保育士として働いている方や、これから保育の仕事を目指したいと考えている方にとって、「自分の年収は平均年収と比べてどうなのか?」「地域差ってあるの?」など、気になるポイントはたくさんありますよね。

また、経験を積んでもなかなか給与が上がらないと感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、保育士の平均年収を年齢別・都道府県別に分けてわかりやすく解説し、収入をアップさせるための具体的な方法についてもご紹介します。

「もっと安定して働きたい」「将来が不安…」と感じている方に、少しでも安心と前向きなヒントをお届けできればと思います。

保育士の平均年収はどのくらい?

保育士として働く場合、年収がどの程度になるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省が公表した2023年(令和5年)の統計データによると、保育士全体の平均年収はおよそ396.9万円となっています。

この数値は、全国の保育士を対象とした調査結果に基づいており、地域差や勤務先の規模、勤続年数などによっても異なります。

※出典:令和5年度賃金構造基本統計調査/e-Stat

さらに男女別で平均年収を比較してみると、以下のような結果となっています。

  • 男性保育士:約448.5万円
  • 女性保育士:約393.2万円

一方で、他職種と比較するために、一般事務職に従事している人の平均年収を見てみましょう。

こちらは全体で約478.3万円と、保育士よりも高い傾向があります。

男女別の平均年収は以下のとおりです。

  • 男性一般事務従事者:約631.0万円
  • 女性一般事務従事者:約399.1万円

このように見ていくと、保育士の年収は他職種と比較してやや低めであることがわかります。

しかし、保育士の待遇を改善するために、国や自治体ではさまざまな支援策や処遇改善の取り組みが進められています。

冒頭でも触れたように、これらの制度の効果により、今後は年収や働きやすさが徐々に向上していくことが期待されます。

また、保育士の仕事は、障がいのあるこどもへの支援や、言語聴覚士など他の専門職との連携が求められる場面も多く、社会的にも非常に重要な役割を担っています。

そのため、金銭的な評価だけでなく、社会貢献度の高さも踏まえたうえで、職業としての価値が見直されていくことが望まれます。

給料以外に支給されるさまざまな手当について

保育士として働く場合、基本給だけでなく、勤務形態や生活状況に応じたさまざまな手当が加算されて給与として支給されるのが一般的です。

これらの手当は、働くうえでの負担を軽減したり、生活を支えたりするためのものであり、総支給額を増やす大切な要素となっています。

たとえば、通勤手当は、保育園までの交通費の一部または全額を補助する形で支給されることが多く、公共交通機関を利用して通勤している保育士にとっては特にありがたい制度です。

調整手当は、特定の条件下で勤務する場合に支給される手当です。

たとえば、非常勤として働いていたり、夜間勤務や休日出勤などに対応していたりする保育士に対して支払われます。

勤務時間帯やシフトの過酷さに配慮したものといえるでしょう。

住宅手当については、家賃の補助や住宅ローンの支払い負担を軽減する目的で支給されます。

独り暮らしをしている保育士や遠方からの通勤が難しい方には、とても心強い支援になります。

扶養手当は、こどもや配偶者など扶養家族がいる場合に支給されるもので、家族を支える立場の保育士にとって重要な収入源の一つです。

これらの手当が支給されることで、基本給だけでは補えない生活面での負担を軽減し、結果として実際に手元に残る収入が増えることにつながります。

特殊業務手当について

保育士の給与には、「特殊業務手当」と呼ばれるものも存在します。

これは、保育園で実施されるさまざまな行事やイベントに関与した場合に支給される特別な手当です。

たとえば、入園式や卒園式、運動会、クリスマス会など、行事の準備や運営に携わった保育士には、この手当が支給されることがあります。

これらの行事は、保護者との交流やこどもの成長を見守る大切な場面でもあるため、保育士の負担も大きくなりがちです。

そういった面を評価する意味でも、特殊業務手当は大切な制度といえるでしょう。

ただし、こうした手当の名称や支給条件、金額などは、保育園や法人によって異なる場合があります。

そのため、就職や転職の際には、給与明細に含まれる手当の内容を確認しておくことが大切です。

さらに、役職に就いた保育士に対しては管理職手当が支給されるケースもあります。

リーダーや主任などの責任あるポジションに就くことで、給与面でも優遇されることがあります。

賞与(ボーナス)の支給について

保育士として働く方には、年に2回、夏と冬に賞与(いわゆるボーナス)が支給されることが多いです。

一般的には、冬に支給される賞与の方が、夏よりも高額になる傾向があります。

賞与の金額は、保育園の経営状況や勤務実績などによって決まりますが、保育園は比較的安定した運営がされていることが多く、大きく変動することは少ないとされています。

その理由として、こどもの入園者数が急激に減少することが少ないため、収入面でも一定の安定が見込めるからです。

なお、就職して最初の年は、支給月までの勤務期間が短いため、賞与の金額はあまり高くはならない傾向にあります。

しかし、2年目以降になると、夏の賞与が毎月の基本給の約2倍、冬は約2.5倍といった水準で支給されるケースも多く、年を重ねるごとに収入面での安心感も増していくことでしょう。

ただし、これも保育園によって基準が異なるため、実際の支給条件については事前に確認することをおすすめします。

保育士が負担しなければならない費用

保育士として働く際には、給与を得る一方で、毎月の給料から差し引かれる費用や、自分で負担しなければならない支出も存在します。

ここでは、その代表的なものを紹介します。

まず、健康保険料は、社会保険に加入する際に必要となるもので、毎月の給与から天引きされます。

病気やけがの際に医療費の負担を軽減する制度であり、安心して働くためには欠かせないものです。

次に、厚生年金保険料も給与から差し引かれます。将来的な年金受給のために必要な制度であり、長期的な生活設計においても重要な役割を担います。

また、雇用保険料も給与から自動的に引かれる費用のひとつです。

これは、万が一離職した際などに、一定の給付を受けられる制度です。

所得税については、毎月の給与から源泉徴収されますが、年末に確定申告や年末調整を行うことで、過不足の調整が行われます。

さらに、共済会費の支払いが必要な保育園もあります。

共済会に加入することで、福利厚生サービスを受けられる場合もありますが、その分の費用が発生します。

そのほかにも、給食代を毎月の給与から天引きする保育園があります。

保育士自身が給食を食べる場合に必要な負担であり、職場によって金額や支払い方法は異なります。

最後に、教材費や日用品代なども見逃せません。

保育園で必要とされる絵本や教材、エプロンや作業着などを自分で用意しなければならないことがあります。

ただし、保育園によっては、園が一括で購入し、保育士に割安で提供してくれる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。

以上が、保育士の平均年収についてのお話でした。

続いて、保育士の年代別の平均年収についてお話していきます。

【年代別】保育士の年収について

保育士として働く方々の年代ごとの平均年収について、以下の表にまとめました。

年齢が上がるごとに、収入にどのような変化があるのかを確認してみましょう。

年代 平均年収(概算)
20代 約352.2万円
30代 約397.1万円
40代 約425.6万円
50代 約439.4万円
60代 約456.0万円

この表からわかるように、保育士の平均年収は年代が上がるにつれて少しずつ上昇している傾向があります。

とくに40代以降の世代では、年収が顕著に高くなっていることが読み取れます。

この理由として考えられるのは、年齢とともに積み重ねられた実務経験や、こどもと向き合ってきた中で身につけた専門的な知識、さらに周囲との連携力などが高く評価されているからです。

保育士としてのキャリアを長く続けることで、園内での信頼も厚くなり、重要な役職を任される機会も増えてきます。

特に40代から60代にかけては、主任や園長といった責任のあるポジションを担うケースも多く、基本給に加えて役職手当なども支給されるため、年収の水準が上がることが一般的です。

こうしたポジションでは、こども一人ひとりへの配慮はもちろん、職員間の調整や保護者対応、障がいを持つこどもやそのご家族への対応も求められる場面が増えてきます。

また、現場で働く保育士の中には、看護師や言語聴覚士など他職種と連携しながら、より専門的な支援を行う方も少なくありません。

そのような取り組みが評価されることも、年収アップにつながる一因となっています。

このように、保育士の年収は単に年齢によるものではなく、長年の積み重ねや役割の変化が大きく影響しているといえるでしょう。

今後、より高いスキルや経験を求められる中で、専門職としての価値もさらに認められていくことが期待されます。

以上が、保育士の年代別の平均年収についてのお話でした。

続いて、【都道府県別】保育士の年収について詳しくお話していきます。

【エリア別】保育士の年収について詳しくご紹介

保育士として働く方々の年収は、勤務する地域や自治体の特徴によって大きく異なることがあります。

地域ごとの経済状況や生活費の違い、自治体が行っている支援制度などの影響を受けるため、全国一律の年収というわけではありません。

ここからは、厚生労働省が公表しているデータをもとに、都道府県別の平均年収を詳しくご紹介していきます。

地域によってどれくらい差があるのかを把握することで、今後の就職や転職活動の参考になるかもしれません。

都道府県別に見る保育士の平均年収

以下の表は、都道府県ごとに集計された保育士の平均年収をまとめたものです。

地域によって、年収に数十万円単位の差があることも確認できます。

都道府県 平均年収
北海道 360.8万円
青森県 317.7万円
岩手県 361.9万円
宮城県 391.9万円
秋田県 334万円
山形県 310.3万円
福島県 366.5万円
茨城県 372.4万円
栃木県 367.6万円
群馬県 415.1万円
埼玉県 377.9万円
千葉県 388.2万円
東京都 453.5万円
神奈川県 416.7万円
山梨県 339.5万円
長野県 390.1万円
新潟県 344.3万円
富山県 370.5万円
石川県 346.7万円
福井県 380.9万円
岐阜県 324.6万円
静岡県 397.3万円
愛知県 395.1万円
三重県 339.8万円
滋賀県 369.1万円
京都府 452.8万円
大阪府 428万円
兵庫県 410.6万円
奈良県 383.6万円
和歌山県 449.9万円
鳥取県 358.1万円
島根県 352.7万円
岡山県 350.9万円
広島県 452.8万円
山口県 395.1万円
徳島県 357.4万円
香川県 358.9万円
愛媛県 373.9万円
高知県 370.6万円
福岡県 391.4万円
佐賀県 380万円
長崎県 370.8万円
熊本県 379.9万円
大分県 341.3万円
宮崎県 386.4万円
鹿児島県 326.8万円
沖縄県 340.3万円

※参考資料:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果/こども家庭庁

この表からも分かるように、保育士の年収には地域差があり、その幅は決して小さくありません。

東京都は全国の中でも特に年収が高く、平均で453.5万円という数値になっています。

これに続くのが京都府や広島県、さらに和歌山県などで、これらのエリアは比較的高めの水準を維持しています。

一方で、山形県や青森県など一部の地方では300万円台前半という地域も見受けられます。

しかしながら、年収だけでなく、各自治体が用意している支援制度も考慮することが大切です。

たとえば、保育士を対象にした借り上げ社宅制度などを整備している自治体も存在しています。

このような制度を活用することで、実質的な生活コストを抑えられる可能性があり、結果として手取りの収入が増えるような感覚で生活することもできます。

年収の数字だけを見て判断するのではなく、生活環境や福利厚生、さらには働きやすさといった要素にも目を向けることが、長く働くうえでとても重要だといえるでしょう。

以上が、都道府県別に見る保育士の平均年収についてでした。

続いて、保育施設における役職ごとの平均年収の違いについてお話していきます。

保育施設における役職ごとの平均年収の違い

次に、保育施設における役職ごとの平均年収の違いについて詳しく見ていきましょう。

多くの保育施設では、役職の最上位に位置するのが園長、または施設長と呼ばれるポジションです。

その下に続くのが主任保育士であるケースが一般的となっています。

それぞれの役職における平均的な給与は以下の通りです。

役職 平均勤続年数 月額(賞与込み) 年収
施設長 25.8年 56.58万円 679.1万円
主任保育士 21.7年 42.29万円 507.6万円

このデータは、令和元年に公表された統計資料をもとにしたもので、私立保育園に勤務する職員を対象とした数値になります。

※参考資料:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果/こども家庭庁

施設長の年収は679.1万円、主任保育士は507.6万円と、いずれも高水準の給与を得ていることがわかります。

さらに、どちらの役職も勤続年数が20年を超えており、長年の経験を積んだベテラン職員が多い傾向にあります。

長く勤めることで役職が付き、それに伴い給与が上昇する構造であることが読み取れます。

また、施設長や主任保育士以外にも、いくつかの役職が存在します。たとえば「専門リーダー」や「職務分野別リーダー」、そして「副主任保育士」などがその一例です。

これらの役職は、国が推進している「処遇改善等加算Ⅱ【保育士等キャリアアップ研修制度】」に基づいて設けられることが推奨されています。

この制度のもとでは、各役職に応じて月額5,000円から最大で4万円の手当が支給されるため、通常の保育士よりも高い給与を得られる可能性があります。

役職に就くことで、責任や業務内容は増えますが、その分の報酬として処遇が改善されている点は注目すべきポイントです。

以上が、保育施設における役職ごとの平均年収の違いについてのお話でした。

続いて、【保育士】私立と公立の平均年収の違いについて、みていきましょう。

【保育士】私立と公立の平均年収の違いについて

最後に、私立と公立の保育士において、給与面でどのような違いがあるのかを詳しく見ていきましょう。

以下の表は、令和元年度における私立・公立それぞれの保育士の勤続年数、月額給与(賞与を含む)、および年収を比較したものです。

職種 私立(勤続年数/月額給与/年収) 公立(勤続年数/月額給与/年収)
施設長 25.8年/56.58万円/679.1万円 31.8年/63.29万円/759.6万円
主任保育士 21.7年/42.29万円/507.6万円 25.1年/56.17万円/674.1万円
保育士 11.2年/30.18万円/362.2万円 11.0年/30.31万円/363.7万円

このデータを見ると、一般的な保育士の給与に関しては、私立と公立の間で大きな差は見られません。

どちらもほぼ同水準の給与となっており、勤続年数もほぼ同じであるため、職員として勤務し始めたばかりの段階では、私立・公立のいずれを選んでも大きな違いは感じにくいかもしれません。

しかしながら、「主任保育士」や「施設長」といった役職に就いた場合には、明らかに公立の方が年収が高い傾向にあることがわかります。

特に施設長においては、年収に約80万円の差が生じています。

こうした差は、給与の基本的な水準の違いに加え、賞与の金額や支給回数などの制度的な要因も影響していると考えられます。

一方で、勤続年数に注目すると、公立の主任保育士は私立よりも3.4年長く、施設長においては6年も長く働いていることがわかります。

これは、公立の保育園で役職に就くためには、それなりの経験年数と実績が求められるという事情があることを示唆しています。

つまり、高い年収を得るまでには、長い期間にわたって積み重ねる努力が必要になるというわけです。

また、公立保育士は地方公務員という立場にあるため、給与や賞与が施設の経営状況によって変動することはありません。

すべての給与は、それぞれの自治体が定める給与規定に基づいて、安定的に支給される仕組みになっています。

その点で、公立保育士は将来的な収入の見通しが立てやすく、長く働く上での安心感があると言えるでしょう。

したがって、長年にわたって勤務し、役職に就いた場合には、公立保育士の方が私立よりも大きな給与アップが見込める可能性が高いと考えられます。

今後のキャリアをどう築いていくかを見据えて、勤務先の選択をすることが重要です。

以上が、【保育士】私立と公立の平均年収の違いについてのお話でした。

続いて、【施設別】保育士の年収について詳しくお話していきます。

【施設別】保育士の年収について詳しくご紹介

保育士として働く際に所属する施設の種類によって、得られる年収には差が見られます。

それぞれの施設ごとに平均年収がどのようになっているのか、詳しく見ていきましょう。

これから保育士を目指す方や転職を検討している方にとっても、参考になる情報です。

保育園における保育士の平均年収

保育園で勤務する保育士には、私立と公立の施設が存在します。

それぞれの勤務先によって待遇に違いがあり、平均年収にも若干の差が見られます。

施設種別 保育士の平均年収
私立保育園 362万1,876円
公立保育園 363万7,356円

公立保育園で働く保育士は、地方自治体によって直接雇用されているため、地方公務員という立場になります。

そのため、私立保育園と比べると、わずかに平均年収が高くなる傾向がありますが、大きな差があるわけではなく、ほぼ同程度といえるでしょう。

認定こども園に勤務する保育士の平均年収

認定こども園では、保育と教育の両面からこどもの成長をサポートする役割を担うため、多様なスキルが求められます。ここでも私立と公立で給与水準に差があります。

施設種別 保育士の平均年収
認定こども園(私立) 335万9,448円
認定こども園(公立) 344万6,172円

公立の認定こども園に勤務する保育士も、公務員扱いとなるため、平均年収は私立よりもやや高めとなっています。

安定した収入を希望する方には、公立施設が選ばれる傾向にあります。

小規模保育事業における保育士の年収

小規模保育事業は、定員が少なく家庭的な雰囲気の中でこどもを保育することが特徴です。

こちらでは、A型・B型・C型といった分類があり、それぞれで年収にも違いがあります。

施設種別 保育士の平均年収
小規模保育事業A型(私立) 322万5,060円
小規模保育事業A型(公立) 270万7,176円
小規模保育事業B型(私立) 323万5,404円
小規模保育事業C型(私立) 350万1,300円*

※小規模保育事業C型に関しては、家庭的保育者の年収を含めた数値となっています。

個別性の高い支援が必要とされる現場のため、経験やスキルによっても待遇に差が出ることがあります。

事業所内保育事業での保育士の平均年収

企業や事業所の中に設けられた保育施設である「事業所内保育事業」では、従業員のお子さんを預かることが主な業務となります。

以下は、各種形態ごとの平均年収です。

施設種別 保育士の平均年収
事業所内保育事業A型適用(私立) 285万8,016円
事業所内保育事業B型適用(私立) 317万856円
事業所内保育事業(20人以上・私立) 323万7,384円

少人数で家庭的な雰囲気が重視される反面、給与面では比較的抑えられた水準となることが多い傾向です。

しかしながら、勤務時間が比較的安定している点や、企業の福利厚生の一部として位置付けられることもあり、働きやすさを重視する方には人気があります。

院内保育園での保育士の年収

医療機関で働く医師や看護師などの医療従事者のこどもを対象とした「院内保育園」では、保育士の月給はおおよそ18万円〜26万円とされており、勤務地や施設の規模によってもばらつきがあります。

また、年に2回の賞与が支給されるケースもあり、その支給額が合計で4か月分程度となる施設も見られます。

そのため、年収ベースで考えると、約288万円〜416万円ほどが目安となるでしょう。

夜勤対応やシフト勤務がある施設もありますが、医療現場を支える大切な役割を担っています。

放課後等デイサービスにおける保育士の年収

放課後等デイサービスは、障がいのある6歳〜18歳までのこどもたちに対して、生活能力の向上や社会性を育むための支援を行う福祉サービスです。

保育士として働く場合、個別対応が求められるため、高度な専門性と柔軟な対応力が必要とされます。

求人情報によれば、放課後等デイサービスで勤務する保育士の月給は、およそ20万円〜40万円の範囲です。

ボーナスが年に2回、合計4か月分支給された場合、年間の収入は約320万円〜620万円程度となります。

支援の質が求められる分、スキルに応じた待遇が反映されやすい職場でもあります。

以上が、【施設別】保育士の年収についてのお話でした。

続いて、保育士が年収を上げるためにできることについてお話していきます。

保育士が年収をアップのためにできることとは?

「今よりも年収を高めたい」「将来的にはもっと安定した収入を得たい」とお考えの保育士さんは少なくありません。

日々の努力や工夫によって、年収アップのチャンスを掴むことは可能です。

現在の働き方に満足できていない方や、収入面に不安を感じている方は、以下にご紹介する年収アップの方法を試してみることをおすすめします。

正社員として働くことを目指す

現在、パートタイムやアルバイトとして勤務している方は、正社員の保育士を目指すことによって収入の向上が期待できます。

正社員になることで、単に基本給が上がるだけでなく、各種手当や賞与、社会保険といった福利厚生の面でも充実した待遇を受けられるようになります。

また、正規雇用になることで、保育スキルを高めるための各種研修に参加するチャンスも増え、将来的にはキャリアアップにもつながります。

そうした流れの中で、主任保育士や園長といった管理職への昇進の道も開けるため、結果として年収が大きく伸びる可能性が高まります。

年収アップにつながる資格を取得する

保育士資格に加えて、さらなるスキルアップや専門性の向上を目指すために、関連する資格を取得するのも有効な手段のひとつです。

以下のような資格を保有していると、勤務先によっては資格手当が支給される場合があり、年収の底上げが期待できます。

  • 幼稚園教諭免許
  • 社会福祉士
  • リトミック指導員
  • 医療保育専門士
  • 運動保育士

また、現在保育補助者として働いている方で、まだ保育士資格を持っていない場合は、まずは国家資格である保育士資格の取得を目指すのがよいでしょう。

勤務先によっては「資格取得支援制度」が設けられているケースもあります。

この制度を活用することで、資格取得にかかる費用の一部または全額を職場が補助してくれることがあるため、金銭的負担を軽減しながらスキルアップが可能です。

資格を取得することで仕事の幅が広がるとともに、職場での評価も高まりやすくなるため、将来的な収入増加にもつながるでしょう。

興味のある方は、まず職場に確認してみることをおすすめします。

キャリアアップ研修に参加する

2017年から全国的に導入された「キャリアアップ研修制度」は、保育士の専門性を高め、より高度な役職へのステップアップを促進することを目的とした制度です。

この研修を修了し、一定の条件を満たすことで、主任保育士や園長はもちろん、以下のようなポジションも目指すことができます。

  • 職務分野別リーダー
  • 専門リーダー
  • 副主任保育士

たとえば、研修を修了した後に、職場から「職務分野別リーダー」として任命されると、毎月5,000円の手当が支給される場合があります。

同様に、「専門リーダー」や「副主任保育士」として認定された場合は、月額で4万円前後の手当が支給されるケースもあり、年収アップに直結します。

キャリアアップ研修は全員が必ず受けられるわけではないため、参加を希望する場合は、まず主任保育士や園長に相談してみましょう。

積極的な意志を示すことで、優先的に研修に参加させてもらえる可能性もあります。

ただし、研修を受けたからといって必ずしも手当が支給されるとは限らず、支給額や対象者の条件は施設ごとに異なる点に留意しておきましょう。

不明な点がある場合は、勤務先へ確認することをおすすめします。

現在の職場で管理職を目指す

年収を大きく引き上げたいと考えている方にとって、主任保育士や園長といった管理職への昇進は非常に有効な選択肢のひとつです。

こうしたポジションにつくことで、基本給や手当が大きく増える傾向があるため、収入面での大きな変化が期待できます。

たとえば、以下は主任保育士および園長(施設長)の平均年収です。

役職 公立保育園 私立保育園
主任保育士 595万9,476円 459万6,348円
園長(施設長) 654万0,636円 638万5,164円

一方、保育士全体の平均年収は約396万9,000円前後とされているため、管理職に就くことで大幅な年収アップが見込めることが分かります。

こうした役職を目指すには、まずはキャリアアップ研修を受講し、段階的に経験とスキルを積み重ねていくことが重要です。

以上が、保育士が年収を上げるためにできることについてのお話でした。

最後に、保育士の給与引き上げに向けた取り組みについてお話していきます。

保育士の給与引き上げに向けた取り組みについて

保育士の給与が近年少しずつ上昇しています。

その背景には国の制度として整備された処遇改善加算の取り組みがあります。

この制度は、保育士の給与を引き上げ、働きやすい職場環境を整備することで、人材の確保と定着を目指すものです。

ここでは、保育士の給与引き上げに向けた取り組みにについて、詳しくご紹介いたします。

処遇改善等加算Ⅰとは

「処遇改善等加算Ⅰ」は、保育施設に勤務するすべての職員の平均勤続年数やその他の要件に基づいて加算率が決まり、それに応じて国から保育施設へ一定の手当が支給される制度です。

これは保育士だけでなく、保育に関わるすべての職員に対する支援として導入されています。

この制度は、保育士の給与アップと人材確保を主な目的として、2015年(平成27年)から開始されました。

加算は大きく分けて「基礎分」「賃金改善要件分」「キャリアパス要件分」の3つの構成に分かれており、それぞれの要件を満たすことで加算の割合が決まります。

基礎分について

  • 職員1人あたりの平均経験年数に応じて、2%から最大12%までの加算が適用されます。

  • 経験年数が長ければ長いほど加算率が高くなります。

  • この対象には、1日6時間以上かつ月20日以上勤務する非常勤の職員も含まれています。

賃金改善要件分

  • 一定の基準年度を起点として、職員の賃金改善を実施している保育施設に対して加算される項目です。

  • 平均勤続年数が11年以上の保育施設では加算率が7%、それ以外は6%と定められています。

キャリアパス要件分

  • この項目は賃金改善要件分の中に含まれています。

  • 具体的には、役職や職務内容に応じた勤務条件や賃金体系の整備、保育士の資質向上を目指すための具体的な計画を策定し、その計画に基づいた研修などを適切に実施している施設に対して加算されます。

  • 上記の取り組みが行われていない場合、賃金改善要件分の加算から2%が減額される可能性があります。

※参考:厚生労働省「公的価格の制度について」

なお、実際にどの職員にどの程度の手当が支給されるかについては、それぞれの保育施設の裁量に委ねられており、詳細な金額や支給の方針は勤務先に直接確認することが必要です。

処遇改善等加算Ⅱ【保育士等キャリアアップ研修制度】

次にご紹介するのは、「処遇改善等加算Ⅱ」と呼ばれる制度です。

これは保育士が各都道府県で実施される「保育士等キャリアアップ研修」を修了し、一定の条件を満たすことで適用される加算制度です。

研修を通じて得た専門的な知識や技術に基づいて、施設側が役職や職務内容を再設定し、それに伴う手当が支給される仕組みとなっています。

この制度は2017年(平成29年)に厚生労働省によって策定された「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」に基づいて導入されました。

その中では「専門リーダー」「職務分野別リーダー」「副主任保育士」などの新たな役職が設けられ、それぞれの役職に応じて毎月5,000円から最大40,000円までの手当が支給されるようになっています。

こうした仕組みにより、経験年数が3年から7年程度の中堅保育士のキャリアアップと処遇改善がより現実的なものとなり、やりがいや将来設計を持って働き続けることが可能となります。

研修内容や制度の詳細については、別の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

処遇改善等加算Ⅲ【月額9,000円の賃金引き上げ】

最後に紹介するのが、「処遇改善等加算Ⅲ」です。

この制度は、保育士や幼稚園教諭などを対象に、基本的な賃金の底上げを図ることを目的として整備されました。

2022年2月より、保育士などの給与に対し月額で9,000円、つまり全体の3%に相当する金額の引き上げが実施されています。

その後、2022年(令和4年)10月からは「公定価格」の見直しにともない、正式に「処遇改善等加算Ⅲ」として制度化され、継続されています。

この手当は給与明細上では「処遇改善手当Ⅲ」として記載されることが一般的ですが、施設によって表記や扱いが異なる場合があるため、詳細については勤務先に確認することが大切です。

※出典:内閣府告示第98号(特定教育・保育、地域型保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の改正)

以上が、保育士の給与引き上げに向けた取り組みについてのお話でした。

保育士の平均年収は、年齢や経験年数、勤務する地域や施設の規模などによって大きく異なります。

また、自治体ごとの支援制度や処遇改善の取り組みによっても収入に差が出ることがあります。

とはいえ、資格を活かしてキャリアアップを目指したり、役職に就くことで年収を上げることは十分に可能です。

「今のままでいいのかな」と悩んでいる方も、まずは自分の現状を知り、できることから少しずつ行動してみてください。

この記事が、あなたが理想とする働き方を実現するきっかけになれば嬉しいです。