作業療法士のセカンドキャリアについて解説!転職を考える理由とは?
作業療法士として働いている方々の中には、将来のセカンドキャリアの方向性に迷っている方も多いのではないでしょうか。
作業療法士としての経験やスキルをさらに積み重ねていくことを選ぶのか、あえて作業療法士から異なる道に転職することを選ぶのか、判断は容易ではありませんよね。
この記事では、作業療法士のセカンドキャリアにはどのような選択肢が存在するのかをご紹介いたします。
将来に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
作業療法士がセカンドキャリアに迷う理由
作業療法士が勤務先で不満を抱え、転職を考える理由は多岐にわたります。
以下に作業療法士がセカンドキャリアについて考える代表的な理由を紹介いたします。
作業療法士が「辞めたい」と感じる理由は、以下の通りです。
- 1. 体力的な負担が大きい
- 2. 営業時間外の業務が多い
- 3. コミュニケーションの負担が大きい
- 4. 望んだ業務ができない
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
1. 体力的な負担が大きい
作業療法士が別の道を考える理由のひとつは、肉体労働による体力的な負担が大きいからです。
作業療法士がリハビリを一緒に行う患者の方は、身体障害のある方や精神障害のある方、発達障がいのある子ども、高齢者などさまざまな方々です。
リハビリの内容も、机上で行える小さなものから体を大きく動かすものまでさまざまです。
一日中、作業療法士は大人の動作訓練を補助したり、レクリエーションで一緒に運動をすることがあります。そのため、体力の消耗も大きいでしょう。
年齢を重ねるにつれて、体力面に不安を感じる方も自然な流れです。
2. ワークライフバランスを保つことが難しい
作業療法士の職場では、多くの場合残業が発生し、ワークライフバランスを保つことが難しいため、転職を考える人もいます。
「リハビリの予が定営業時間内に詰まっており、事務作業は残業でしか行えない」といった状況は、現場によっては日常化しています。
患者のカルテの記入やカンファレンスの準備など、患者ごとに時間外の業務が必要です。
また、勉強会や学会・セミナーへの参加も必要であり、日々新しい症例から学ぶ必要があります。
これらの活動に費やす時間は、日常生活とのバランスを取る上で、徐々に大きな負担となっていくこともあります。
3. コミュニケーションの負担が大きい
業務におけるコミュニケーションの負担が大きいことは、作業療法士が転職を考える理由の一つとなるでしょう。
作業療法士が対応する患者の中には、精神障害や認知機能の低下がみられる方々も含まれています。
感情のコントロールが上手くできない方に対する配慮や、その保護者の要望に応えることが長期にわたって続けば、疲弊してしまうことは否めません。
また、作業療法士の業務特性上、例えば病院であれば医師や看護師など他の医療職とも緊密に関わる必要があります。
多くの人と関わりながら仕事をする以上、意見の相違や食い違いによるストレスも避けられないでしょう。
4. 望んだ業務が行うことができない
現在の勤務先では、自分が望んだ業務を行うことができない場合、転職の理由になることがあります。
勤務先の方針によっては、他のリハビリ職との明確な区別ができない場合や、純な単作業しか任されないこともよくあります。
私は深い専門性を持ち、新しい領域に積極的に挑戦したいと考えていますが、それができないとモチベーションの維持が難しくなってしまいます。
以上が、作業療法士が勤務先で不満を抱え、セカンドキャリアについて考える理由でした。
続いて、作業療法士のセカンドキャリアついて詳しくお話していきます。
作業療法士のセカンドキャリアについて
セカンドキャリアという言葉には、最近では「第二の人生における職業」というだけでなく、さまざまな意味が存在します。
例えば、「キャリアアップ」という意味では、現在の職業と同じか似た職業に転職して専門性を高めることも含まれます。
また、「キャリアチェンジ」という意味では、別の職業に転身することも含まれます。
では、作業療法士の方のセカンドキャリアについて、以下の3つを紹介いたします。
1つ目は、別職種に転職するための資格取得
2つ目は、作業療法士のまま別の勤務先に転職する
3つ目は、医療系一般企業など別業界に転職する
それぞれについて、以下で解説します。
別職種に転職するための資格取得
セカンドキャリアとして、作業療法士と同様の分野で国家資格を取得すること(=ダブルライセンス)によって、経験とスキルを活かしながら転職する選択肢があります。
作業療法士におすすめのダブルライセンス資格は、理学療法士や言語聴覚士、介護福祉士や介護支援専門員、義肢装具士、柔道整復師などです。医療の現場では、チームワークが不可欠です。
作業療法士の資格を持ちながら他の資格を取得し転職すると、自分の担当外の治療にも理解を持ちながら業務を行うことができ、結果的に患者を総合的にサポートすることができます。
ダブルライセンスの取得には、このような相乗効果が生まれるメリットがあります。
理学療法士、言語聴覚士
理学療法士は、生活の基本的な動作能力を回復させるための専門職です。
作業療法士とは異なり、主に基本的な動作に焦点を当ててリハビリを行います。
また、精神疾患の患者を対象としない点も作業療法士とは異なります。
ただし、理学療法士と作業療法士の業務内容は一部重なるものもあります。
作業療法士の資格を持っている場合、理学療法士試験の共通科目は免除されるという利点もあります。
言語聴覚士は、病気や事故、発達障がいによって言語、聴覚、発声・発音、認知、摂食、嚥下などの機能が損なわれた方を支援する職業です。
実際の業務を通じて、これらの機能のリハビリテーションの重要性を実感した方は、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
介護福祉士、介護支援専門員
介護福祉士の業務内容は、リハビリ治療で得た機能や動作を日常生活で活かせるようサポートすることです。
作業療法士は医療職であり、介護福祉士は介護職です。
両方の知識や経験を持つ人がサポートしてくれると、患者の側からすれば安心できるでしょう。
介護福祉士として実務経験を積んで、要介護認定の書類作成や申請代行などの業務を担う介護支援専門員(ケアマネージャー)へとステップアップするのもおすすめです。
義肢装具士
義肢装具士は、患者の方の採型や採寸を行い、義肢装具を製作し適合させる仕事です。
作業療法士と義肢装具士の業務内容は異なります。
作業療法士は四肢の機能をリハビリによって回復させる一方、義肢装具士は義肢の装着によって回復を支援します。
ただし、患者の方の運動機能を回復させるという点では共通しています。
義肢装具士はモノづくりの技術者としての側面も持ちますが、作業療法士から転身することにも注目されています。
柔道整復師
柔道整復師は、外傷に対して手術以外の方法で施術(治療)を行う専門職です。
骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷(筋・腱の損傷)などを治療します。
作業療法士とは異なり、医師の指示を受ける必要はありませんので、接骨院を独立して開業することも可能です。
また、その知識を活かしてフィットネスジムなどでトレーナー業を始める方もいます。
作業療法士のまま別の勤務先に転職する
作業療法士の方がセカンドキャリアを考える場合、作業療法士のまま別の職場に転職することも可能です。
転職を成功させるための方法として、認定資格を申請しキャリアアップをアピールすることもおすすめです。
認定作業療法士とは、「作業療法の臨床実践、教育、研究及び、管理運営に関する一定水準以上の能力を有する優れた作業療法士」のことを指します。
また、専門作業療法士とは、認定作業療法士の中でも特定の専門作業療法分野において「高度かつ専門的な作業療法実践能力」を持っている方を指します。
受験条件や研修に必要な期間などを確認し、転職希望の時期を考慮しながら検討してみましょう。
医療系一般企業など別業界に転職する
作業療法士は、現在の医療職から離れて一般企業に転職することも選択肢となります。
医療職としての知識や実務で培ったコミュニケーション能力は、一般企業の業務でも活かすことができます。
未経験の異なる職種に転職することに不安を感じる方は、現職を活かせる一般企業を探すことをおすすめします。
例えば、「医療機器・医薬品メーカー」などの医療系の業種であれば、営業職や事務職などでの努力が成果を生むことが期待できます。
医療の現場での経験を活かせる場面もあるでしょう。
また、コミュニケーション能力を活かすならば、「接客・販売」といった業種にも挑戦しやすいのではなでいしょうか。
相手の要求に対応する能力を違った形で発揮することができます。
以上が、作業療法士の方のセカンドキャリアについてのお話でした。
続いて、作業療法士の方におすすめなセカンドキャリアについてお話していきます。
作業療法士の方におすすめのセカンドキャリア
作業療法士のセカンドキャリアでおすすめするものは、以下の6つです。
- 1. 介護タクシーの運転手
- 2. ケアマネジャー(介護支援専門員)
- 3. 医療介護系のWebライター
- 4. 医療介護系のコンサルタント
- 5. デイサービスの開業
- 6. 訪問看護ステーションの開業
それぞれについて、詳しく説明していきます。
介護タクシーの運転手
作業療法士が介護タクシーの運転手として働くことは、地域社会において特に重要なポジションです。
高齢者や障害を抱える方々の移動支援がますます求められていますが、移動が難しい方々にとって、介護タクシーは頼りになる手段です。
作業療法士のコミュニケーションスキルや安全運転の知識が活かされ、利用者との信頼関係を築くことができます。
介護タクシーの運転手は、単なる移動手段提供者以上の存在となり、利用者との会話や気配りが求められます。
これにより、地域社会との深い結びつきを感じながら、柔軟な働き方で地域福祉に貢献できます。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
作業療法士がケアマネジャーのキャリアを選ぶと、介護保険制度の知識やケアプランの策定に独自の視点が加わります。
作業療法の専門知識は、クライアントとの信頼関係を築くために役立ち、より充実したサポートを提供できます。
ケアマネジャーの仕事は、地域の福祉に貢献するだけでなく、人とのつながりやサポートの喜びを感じられる職種です。
福祉の分野での経験を通じて、自身のスキルや視野を広げ、地域社会に良い影響を与えることが期待されます。
医療介護系のWebライター
作業療法士の得意分野は文章表現ですので、医療介護系のWebライターとしてのキャリアも非常に魅力的です。
作業療法の専門知識を活かして、読者に分かりやすく情報を提供することが求められます。
医学的な知識と文章力を組み合わせた力強い表現が、読者にとって価値ある情報を提供する手助けとなります。
Webライターとしての魅力は、柔軟な働き方が可能な点にあります。
自宅やカフェで仕事を進めることができるだけでなく、様々なテーマに触れることで自身の知識も広げることができます。
また、介護やリハビリに関する情報を多くの人に発信することで、社会に貢献する喜びを感じることができます。
医療介護系のコンサルタント
作業療法士のスキルを活用し、医療介護系のコンサルタントとして働くことは、施設や団体における効果的なケアやリハビリプログラムの構築を支援する重要な役割です。
作業療法の知識は、より効果的かつ効率的なプランの策定につながります。
コンサルタントとしての仕事は、現場での経験を生かし、他のスタッフや組織全体の品質向上に貢献できるやりがいのある仕事です。
地域社会の健康をサポートしながら、さまざまな施設や組織と協力して仕事を進めることが期待されます。
デイサービスの開業
デイサービスを開業することは、作業療法士にとって自らのビジョンを実現する素晴らしい手段です。
地域において必要とされるデイサービスを提供することで、高齢者や障害を抱える方々の生活の質を向上させることがきでます。
作業療法の手法を組み込んだプログラムやアクティビティを提供することで、クライアントの健康づくりに貢献します。
デイサービスの経営者としては、地域社会に密着したサービスを提供することが求められます。
施設内でのプログラム開発やスタッフの育成など、多岐にわたるスキルが必要とされるため、新たな挑戦となります。
しかし、その分、地域に深く根ざした満足感と達成感を味わえるでしょう。
訪問看護ステーションの開業
作業療法士が訪問看護ステーションを開業することは、地域において利用者の自宅でのケアやリハビリプログラムの提供が期待される仕事です。
作業療法ならではの個別ニーズに合わせたアプローチが、訪問看護の魅力となります。
訪問看護ステーションの経営者としては、地域の医療機関との連携を深めつつ、利用者の安心・安全な生活をサポートする役割が求められます。
地域社会において必要とされる医療・介護の提供に貢献できる仕事です。
訪問看護の領域はますます需要が高まっており、作業療法士としての専門知識が大いに活かされるでしょう。
以上が、作業療法士のセカンドキャリアでおすすめする職業でした。
多くの作業療法士は、元々患者の方を支えることに喜びを感じてこの道に進んできたと思います。
しかし、時間が経つにつれて、さまざまな理由から環境を変えることを求めるのは自然な流れです。
どちらの選択をするにせよ、自分自身が本当に望んでいることを明確にし、ライフプランを立てることが重要です。
以下の記事では、作業療法士の資格を活かした仕事や、作業療法士をやめて転職した事例などをご紹介しています。
こちらも合わせてご参考にしてください。
後悔しないためにも、しっかりと自分のやりたいことと向き合い、慎重に考えていきましょう。