言語聴覚士の働く場所はどこ?就職先について徹底解説!

言語聴覚士(ST)は、ことばや嚥下(飲み込み)のリハビリを専門とする医療職ですが、「実際にどんな場所で働くの?」「病院以外の就職先はあるの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
言語聴覚士の働く場所は多岐にわたり、病院やクリニックをはじめ、介護施設、学校、研究機関、さらには訪問リハビリや企業で働くケースもあります。
本記事では、言語聴覚士が働くさまざまな場所について詳しく解説します。
どの就職先が自分に合っているのか、キャリアの選択肢を広げるためにも、ぜひ参考にしてください!
言語聴覚士の働く場所はどこ?
そのため、活躍の場は多岐にわたります。
ここでは、代表的な言語聴覚士の場所として4つの職場をご紹介します。
医療機関
病院やクリニックなどの医療機関は、言語聴覚士が最も多く働いている職場です。
総合病院・大学病院・リハビリ専門病院・耳鼻咽喉科クリニックなど、さまざまな診療科で言語聴覚士のスキルが求められています。
医療機関で働く特徴
- 言語聴覚士の約7割が医療機関に勤務
- 診療科によってリハビリの内容が異なる
- チーム医療の一員として他職種と連携
- 社会復帰のための支援やアドバイスを行う
- 在宅医療のサポートを担当することもある
特に近年は、病院だけでなく在宅医療の現場でも言語聴覚士の需要が高まっています。
患者さんの状態に応じて、急性期・回復期・維持期とリハビリの目的が変わるため、幅広い知識とスキルが求められます。
医療機関で働くことで、さまざまな症例に対応する経験が積めるため、スキルアップを目指したい方におすすめの職場です。
介護福祉施設
介護福祉施設では、摂食・嚥下障がいのある高齢者を中心にサポートを行います。
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、デイサービスセンターなど、入居施設・通所施設の両方で言語聴覚士の活躍が求められています。
介護福祉施設で働く特徴
- 摂食・嚥下リハビリが中心
- 加齢による機能低下の支援も重要な役割
- ただ食べる機能を回復させるだけでなく、「食べる喜び」を取り戻す支援が求められる
摂食・嚥下機能が低下すると、誤嚥性肺炎を引き起こし、命に関わるリスクが高まります。
そのため、施設内でのリハビリやスタッフ向けの食事介助指導などを通じて、利用者の安全を守ることが言語聴覚士の重要な役割となります。
また、介護施設ではリハビリを兼ねたレクリエーションの企画を担当することもあるため、発想力や創造力のある方にも向いている職場です。
こどもの福祉施設・教育機関
言語聴覚士は、児童発達支援センターや放課後等デイサービスなど、こどもの成長をサポートする福祉施設でも活躍できます。
また、教員免許を取得すれば、小中学校や特別支援学校の教員として働く道もあります。
こどもの福祉施設・教育機関で働く特徴
- 発達障がいや知的障がいのあるこどもを支援
- 学習・生活面のサポートを行うこともある
- 遊びを取り入れながら楽しく学べる訓練が必要
- 幼稚園・保育園を訪問し、指導やアドバイスを行う場合もある
こどもが言葉をスムーズに習得できない原因には、発達障がいや知的障がい、自閉症スペクトラム障がい(ASD)などがあります。
言語聴覚士は、1人ひとりの状況に応じたプログラムを組み、言葉やコミュニケーション能力の向上を支援します。
また、聴覚障がいを持つこどもを担当することもあるため、手話通訳士などの資格を取得すると、より専門的な支援が可能になります。
保健所・保健センター
言語聴覚士は、地方自治体が運営する保健所や保健センターでも働くことができます。
病院や介護施設と比べると求人は少ないものの、公務員待遇で安定した収入や福利厚生が得られるため、人気の高い職場の一つです。
保健所・保健センターで働く特徴
- 相談業務がメイン
- 子育て支援や発達相談に関わるケースが多い
- 収入が安定しており、福利厚生が充実
保健所・保健センターでは、言語や発達に関する相談業務が中心となります。
例えば、こどもの発語が遅れていることを心配する保護者に対し、アドバイスや適切な支援機関の紹介を行います。
求人数が少ないため、保健所や保健センターで働きたい場合は、自治体の採用試験情報をこまめにチェックすることが重要です。
教育機関
言語聴覚士は、小中学校、特別支援学校、研究施設、大学・短大・専門学校など、教育分野でも活躍しています。
特に、教員免許を持つ言語聴覚士は、小中学校の特別支援学級や通級指導教室で、言葉や聞こえに困難を抱えるこどもたちのサポートを行います。
また、教育委員会に所属し、複数の学校を巡回して相談業務を行う言語聴覚士もいます。
さらに、大学や専門学校の養成校で講師・教員として活躍するケースもあり、臨床経験を活かしながら、次世代の言語聴覚士の育成に携わることができます。
以上が、言語聴覚士の働く場所についてでした。
言語聴覚士は、医療機関・介護福祉施設・こどもの福祉施設・保健所など、さまざまな職場で活躍できます。
それぞれの職場には特徴があり、求められるスキルや専門性も異なります。
- スキルアップを目指すなら医療機関
- 高齢者支援に興味があるなら介護福祉施設
- こどもと関わりたいなら教育・福祉施設
- 安定した環境で働きたいなら保健所・保健センター
自分の目指すキャリアや興味のある分野を考えながら、最適な職場を選んでみてください!
次に、複数ある就職先からどの場所を選べばいいのか、その選び方についてお話していきます。
言語聴覚士はどんな職場で働けばいい?決め方は?
言語聴覚士が自分に合った職場を決めるためのポイントを紹介します。
どのような患者さんをサポートしたいか
言語聴覚士は、ことば・聞こえ・食べる機能の回復を支援する専門職であり、対象となる患者さんは成人から小児まで幅広いのが特徴です。
どの領域で活躍したいかによって、適した就職先が変わってきます。
成人領域で働く場合
成人の患者さんを支援したい場合、主な就職先は病院や介護施設となります。
病院の診療科によって、サポートする領域が異なるため、どの分野に関心があるのかを考えておくとよいでしょう。
- 脳神経内科・脳神経外科:脳卒中などによる失語症・構音障がい・嚥下障がいのリハビリ
- 耳鼻咽喉科:聴覚障がいや嚥下障がいの評価・訓練
- 病院の機能(急性期・回復期・生活期)によって言語聴覚士の役割が変わる
小児領域で働く場合
小児の発達支援や言語療法に興味がある場合、就職先は病院・クリニック・児童福祉施設などが考えられます。
- 小児病院・小児科クリニック:言語発達遅延・難聴・摂食嚥下機能障がいの評価・訓練
- 児童福祉施設:言語・聴覚・摂食機能のリハビリ、保護者相談、発達検査のフィードバック
- 施設の行事企画・運営に関わるケースもある
このように、どの領域でどのような患者さんを支えたいのかを明確にすることが、就職先を選ぶ際の重要なポイントとなります。
これから活躍できる場所
現在、言語聴覚士の活躍の場は病院や診療所に限らず、介護福祉施設や在宅医療の分野にも広がっています。
国の医療政策では、「入院医療から在宅医療へのシフト」が推進されており、今後は訪問リハビリや在宅医療の分野でもSTの需要が高まると予想されます。
今後活躍が期待される分野
- 訪問看護ステーション:自宅での言語・嚥下リハビリを提供
- 介護老人福祉施設・介護老人保健施設:高齢者向けの嚥下リハビリや認知症ケア
これからの時代に求められる分野や働き方の情報をしっかり把握し、自分に合った職場を選ぶことが、長く活躍するためのポイントになります。
以上が、言語聴覚士が自分に合った職場を見つけるためのポイントでした。
続いて、これからの言語聴覚士の現状・将来性についてお話していきます。
言語聴覚士の現状・将来性
言語聴覚士は、医療機関だけでなく介護施設や教育現場など、多様な分野で活躍できる職業です。
そのため、言語聴覚士としての専門知識に加え、他のスキルや経験が役立つ場面も少なくありません。
ここでは、言語聴覚士の現状と将来性、そして資格以外に求められる能力について詳しく解説します。
需要と将来性
厚生労働省が2016年に発表したデータによると、言語聴覚士の人数は以下の通りでした。
(調査対象:全国約1,000施設)
- 病院で勤務する言語聴覚士:3,124人
- 介護保険施設などで勤務する言語聴覚士:315人
年齢別では、20~40代の言語聴覚士が最も多く、全体の約8割を占める結果となりました。
(出典:厚生労働省「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士需給調査」)
また、「言語聴覚士の人員は充足しているか?」という質問に対し、以下のような結果が出ています。
- 「基準上は充足している」:82.1%
- 「運営上(患者の状況に応じて必要な人員として)充足している」:41.3%
つまり、多くの施設が人員基準は満たしているものの、実際のリハビリ提供においては十分な人員を確保できていないと感じていることがわかります。
さらに、「2025年までに言語聴覚士の雇用を増やす予定か?」という質問に対しては、
- 「現状のまま」:22.4%
- 「増やす予定」:33.7%
- 「減らす予定」:0.2%
という結果になりました。
このデータや、日本における高齢化の進行を考えると、言語聴覚士の需要は今後も高まると予測されます。
就職率・就職状況
言語聴覚士を目指す際に気になるのが「就職率」ではないでしょうか。
就職率の具体的な数値は養成校ごとに異なりますが、ここでは言語聴覚士全体の就職状況について見ていきましょう。
2022年3月時点で、言語聴覚士の有資格者数は約3万8千人となっています。
しかし、治療や支援を必要としている患者さんの数に対して、言語聴覚士の数はまだ十分ではないのが現状です。
▶ 参照:日本言語聴覚士協会
また、日本の高齢化が進む中、医療保険から介護保険への移行が国の政策の一環として進められています。
その結果、病院でのリハビリだけでなく、自宅での生活を支えるためのリハビリが重要視されるようになっています。
そのため、今後は通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションなどの介護保険領域においても、言語聴覚士の活躍の場がさらに広がると考えられます。
現在、病院をはじめとする医療機関や介護・福祉施設では、言語聴覚士の人材確保に力を入れており、就職率は非常に高い水準を維持しています。
将来的にも、需要の高い職業であることは間違いないでしょう。
資格以外に必要とされる能力
言語聴覚士は、患者さんや利用者、その家族と関わる仕事です。
また、医師や看護師、他のリハビリ職とも連携しながらリハビリを進めるため、専門知識だけでなく、対人スキルも重要になります。
言語聴覚士がサポートする主な障害には、以下のようなものがあります。
対象者 | 主な症状 | サポート内容 |
---|---|---|
言語障がい | 高次脳機能障がいのある方 言語発達障がいのあるこども | 発音の矯正、話し方の指導、呼吸法の指導、読み書きの訓練 |
音声障がい | 声帯に病変がある方、声帯を損傷した方 | 発声訓練 |
嚥下障がい | 筋力の低下、神経や筋肉の麻痺 | 食べ方の指導、口腔ケア、食事介助 |
1. コミュニケーション能力
言語や嚥下の障がいを抱える方は、自分の思うように話したり食べたりできないことに強いストレスを感じています。
そのため、患者さんの気持ちに寄り添いながら適切にサポートできるコミュニケーション能力が不可欠です。
また、患者さんだけでなく、家族や医療チームとの連携も重要なため、相手の立場を理解し、分かりやすく伝える力が求められます。
2. 柔軟性と忍耐力
リハビリは、すぐに成果が出るものではありません。
患者さんの状態によっては、思うように進まないこともあります。
そのような場合でも、焦らず別の方法を模索し、根気強く支援を続ける姿勢が大切です。
また、一人ひとりに合ったリハビリを提供するためには、状況に応じて柔軟にアプローチを変える能力も必要になります。
3. 観察力と分析力
言語や嚥下の問題は、一見すると分かりにくいこともあります。
患者さんの発話の変化や表情、動作など、細かなサインを見逃さないようにするためには、高い観察力と分析力が求められます。
症状の変化を的確に把握し、適切なリハビリ計画を立てることが、言語聴覚士の大きな役割の一つです。
言語聴覚士は、今後も需要が高まると予測される職業であり、医療や福祉のさまざまな分野で活躍することができます。
特に、高齢化が進む日本では、言語や嚥下のリハビリを必要とする方が増えており、言語聴覚士の役割はますます重要になるでしょう。
また、言語聴覚士として活躍するためには、専門的な知識や技術だけでなく、コミュニケーション能力や柔軟な対応力、観察力なども求められます。
リハビリの現場では、患者さんやその家族、他職種との連携が不可欠なため、これらのスキルを意識的に伸ばしていくことが大切です。
言語聴覚士を目指す方は、将来の働き方を考えながら、自分に必要なスキルを磨いていきましょう!
以上が、言語聴覚士の現状と将来性、そして資格以外に求められる能力についてでした。
言語聴覚士の就職先は、病院やクリニックだけにとどまらず、介護施設、学校、研究機関、訪問リハビリ、企業など、さまざまな場所で活躍することができます。
それぞれの職場には異なる特徴や求められるスキルがあり、自分の目指すキャリアに合わせて働く場所を選ぶことが大切です。
「どんな環境で働きたいか」「どんな患者さんや利用者を支援したいか」を考えながら、自分に合った就職先を見つけましょう。
言語聴覚士としての可能性を広げ、充実したキャリアを築いていきましょう!