捗や評価結果を他の医療スタッフや介護施設へ情報共有する役割も担い、患者さんの生活をより良いものにするための橋渡し的な存在として活躍します。
介護分野でのニーズ
医療機関に次いで言語聴覚士の就職先として多いのが、介護施設です。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)をはじめ、居宅サービス事業所や地域包括支援センターなどの施設で、利用者のリハビリを担当します。
高齢者のリハビリは、病院での治療を終えた後の在宅復帰支援が中心となります。
特に誤嚥予防や健康維持の観点から、言語聴覚士による介入が必要とされるケースが増えています。
さらに、高齢化の進行に伴い介護施設の数も増加しており、言語聴覚士の需要は今後さらに高まると考えられます。
また、介護分野では、医療現場のような個別リハビリに加え、集団訓練やゲームを取り入れた楽しみながら行うリハビリへのニーズも高まっています。
福祉分野でのニーズ
福祉施設では、障がい者福祉施設、デイサービスセンター、小児療育センター、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設などで言語聴覚士が活躍しています。
成人福祉施設
在宅で生活する障がい者に対して、社会復帰支援やコミュニケーション能力向上のための訓練を行います。
個々の障がいの程度や生活環境に応じて、日常生活の質を向上させるための支援が求められます。
小児福祉施設
小児療育センターや特別支援施設では、ことばの発達やコミュニケーション能力の向上を目的としたリハビリを提供します。
個別・集団リハビリの両方を取り入れながら、保護者への指導やサポートも重要な役割の一つです。
教育分野でのニーズ
教育分野では、特別支援学校やことばの教室で言語聴覚士がセラピストとして働くケースと、言語聴覚士の養成校や大学院で教員として活躍するケースがあります。
特別支援学校やことばの教室では、言語発達やコミュニケーション能力向上のための訓練を実施し、保護者や教師に対するアドバイスを行います。
なお、小・中学校の特別支援学級や特別支援学校で言語聴覚士として働く場合は、教員免許が必要となるケースもあります。
また、養成校の教員として言語聴覚士を育成する立場を目指すことも可能ですが、そのためには博士号の取得や研究実績が求められるため、求人の数は限られています。
災害現場でのニーズ
日本は地震や水害などの自然災害が多いため、災害現場における言語聴覚士の役割も重要になっています。
通常は医療機関に勤務する言語聴覚士が、災害派遣医療チーム(DMAT)の一員として派遣されたり、ボランティア活動に参加することがあります。
災害時には、訪問リハビリや通所リハを受けていた高齢者が避難所生活を余儀なくされることがあり、適切なケアが受けられずに健康状態が悪化するリスクが高まります。
特に誤嚥性肺炎や口腔機能の低下が懸念されるため、言語聴覚士が口腔体操やケアを指導することが重要です。
また、長引く避難所生活では、健康な人でも活動量の低下やストレスによる体調不良を引き起こすことがあります。
言語聴覚士が予防リハビリを提供することで、被災者の健康を守る役割を果たします。
以上が、言語聴覚士が求められている分野でした。
言語聴覚士の活躍の場は、医療、介護、福祉、教育、災害支援など多岐にわたります。
働く環境によって求められるスキルは異なりますが、共通しているのは「ことば・コミュニケーション・嚥下の専門家」として、人々の生活の質を向上させる役割を担っていることです。
どの分野で働くかは、自分の興味や目指したいキャリアによって選ぶことが大切です。
多様な選択肢を知り、自分に合った職場を見つけることで、より充実した言語聴覚士としてのキャリアを築いていきましょう。
言語聴覚士は、高齢化や医療の発展に伴い、今後ますます必要とされる職業です。
しかし、養成校の数が少ないことや専門性の高さなどの理由から、人手不足が続いている現状があります。
その一方で、言語聴覚士の求人は安定しており、病院や介護施設、訪問リハビリなどさまざまな現場で活躍できるチャンスがあります。
「人手が足りない=需要が高い」ということは、言語聴覚士として働く上での強みでもあります。
今後のキャリアを考える際には、需要の高さを活かし、自分に合った職場を選ぶことが大切です。