作業療法士とはどんな仕事なのでしょうか?

高齢化社会の進展や、病気やケガによる障害を持つ人々の増加に伴い、作業療法士の重要性がますます高まっています。

しかし、作業療法士の仕事内容や役割について、まだ知らない方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、作業療法士とはどんな仕事なのか、やりがい、必要な資格、将来性などを詳しく解説します。
また、作業療法士になるための具体的な方法についても紹介します。

作業療法士とは?役割と重要性について

作業療法士の役割は、病気やケガ、障がいを持つ人々が、日常生活や社会生活をより自立して生活できるように支援することです。
具体的には、様々な「作業」を通して、心身の機能回復や社会復帰をサポートします。

作業療法士の「作業」って?

作業療法と聞くと、どのような「作業」を想像しますか?

実は、「作業」とは、食べる、お風呂に入る、勉強、仕事、音楽を楽しむ、スポーツするなど、人の生活に関わるすべての活動を指します。

家事や日常生活動作だけでなく、学校や職場での活動、地域での活動など、あらゆる場面における行動も「作業」に含まれます。

つまり、作業療法は、人々が日常生活や社会生活で必要とする「作業」を通して、心身の機能回復や社会復帰をサポートするのです。

作業療法士とは?

作業療法は、病気やケガ、生まれつき心身に障がいのある方など、年齢に関係なく日常生活に支援を必要とする全ての人に対して、さまざまな「作業」を用いて心身の機能回復や社会復帰をサポートする治療法です。

身体だけでなく精神面に対しても作業を用いてアプローチするため、患者さんの心と体をトータルにケアできます。

そして、作業療法士は、対象者がその人らしく生き生きとした生活を送れるように、様々な「作業」を通して心と体を支えていく職業です。

英語では、作業療法は「Occupational therapy」、作業療法士は「Occupational therapist」といい、いずれも略して「OTと呼ばれています。

作業療法士の仕事内容

作業療法士は、患者さんが「その人らしい」生活を送ることができるようになることを目標に、以下の3つの能力を改善・維持することで、また生活や環境を改善することで支援を行います。

1. 基本的動作能力の向上

急性期の作業療法として、病気やケガの直後からリハビリテーションを開始します。
症状に合わせて、心と体の基本的な機能の改善を援助するとともに、新たな機能の低下を予防します。

例:
脳卒中後の患者さんに、片麻痺の手を使って食事を摂る練習を行う。
骨折後の患者さんに、松葉杖を使って階段を昇降する練習を行う。
高齢者の方に、転倒予防のための筋力トレーニングを行う。

2.応用的動作能力の獲得

回復期の作業療法として、病気やケガの状態が安定し、具体的な生活をイメージして機能や能力の改善を図ります。

生活していくために必要な能力の獲得を目指して、食事やトイレ、着替えたりする練習や、調理や掃除などの家事の練習、外に買い物に出かける練習などを行います。

また、手芸や木工、将棋、園芸など、趣味として行われるような動作も取り入れ、より豊かな生活が送れるようサポートもします。

例:
脳梗塞後の患者さんに、調理や掃除などの家事の練習を行う。
自閉症スペクトラム障がいのある子どもに、手芸や絵画などの創作活動を通して、コミュニケーション能力を向上させる練習を行う。
うつ病の患者さんに、散歩やジョギングなどの運動を通して、気分転換やストレス解消を促す練習を行う。

 

作業療法士の一連の仕事の流れ

作業療法士の役割は、医師からの指示に基づき、身体障がいを抱える患者さんのリハビリテーションを行うことから始まります。

まず、理学療法士が基本動作の回復を目指す訓練を行い、その後、作業療法士が応用動作の訓練を担当します。

リハビリの成果が表れるまでには長期間を要するため、作業療法士は様々な方法を試しながら、一人ひとりの患者さんに寄り添い、粘り強く治療を続けていきます。

例えば、脳梗塞で右半身に麻痺が残る患者さんに対しては、残された身体機能を活用し、日常生活を送れるよう指導を行います。

やがて、患者さんの心身機能が回復すれば、退院や転院、他施設への入所といった形で、リハビリの一連の業務が完了します。

しかし、退院後も外来でのリハビリを続ける患者さんもおり、作業療法士は長期にわたって患者とつながり続けることもあります。

作業療法士のやりがいは患者さんの笑顔

作業療法士にとって最も大きなやりがいは、患者さんの笑顔です。

日常生活で困っていたことが、作業療法を通して出来るようになると、患者さんはとても喜ばれます。

また、作業療法を通して自信を取り戻し、生き生きと生活するようになる患者さんを見ると、作業療法士としても大きな喜びを感じることができます。

さらに、患者さんやご家族から感謝の言葉を受けることも、作業療法士にとって大きな励みになります。

作業療法士は、患者さんの笑顔を通して、自分の仕事が誰かの役に立っていることを実感することができる仕事です。

そしてそれが、作業療法士の仕事最大のやりがいなのです。

このように、日常生活や社会生活をより自立して生活できるように支援することが、作業療法士の役割です。

では、そんな作業療法士が活躍する場についてみていきましょう!

作業療法士の活躍の場

作業療法士が活躍する場所は、主に総合病院や大学病院、クリニックなどの医療機関です。

そこで、循環器科、整形外科、小児科、精神科などの患者の診療に携わっています。

また、障がい者施設や児童福祉施設といった福祉の分野、老人保健施設や老人ホーム、デイケアセンターなどの介護の分野にも多数の就職先があります。

さらに、地方自治体が運営する保健分野の行政施設で、公務員として働く作業療法士もいます。

その他にも、就労支援事業施設やハローワークなどで職業訓練を行ったり、発達障がいを抱える子どもたちが通う特別支援学校で教育に携わる作業療法士もいるなど、さまざまな分野で活躍できる仕事です。

医療現場における作業療法士の役割

作業療法士は医療施設において、身体的・精神的な障がいを持つ患者さんのリハビリテーションを担当しています。

その業務内容は勤務先によって異なりますが、脳血管疾患患者が最も多く、全体の過半数を占めています。

続いて、精神障がい患者や外傷患者といった患者層も一定の割合を占めています。

患者の容態に応じて、リハビリ室での訓練と病室での訓練を使い分けながら、残された機能を最大限に活用できるようサポートするのが、作業療法士の役割です。

中には、完全な回復が難しい場合もあり、その際は患者さんの生活の質の向上を目指して支援を行うことが、作業療法士の大切な役割となっています。

介護施設における作業療法士の役割

介護施設に入所する高齢者の多くは病状が安定しており、急変のリスクは低い一方で、リハビリによる劇的な症状改善も期待できません。

そのため、介護施設の作業療法士の役割は、医療施設とは異なり、主に看護や介護の一環としてリハビリを行うことにあります。

具体的には、日常生活の補助はもちろん、ゲーム、工芸、音楽など、高齢者が楽しめる活動をリハビリに取り入れ、手先の機能維持、認知力の低下抑制、精神的なリラックスなどを目的とします。

医療施設と比べ、介護施設では高齢者個人の性格や自尊心などを尊重することがより重要となります。

公務員として働く作業療法士の姿も

作業療法士は、公務員としても活躍の場を広げています。

保健所や保健センターをはじめ、市役所の高齢サービス課や健康増進課など、行政機関での仕事に就く人も少なくありません。

作業療法士の役割は、さまざまな作業を通して対象者の自立した生活を支援することです。

そのため、臨床現場での経験に加えて、行政機関における福祉政策や介護政策の企画・立案など、幅広い活躍が期待されています。

中には、病院などでキャリアを積んだ後に公務員となる作業療法士も多く見られます。

現場での知識と経験が、行政職としての業務遂行に活かされているのです。

また、作業療法士が活躍する場所として今注目されているのが、放課後等デイサービスです。

放課後等デイサービスでは、個別に子どものニーズに合わせた療法や活動を提供し、子どもの成長と発達に貢献することができます。

勤務時間・残業時間などあなたに合った施設が見つかるかもしれません。

では、そんな作業療法士が行う治療法についてみていきましょう。

作業療法士が行う主な治療法

作業療法士が行う主な治療法は一般的に、身体障がい、精神障がい、発達障がい、老年期障がいの4つの領域に分類されます。

作業療法は、幅広い年齢層の患者に対して様々な症状に対応できる汎用性の高い治療法です。脳血管障がいから外傷、精神疾患まで、多岐にわたる対象に対してリハビリを行います。

それぞれの領域では求められる知識やスキルが異なるため、作業療法士は通常、特定の領域に専門性を高めていきます。

療法の目的や具体的なリハビリプログラムは、患者の障がいに合わせて設定されます。

理論自体は共通しているものの、現場では個々の解釈の違いから、養成校で学んだことと異なる指示を受けることもあります。

しかし重要なのは、一つの考え方に固執せず、その場その場で柔軟に対応することです。

なぜなら、患者さんに最適なリハビリは千差万別であり、作業療法士には状況に合わせた適切な対応が求められるからです。

身体障がい分野における作業療法

身体がい領域においては、病気やけがの後遺症により、四肢をはじめとする身体の一部に麻痺を抱えた患者さんの機能回復に取り組んでいます。

しかし、一度失われた機能を完全に取り戻すことは難しく、懸命努に力しても以前の状態に戻れない患者さんも多数いるのが実情です。

そのため、身体障がいのリハビリの目的は、残された身体機能を最大限に活用し、できる限り不自由なく生活を送れるように支援することにあります。

つまり、患者さんの「生活の質(QualityOfLife:QOL)」を高めることがこの、リハビリの主要な目標なのです。

精神障がい分野における作業療法

精神障がい分野における作業療法士は、うつ病や統合失調症などの精神疾患により日常生活動作や社会復帰が困難になった患者さんを担当しています。

精神疾患の発症により、自律神経系の乱れから注意力の散漫や緊張状態の持続、手足の震えなど、単一の動作を完遂することが難しくなるケースが見られます。

そのような患者に対し、身体面と精神面の両側面からアプローチすることが作業療法士の仕事です。

結果、介護を必要とせず日常生活を送れるようにしたり、職場復帰を支援したりすることが、精神障がい領域のリハビリテーのション目的となっています。

発達障がい分野における作業療法

発達障がいは、自閉症やアスペルガー症候群、学習障がい、注意欠乏多動性障がいといった脳機能の障がいであり、多くの場合、幼い子どもが対象となります。

保育園や学校などでは、他の子どもたちとうまくコミュニケーションが取れないことや、定期健診で言語や学習能力の発達に遅れが指摘されることがあります。

そのような場合、作業療法士によるリハビリが行われることがあります。

発達障がい領域におけるリハビリの目的は、学校や地域社会などの集団生活の場で、年齢相応の行動ができるようにすることです。

発達障がいの症状は多様ですが、能力が根本的に欠如しているわけではなく、周囲と比べて成長のスピードが遅いだけです。

作業療法士が、それぞれの子どもの能力レベルに合わせてリハビリプログラムを考え、継続的に行うことで、各人の自然な成長を促すことが可能となります。

以上が、作業療法士が行う主な治療法の例でした。

作業療法士は、病気や障がいを持つ方々が自立した生活を送るための重要なサポートを提供する職業です。

身体的なリハビリだけでなく、精神的なケアや社会復帰の支援も行い、患者さん一人ひとりの「その人らしい」生活を実現するために尽力しています。

様々な現場で活躍し、日常生活の質を向上させるための専門知識と技術を持つ作業療法士の存在は、今後ますます重要になるでしょう。