作業療法士の国家試験は、多くの人にとって大きな挑戦となります。

合格への道のりは決して平坦ではありません。

しかし、その難しさを乗り越えることができれば、素晴らしい成果を得ることができるでしょう。

国家試験は、作業療法士としての専門知識や実技力が試される重要な試験であり、試験に向けた準備は慎重に行う必要があります。

そこで本記事では、作業療法士国家試験の難易度について詳しく解説します。

国家試験の合格率だけでなく、試験の概要や出題範囲を丁寧に把握することが、その難易度を正しく理解する上で重要です。

作業療法士になるために必要な国家試験の難易度

作業療法士の国家試験の概要と合格率を詳しく見ていきます。

作業療法士の国家試験は、年々およそ70〜80%の合格率を記録しており、それほど難しいものではないと言えるでしょう。

作業療法士は国家資格であり、国家試験に合格することで、その専門性を証明することができます。

国家試験の概要

2022年2月の作業療法士国家試験は、筆記試験と口述・実技試験によって構成されていました。

筆記試験は2月20日に実施され、翌日の2月21日に口述・実技試験が行われました。

筆記試験には一般問題と実地問題の2種類の問題が出題されました。

一般問題は7分野(解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要および作業療法)から出題され、実地問題は4分野(運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要および作業療法)から出題されました。

筆記試験の問題数は合計200問で、そのうち160問が一般問題、40問が実地問題でした。

試験時間は午前と午後それぞれ2時間40分ずつ設けられていました。

また、重度の視力障がいを持つ受験生に対しては、特別な配慮がなされていました。

作業療法士国家試験の合格率

2022年の国家試験の合格率は80.5%と高水準でした。

合格基準は総得点 165点以上/275点かつ実地問題 41点以上/117点以上を満たすことでした。

一般問題は1問1点、実地問題は1問3点の配点でした。

総得点の正答率は約60%であり、他の国家試験と比べて特に難易度が高いわけではありません。

しかし、合格するためには受験前の十分な準備が不可欠です。

合格率の推移

過去7年間の作業療法士国家試験の合格率推移を振り返ってみましょう。

2016年から2022年までの受験者数、合格者数、合格率の推移は以下の通りです。

年度 受験者数 合格者数 合格率
2016年 6,102人 5,344人 87.6%
2017年 5,983人 5,007人 83.7%
2018年 6,164人 4,700人 76.2%
2019年 6,358人 4,531人 71.3%
2020年 6,352人 5,548人 87.3%
2021年 5,549人 4,510人 81.3%
2022年 5,723人 4,608人 80.5%

概して、作業療法士の国家試験合格率は約80%前後で推移してきました。

ただし、2020年に87.3%まで上昇した後、2021年には81.3%に下がっています。

これは試験の難易度が少し上がったことを示唆しているようです。

以上が、作業療法士になるために必要な国家試験の難易度と概要についてでした。

続いて、作業療法士の資格を取得するまでの流れについてみていきましょう。

作業療法士の資格を取得するまでの流れ

作業療法士の資格を取得するまでの流れは、まず大学や専門学校に入学し、3〜4年間の教育課程を経て、国家試験に合格する必要があります。

これらの段階を順を追って丁寧に説明していきましょう。

養成校に入学する

高校卒業後、作業療法士を目指す者は、大学や専門学校といった養成施設への入学が必要不可欠です。

2019年時点において、全国には193の作業療法士養成校が設置されており、地域に偏りなく分布しています。

中には夜間部を設置している養成校もあるため、自身のライフスタイルに合わせて適切な施設を選択することができます。

養成校で3~4年間学ぶ

作業療法士を目指す者にとって、養成校での学びは重要な過程です。

3年制や4年制の養成校に入学すれば、医療現場で必要とされる専門知識を体系的に習得できます。

カリキュラムは大きく3つの分野で構成されています。

まず基礎分野では、医療従事者に求められる基礎的な知識や思考力を培います。

次の専門基礎分野では、人体構造や疾患の理解、リハビリ理念など、より専門的な内容に迫ります。

そして専門分野では、実践的なリハビリ技術の習得が中心となります。

学年が進むにつれ、基礎的な知識から専門性の高い内容へと学習の重点が移っていきます。

この体系的な教育課程を経て、作業療法士としての実践力を身につけていくのです。

国家試験に合格する

作業療法士を目指す学生にとって、国家試験の合格は大きな目標となります。

養成校のカリキュラムを修了した後は、国家試験に向けた準備に取り組むことになります。

直近の国家試験の概要は以下の通りです。

令和5年度の試験は2月中旬の日曜日に行われ、マークシートによる筆記試験(一般問題・実地問題)が実施されました。

合格基準は、総得点168点以上(279点満点)、かつ実地問題43点以上(120点満点)となっています。

年度によって若干の変動はありますが、作業療法士国家試験の合格には、総合的な得点と実地問題の点数の両方が重要な要素となっています。

それぞれの就職先へ

作業療法士は、国家試験の合格を経て、多岐にわたる分野で活躍することができます。

医療、介護、福祉、教育・研究、保健など、さまざまな領域で貢献することが可能です。

病院やクリニックをはじめ、通所リハビリ施設や介護老人保健施設などでの就職も選択肢の一つです。

児童福祉施設や児童発達支援センター、特別支援学校や保健所など、幅広い場所で活躍することができます。

さらに、精神科の医療機関や生活支援センターなど、上記以外の場所でも作業療法士として活躍する人もいます。

小児から高齢者まで、多様な年齢層に対応できるのが作業療法士の魅力の一つと言えるでしょう。

以上が、作業療法士になるまでの流れでした。

最後に、作業療法士とよく混合されがちな理学療法士の難易度についてみていきましょう。

作業療法士と理学療法士はどっちが難易度が高いの?

リハビリ専門職の作業療法士と理学療法士、どちらが難易度が高いのでしょうか。

国家試験の合格率を見ると、大きな差はありません。

過去5年間の統計を見ると、作業療法士の合格率は71.3%から83.8%の間で推移し、理学療法士の合格率は78.4%から86%の間で推移しているため、両者の実績はほぼ同水準にあることが分かります。

就職後の給与面でも、両者に大きな差はないと言われています。

「賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士と理学療法士の平均年収は約430万円とされています。

年齢別の推移を見ても、20代から60代にかけて400万円台後半から500万円台前半で推移しており、ほぼ同水準にあることがわかります。

つまり、国家試験の合格率、就職後の給与水準から見ると、作業療法士と理学療法士の難易度や収入面での差異は小さいと言えるでしょう。

リハビリ専門職としての役割は異なりますが、全体としては作業療法士と理学療法士の難易度は同等の水準にあると考えられます。

作業療法士を目指す者にとって、国家試験の合格は大きな課題となります。

本記事では、その概要と難易度について詳しく解説いたしました。

試験範囲や合格基準を理解し、計画的に学習を進めることが重要です。

国家試験合格を目指し、しっかりと準備を行いましょう。