近年、スポーツ医療やリハビリテーションの分野で注目されているのが、理学療法士とアスレティックトレーナーのダブルライセンス取得です。

医療の専門家として患者の機能回復をサポートする理学療法士と、アスリートの怪我予防やパフォーマンス向上を支援するアスレティックトレーナー。

この2つの資格を同時に取得することで、リハビリからパフォーマンス向上まで、幅広い分野で活躍できる専門職となります。

では、実際に理学療法士とアスレティックトレーナーの同時取得は可能なのでしょうか?

この記事では、理学療法士とアスレティックトレーナーの同時取得の可能性と、そのメリットについて詳しく解説していきます。

理学療法士とアスレティックトレーナーの同時取得は可能なの?

実際に両資格を同時に取得することは可能なのでしょうか?

結論から言うと、理学療法士とアスレティックトレーナーの同時取得は難しいですが不可能ではありません。

同時取得は可能

理学療法士とアスレティックトレーナーの資格を同時に取得することは可能です。

同時取得の大きな利点は、学習時間と費用を効率よく抑えられる点にあります。

通常、理学療法士の資格取得には3〜4年の期間が必要であり、アスレティックトレーナーの資格を得るには2年間の学習が求められます。

しかし、両資格ともに解剖学や生理学といった基礎科目が共通しているため、重複した学習を避けることができ、効率的なカリキュラムを通じて同時に資格取得を目指すことが可能です。

ただし、同時取得を進める上では、学業が非常に忙しくなり、スケジュールが厳しくなるというデメリットもあります。

そのため、アルバイトやプライベートの時間を確保するのが難しくなることに注意が必要です。

理学療法士とは

理学療法士(PT: Physical Therapist)は、主に患者さんの身体機能の回復や維持を目的として、リハビリテーションや運動療法を行う医療専門職です。

理学療法士は、骨折後のリハビリや運動機能の低下が見られる高齢者、またスポーツ選手など、幅広い年齢層や背景を持つ患者さんと関わります。

  • ー理学療法士の役割ー
  • リハビリテーションの提供: 手術後や病気後の身体機能回復をサポートします。
  • 運動指導: 筋力や柔軟性の改善を目指したエクササイズの提供。
  • 身体の動きの評価: 患者の身体機能を評価し、最適な治療プランを立てる。

理学療法士になるためには、国家試験に合格する必要があります。

日本国内では、大学や専門学校での専門教育を受けた後、国家試験に合格することで資格が取得できます。

また、資格を取得後も、最新の医療知識や技術を習得し続けることが求められます。

アスレティックトレーナーとは

アスレティックトレーナー(AT: Athletic Trainer)は、主にスポーツ選手やアスリートの健康管理、怪我の予防、リハビリテーション、パフォーマンスの向上を支援する専門職です。

アスレティックトレーナーは、スポーツ現場での応急処置から、トレーニングプランの作成まで、多岐にわたる役割を担います。

  • ーアスレティックトレーナーの役割ー
  • 怪我の予防とケア: 怪我のリスクを減らすためのトレーニングや、怪我をした際の応急処置を行います。
  • パフォーマンス向上のサポート: アスリートがベストなコンディションで競技に臨めるよう、トレーニングプランを設計。
  • リハビリテーション: 怪我からの回復を促進し、再発を防ぐためのリハビリ指導。

アスレティックトレーナーは、日本体育協会(JSPO)などの認定資格を取得することで活動が可能になります。

また、資格を取得するためには、スポーツ医学や応急処置、運動生理学など幅広い知識を学ぶ必要があります。

以上が、理学療法士とアスレティックトレーナーの同時取得は可能であるのかどうかのお話でした。

そもそも、両者の違いは何なのでしょうか。

理学療法士とアスレティックトレーナーの同時取得は可能であることが分かったところで、次は両者の違いについてみていきましょう。

理学療法士とアスレティックトレーナーの違い

理学療法士とアスレティックトレーナーの違いについてみていきます。

以下の項目に分けてみていきましょう。

  • ・資格の有無
  • ・就職先
  • ・おもな対象者
  • ・給料

資格の有無

理学療法士とアスレティックトレーナーの最も大きな違いは、資格の種類です。

理学療法士は、国家資格が必要であり、理学療法学科などで必要な教育を受け、国家試験に合格することで資格を取得します。

これは医療行為に従事するための必須条件です。

一方、アスレティックトレーナーには必須の国家資格は存在しません。

しかし、信頼性や専門性を高めるためには、「日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)」などの認定資格を取得しておくことが推奨されています。

就職先

理学療法士の主な就職先は、病院やリハビリテーション施設が中心です。

また、地域医療や介護施設、スポーツ関連の医療機関でも活躍しています。

一方で、アスレティックトレーナーの就職先は、スポーツチームやフィットネスジム、病院、整骨院などが多いです​

おもな対象者

理学療法士の主な対象者は、高齢者や怪我をした患者で、リハビリテーションを通じて身体機能の回復を支援します。

病気や怪我の影響で身体機能が低下した人々が中心です。

一方で、アスレティックトレーナーはスポーツ選手やアスリートが主な対象であり、彼らの怪我予防やパフォーマンス向上のサポートを行います。

また、スポーツ現場での怪我への応急処置やリハビリテーションの支援も行います​

給料

給料面では、理学療法士の平均年収は約432万円で、経験や年齢に応じて増加する傾向があります​。

アスレティックトレーナーの年収は、就職先や雇用形態によって大きく異なりますが、一般的には300万円前後とされ、スポーツチームや個別契約により収入が変動することが多いです​。

このように、理学療法士とアスレティックトレーナーは資格の有無、就職先、対象者、給料といった点で大きな違いがあり、それぞれに異なる魅力とキャリアパスが存在します。

以上が、理学療法士とアスレティックトレーナーの違いでした。

最後に、理学療法士とアスレティックトレーナーのダブルライセンスを取得することで生じるメリットをみていきましょう。

理学療法士とアスレティックトレーナーのダブルライセンスを取得するメリット

理学療法士とアスレティックトレーナーのダブルライセンスを取得するメリットは以下の3つです。

  • ・両方の知識を活かしたアプローチ
  • ・働ける職場の範囲が広がる
  • ・就職や転職に有利に

両方の知識を活かしたアプローチ

理学療法士は、主にリハビリテーションを通じて患者の機能回復をサポートします。

一方、アスレティックトレーナーは、スポーツ選手の怪我予防やパフォーマンス向上に重点を置いています。

これらの資格をダブルライセンスで取得することで、リハビリテーションとパフォーマンス強化の両面から患者や選手にアプローチすることが可能です。

例えば、スポーツ選手が怪我をした場合、リハビリを行いながら同時にパフォーマンスを維持・向上させるトレーニングプランを提供することができます。

これにより、選手がより早く競技に復帰できるだけでなく、再発防止のための適切な指導も行うことができます。

  • ・リハビリとパフォーマンス向上を同時に行える
  • ・スポーツ選手の怪我予防とケアの両面をカバー
  • ・患者やクライアントに対する総合的なサポートが可能

具体例:選手のケガと回復過程におけるサポート
例えば、ACL(前十字靭帯)を損傷したサッカー選手の場合、理学療法士としてリハビリを提供しつつ、アスレティックトレーナーとしてスポーツに復帰するためのトレーニングを調整することができます。
これにより、選手は体力の低下を最小限に抑え、最適な形で競技に戻ることができます。

働ける職場の範囲が広がる

理学療法士とアスレティックトレーナーのダブルライセンスを持つことで、働ける職場の選択肢が広がります。

理学療法士として病院やクリニックで働くだけでなく、スポーツチームやフィットネスクラブ、さらには介護施設など、さまざまな現場での活躍が期待されます。

スポーツ医療の分野に特化したクリニックや、プロスポーツチームのメディカルスタッフとしても需要が高まっています。

  • ・病院やクリニックでのリハビリテーション
  • ・スポーツチームのトレーナーとして選手のサポート
  • ・フィットネスジムでのトレーニング指導
  • ・高齢者施設での機能改善プログラム提供

特に、スポーツチームに所属する場合や個人でトレーニング指導を行う場合には、時間や場所に柔軟性を持たせた働き方が可能になります。

これにより、自分のライフスタイルに合わせたキャリア設計がしやすくなり、仕事の幅がさらに広がります。

就職や転職に有利に

ダブルライセンスは、就職や転職市場において大きな強みとなります。

理学療法士としての医療的な知識に加え、アスレティックトレーナーとしてのスポーツ科学に関する知識を持つことで、幅広い雇用先からの信頼を得ることができます。

特に、スポーツに特化したクリニックやリハビリ施設では、ダブルライセンスを持つ人材が優遇されるケースが増えています。

  • ・スポーツ関連の施設や医療機関での採用率が向上
  • ・専門性の高い人材として他の求職者との差別化が可能
  • ・自営業やフリーランスとしての活躍の場も拡大

また、転職を考える際にも、ダブルライセンスは有利に働きます。

例えば、スポーツ選手向けのリハビリ施設から一般の医療施設へ転職する場合でも、その知識やスキルが多様な患者層に対して有効であるため、幅広い職種に適応できる点が評価されます。

理学療法士とアスレティックトレーナーのダブルライセンスを取得することには、多くのメリットがあることが分かりました。

幅広い知識を持つことで患者さんや選手に対する総合的なサポートが可能となり、就職や転職市場でも高い評価を得られます。

働ける職場の選択肢が増え、キャリアの幅が広がることから、将来性の高い資格取得として非常に魅力的です。

もし、医療やスポーツに興味があり、両方の分野で活躍したいと考えているならば、理学療法士とアスレティックトレーナーのダブルライセンスの取得を検討してみる価値は十分にあるでしょう。