作業療法士とは簡単に説明すると、身体機能の回復や日常生活動作の改善を目的とした治療を行う専門職のことをいいます。

作業療法士という職業は、一般的によく知られているとは言えませんが、医療現場では重要な役割を担っています。

理学療法士と比べると認知度が低いものの、近年のテレビや映画での登場によって、その存在が徐々に広まってきています。

理学療法とは異なり、患者一人ひとりのニーズに合わせた活動や作業を通して、生活の質の向上を図ります。

このように、作業療法士は医療チームの一員として重要な位置を占めており、その専門性は高く評価されています。

しかし、一般の方にはまだ馴染みが薄い職業かもしれません。

そこで今回は、作業療法士とはどんな職業なのか、簡単に説明させていただきます。

作業療法士とは?簡単に解説

作業療法士とは簡単に解説すると、身体機能の回復や日常生活動作の改善を目的とした治療を行う専門職のことをいいます。

作業療法士は国家資格を有する専門家であり、国の認可のもと、作業療法を実践しています。

英語では「Occupational therapist」と呼ばれ、日本語では「OT」と略されることが一般的です。

作業療法における「作業」とは、食事、入浴、家事、仕事、趣味活動など、人が関わるあらゆる日常的な活動を指します。

病気、けが、精神的な疾患、認知症など、さまざまな要因により、その人らしい「作業」が行えなくなった場合、作業療法士は「作業」に焦点を当てて治療を行います。

また、「作業」を通じて、諸活動への参加を支援する治療法でもあります。

作業療法士の特徴を簡単に解説

作業療法士の特徴は、体と心のリハビリテーションの専門家であるという点です。

具体的な例を挙げると、体に麻痺が生じ、これまでのように着替えができなくなった人に対して、作業療法士は実際の着替え方法を伝授し、練習を行います。

さらに、腕の動きが不自由な場合は、その機能回復のためのトレーニングを行います。

また、着替えの方法がわからなくなってしまった人に対しては、精神面や認知機能の観点から、なぜその人が着替えできなくなったのかを考え、サポートを行います。

すなわち、作業療法士は、その人らしい「作業」ができるよう、体と心の両面からアプローチするのが特徴です。

さらに、作業療法士は、リハビリテーション専門職の中で唯一、統合失調症や気分障害などの精神障がいのある方への治療を行うことができます。

そのため、精神病院や介護施設などでも、その専門性を発揮しています。

作業療法士の仕事内容を簡単に解説

作業療法士は3つあるリハビリの資格(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の中でも対象とする分野が最も広い資格です。

そして作業療法士が対象とする分野は大きく分けて以下の4つになります。

①身体障がい領域 ②老年期領域 ③精神障害領域 ④発達障がい領域

それではこの4つの領域で作業療法士がいったいどんな仕事をするのかそれぞれ解説していきます。

①身体障がい領域

作業療法士は、脳卒中や整形外科疾患などによる身体障がいを抱える方々を対象に、その方の状態を把握し、生活や職場復帰に向けたリハビリテーションを行います。

例えば、脳卒中により麻痺が残った場合、日常生活動作の自立に向けて適切な動作練習を行ったり、家族に介助方法を指導したりします。

同時に、体の機能回復のためのリハビリも行い、その人が可能な限り自立した生活を送れるよう支援します。

つまり、作業療法士は、身体障害のある方々の生活の質の向上と社会復帰を目指して、医療現場を中心に活躍しているのです。

②老年期領域

高齢者を主な対象とする作業療法士の仕事内容は多様です。

療養型病院、老人ホーム(老人保健施設、特別養護老人ホーム)、デイサービスなど、様々な施設で活躍しています。

日本は超高齢社会に突入しており、この傾向はさらに進行すると見られています。

リハビリ分野は競争が激しいものの、高齢者向けサービスの需要は今後も拡大していくと考えられます。

老人保健施設の作業療法士は、病院から退院したものの何らかの理由で自宅復帰が難しい高齢者に対し、リハビリを通じて可能な限り自立した生活を送れるよう支援しています。

具体的には、歩行や日常生活動作の改善、自宅での安全な生活環境の整備など、個々の高齢者のニーズに合わせたケアを提供しています。

③精神障がい領域

日本は精神科病床数が世界で最も多いという事実をご存知でしょうか。

世界全体の精神科病床数は約185万床ですが、その5分の1を日本が占めているのです。

日本人は世界一忙しいと言われていますから、生活の中で何かバランスが崩れると、すぐに心の病を発症してしまうのかもしれません。

心の病の原因は様々ですが、作業療法士の役割は、その人の心のバランスを崩している根本的な要因を一緒に探し出し、心を整える作業を通して、元の生活に戻れるよう支援することです。

④発達障がい領域

発達障がいを抱える子どもたちは、日常生活の中で思わぬところでつまずき、「生きにくさ・生活のしづらさ」を感じています。

作業療法士は、その子どもがどこでつまずいているのかを見極め、その子らしく社会で活躍できるよう支援することが役割です。

発達障がいの症状一人ひとり異なります。

ペンの持ち方、座位の保持、視覚的な課題など、さまざまな問題点があり、それぞれに応じたアプローチが必要となります。

近年、発達障がいを抱える子どもに対するサービスも充実してきており、未就学児や小学生を対象とした「放課後デイサービス」などの施設も増えています。

これは、発達障がい児に対する社会的なニーズの高まりを示しているといえるでしょう。

作業療法士が働く場所について簡単に説明

日本作業療法士協会の調査によると、2020年2月の作業療法士国家試験の合格者の就職率は100%でした。

作業療法士には多様な就職先が考えられますが、主なものは病院、介護施設、作業療法士養成校、児童福祉施設などです。

病院には一般病院や精神病院が、介護施設には介護老人保健施設や特別養護老人ホームなど、多くの選択肢があります。

さらに、放課後デイサービスなども有望な就職先の一つです。

放課後デイサービスは、障がいや発達特性のある子どもたちを対象とした通所施設で、学校や家庭以外の場所で、日常生活に必要な訓練や学校・学童クラブとの連携支援を行っています。

子どもたちの生活を支える素晴らしい職場といえます。

どこの職場であっても、患者さんを支える素敵な仕事であることには変わりません。

作業療法士とは簡単に解説すると、身体機能の回復や日常生活動作の改善を目的とした治療を行う専門職のことをいいます。

そんな作業療法士のやりがいとは一体、何なのでしょうか?

作業療法士のやりがいとは?

作業療法士には多くのやりがいと充実感があります。

そこで今回は、代表的な作業療法士のやりがいを3つ挙げます。

①患者さんの社会復帰をサポートできる

患者さんの社会復帰には長期的な取り組みが必要ですが、作業療法士にはそこに大きな意義があります。

患者さんの可能性を1つずつ引き出し、リハビリの過程に寄り添うことは、極めてやりがいのある仕事といえます。

自身が立案したリハビリプランが実を結び、患者さんが社会復帰を果たすときには、大きな達成感が得られるでしょう。

さらに、患者さんやご家族から直接感謝の言葉をいただけることは、作業療法士としての喜びにもつながるのです。

②体と心の両面からサポートできる

作業療法を必要とする人々は、しばしば深刻な身体的・精神的な障がいに苦しんでいます。

作業療法士は、これらの患者さんに寄り添い、リハビリテーションを行う専門家です。

そのため、患者さんが徐々に自信を取り戻していく過程を直接目にできるのは、作業療法士ならではの喜びといえるでしょう。

さらに、作業療法士による支援が、患者さんに「生きる喜び」を取り戻させることも少なくありません。

患者さんとの関わりを通して、作業療法士自身も新たな発見や学びを得られることがきっとあるはずです。

③各領域における専門性を高めることができる

先ほどの説明に繋がりますが、作業療法士の仕事には、身体障がい、精神障がい、発達障がい、老年期障がいの4つの領域があり、各領域で業務内容が異なります。

各領域の専門性を高めることで、効率的にスキルアップとキャリアアップが可能です。

作業療法士には、スキルアップとキャリアアップにつながる多くの資格があります。

その一つが「専門作業療法士」です。

この資格を取得すれば、特定の分野において高度かつ専門的な実践能力と課題解決能力を有していると認められます。

専門作業療法士の専門分野には、福祉用具、認知症、手外科、特別支援教育、高次脳機能障がい、精神科急性期、摂食嚥下、訪問作業療法、がん、就労支援、脳血管障がいの11領域があります。

患者さまと日々関わりながら、自分の専門性を高めていけるのが、作業療法士の魅力の一つといえるでしょう。

作業療法士には多くのやりがいと充実感があります。

では、作業療法士になるにはどうすればいいのでしょうか?次の段落では、作業療法士のなり方について説明していきます。

作業療法士になるには?

作業療法士は国家資格の一つであり、作業療法士になるには、作業療法士国家試験に合格する必要があります。

国家試験を受験

作業療法士を目指すには、作業療法士養成校の卒業が必須です。

全国には約207の作業療法士養成校が設置されており、専門学校や大学などさまざまな形態があります。

養成課程は3年制または4年制と定められていますが、修得すべき知識や技術に差はありません。

養成校では、医学的基礎知識をはじめ、作業療法に関する専門的な知識や、実際の医療・福祉現場での臨床実習など、幅広い内容を学びます。

大学で学ぶ

大学では4年間かけて作業療法について深く学習することができます。

その他にも、専門以外の一般教養や英語、医療用語に必要なドイツ語などを学ぶ機会も得られるでしょう。

ただし、4年間の学習期間に伴い、学費がやや高額になる場合があります。

専門分野を丁寧に学びたい、あるいは幅広い知識を身につけたいと考えており、少し高めの学費を支払うことに問題がない場合は、大学が適した選択肢となります。

専門で学ぶ

専門学校では、作業療法士の受験資格が3年間で取得できます。

この短期間の教育期間から、学費は大学に比べてやや低く抑えられる学校も多数存在します。

一人暮らしを行う場合、生活費の面でも考慮する必要があります。

専門学校なら3年間で卒業できるため、生活費も3年分で済みます。

このように、費用面での負担を抑えたい人にとって、専門学校は魅力的な選択肢といえるでしょう。

国家試験の合格率

作業療法士国家試験は毎年2月に行われ、2日間にわたって筆記、口述、実技の各試験が実施されます。

2024年に行われた「第59回作業療法士国家試験」の結果は以下のとおりです。

受験者数は5,736人(5,019人)、合格者数は4,840人(4,597人)、合格率は84.4%(91.6%)でした。

通信教育では資格取得できない

経済的な理由から学費を抑えたい方や、就労しながら作業療法士の資格取得を目指す方の中には、通信教育で国家試験の受験資格を得ることを希望する人もいるかもしれません。

しかしながら、通信教育では作業療法士国家試験の受験資格は付与されません。

つまり、通信教育では国家試験を受験することも、作業療法士の資格を取得することもできないことを、ご留意ください。

資格取得と仕事の両立を目指すなら夜間学校がおすすめ

夜間学校は、学費抑制や働きながらの資格取得に適した選択肢です。

全日制より学費が抑えられ、授業時間が夜間のため日中の仕事と両立できます。

ただし、夜間学校を設置している学校は少なく、選択肢は3年制または4年制の専門学校に限られます。

資格取得に年齢制限はない

作業療法士の国家試験には年齢制限がありません。社会人や主婦の方でも、受験資格を満たしていれば問題なく受験できます。

ただし、受験資格を得るための学校によっては、入学時に条件を設けている場合がありますので、事前に募集要項を確認しましょう。

このように、作業療法士は国家資格の一つであり、作業療法士になるには、作業療法士国家試験に合格する必要があります。

本記事が、魅力ある作業療法士を目指す方にとって有益なものとなっていましたら幸いです。