作業療法士がスキルアップするには?おすすめの資格や副業について
「スキルアップしたい」という理由は、作業療法士として成長したいという思いから生まれます。
具体的な理由としては、「給料を上げたい」「専門性を高めたい」「自身の強みを作りたい」といったものがあります。
しかし、作業療法士のスキルアップの具体的な方法については、分からない方も多いかもしれません。
そこで、本記事では作業療法士の方々がスキルアップするためにできることをまとめました。
以下にご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
作業療法士ができるスキルアップの方法
作業療法士の方ができるスキルアップの方法をレベル順でご紹介していきます。
まずは、作業療法士として働き始めてから1~2年程度経った方々向けに、スキルアップの方法を紹介いたします。
スキルアップと聞くと、多くの方々は「資格」を思い浮かべるかもしれません。
しかし、作業療法士に関連する資格は実務経験が最低でも2年以上必要なものばかりです。
しかし、資格の取得以外でもスキルアップは可能ですので、安心してください。
【作業療法士1~2年目】スキルアップできる環境で働く
経験が浅い作業療法士の方には、スキルアップができる環境で働くことをおすすめします。
経験の浅い段階では、資格取得よりも知識と技術を得るための勉強会や講習会に積極的に参加し、作業療法士としての基盤を築くことが重要です。
教育環境が整っている施設では、定期的に勉強会や講習会が開催されています。
そのため、新しい知識を習得する機会が豊富であり、また疑問点なども迅速に解決できます。
知識や技術を向上させるチャンスが多い環境で働くことは、経験の浅い作業療法士にとって非常に有益です。
また、意欲のある同僚と共に働くことは、良い刺激となるでしょう。
まずは、所属する施設の勉強会などに積極的に参加することをお勧めします。
もし、講習会などが少ない施設で働いている場合は、教育体制が整っている職場への転職を検討してみるのも一つの手でしょう。
【作業療法士1~2年目】セミナーに参加する
働いている施設での勉強会や講習会の有無に関わらず、セミナーへの参加をおすすめします。
特に、職場で学ぶ機会が少ない作業療法士にとっては、スキルアップのチャンスとなるため、積極的にセミナーへの参加を検討してください。
セミナーでは、座学だけでなく実技講習も行われており、知識だけでなく技術の習得も可能です。
作業療法士会のホームページには、セミナーや研修会などの情報が掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。
また、POSTARTでは随時セミナー情報を公開していますので、作業療法士会に入会していない方や、手軽にセミナー情報を確認したい方にもおすすめです。
隙間時間を活用して、簡単にセミナー情報を閲覧することができますので、気になるセミナーがあればぜひ参加してみてください。
続いて、作業療法士として3~5年以上の実務経験がある方々向けの、スキルアップの方法をご紹介いたします。
作業療法士として3~5年働いていると、仕事にも慣れてきて、後輩が入ってくることもあるかもしれません。
このような時期になると、スキルアップのために何か資格を取得しようかと考える方が多くなります。
しかし、スキルアップのための資格はたくさんあり、どれを取得するか迷うこともあるかもしれません。
そこで、実務経験3~5年以上で取得できる資格をご紹介いたします。
【作業療法士3~5年目】資格を取得する
以下の6つの資格は、実務経験が3〜5年以上ある作業療法士の方々に人気があります。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障害者に快適な住環境を提案するために育成されるアドバイザーの民間資格です。
この資格を取得することで、退院前の訪問指導や訪問リハビリテーションの一環でケアマネージャーや福祉用具専門相談員と連携し、住宅改修の提案に関わる機会もあります。
そのため、福祉用具や住環境に関する知識を得ることができるメリットがあります。
福祉住環境コーディネーターには1~3級の階級があり、1級を取得するためには2級に合格する必要があります。
職種や経験年数による受験資格の制限はありませんが、特に初級段階の3級は学生や新卒のOTにとって比較的取得しやすい資格です。
<受験資格>
学歴・年齢・性別・国籍による制限なく、どなたでも受験が可能。
呼吸療法認定士
「3学会合同呼吸療法認定士認定委員会」は、日本胸部外科学会、日本呼吸器学会、日本麻酔科学会から派遣された委員によって構成された組織であり、呼吸療法認定士の認定制度を創設しました。
この認定制度は、呼吸療法に熟練し、呼吸管理を行う医療チームの一員を育成し、そのレベル向上を目指すことを目的としています。
また、呼吸療法の目的、理論、治療の実践などに関する専門知識を身につけることができます。
この資格は、呼吸器疾患に関わる機会が多い方や呼吸サポートチームがある病院で働く方に特におすすめです。
2023年3月7日時点で、2,191人の方がこの資格を取得しています。
<受験資格>
・実務経験が2年以上ある。
・認定委員会が認める学会・講習会等で12.5点以上取得している。
心臓リハビリテーション指導士
「心臓リハビリテーション指導士」とは、「日本心臓リハビリテーション学会」によって認定された資格です。
包括的な心臓リハビリを通じて循環器疾患の再発予防とQOL向上に貢献することを目的としています。
心リハ指導士は、運動療法のみならず、栄養管理や生活習慣指導を含めた包括的な知識を持つ心臓リハビリのスペシャリストです。
循環器分野に興味のある方や関わる機会の多い方には、スキルアップ資格としておすすめです。
<受験資格>
・委員会主催の講習会を当該年度に受講している。
・作業療法士の資格を取得している。
・受験申請時、また申請時の直近2年以上継続して会員歴がある。
・心臓リハビリ指導の実地経験が1年以上ある。もしくは、心臓リハビリ研修制度により受験資格認定証の交付を受けている。
認定作業療法士
認定作業療法士とは、作業療法士としての臨床実践、教育、研究、管理運営の各種能力が一定水準以上であることが認められた資格です。
<受験資格>
・作業療法士としての実務経験が5年以上ある。
・都道府県の作業療法士協会に所属している。
・日本作業療法士協会主催の「共通研修(3講座)」「選択研修(2講座以上)」の受講と試験合格が必要。
・事例報告(3症例)
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員(ケアマネージャー)は、介護保険法において位置づけられた職種です。
この職種は、介護保険の中核である「ケアマネジメント」を担当するための国家資格です。
利用者の要望や身体・精神の状態を考慮し、適切なサービスを受けることができよるうに、ケアプランの作成や関係機関との連絡調整を行うことが主な業務です。
介護保険の知識やケアマネジメント能力を高めるためには、ケアマネージャーの資格取得がおすすめです。
<受験資格>
・国家資格に基づく実務経験が5年以上ある。
栄養サポートチーム専門療養士
専門療法士が持つ資格である栄養サポートチームの目的は、日本臨床栄養代謝学会によって制定された臨床栄養学の知識と技術を備えることです。
この資格は、主に静脈栄養や経腸栄養を用いた栄養サポートのために、医療従事者の育成を目指しています。
最近では、リハビリテーション栄養という言葉も広まっており、セラピストが栄養学の知識を身につけることの重要性が増しています。
<受験資格>
・作業療法士として5年以上医療、福祉施設で勤務しており、かつ栄養サポートに関する業務に従事した経験がある。
・学術集会、受験必須セミナーなどに参加し、必須単位を取得している。
・認定教育施設において、40時間の実地修練を修了している。
【作業療法士6年目以上~】「専門作業療法士」を取得する
作業療法士6年目以上の方に向けて、将来的に目指せる資格をご紹介いたします。
まず、先ほどご紹介した「認定作業療法士」の資格を取得し、一定の実績を積み上げてさらなるスキルアップを目指す方には、「専門作業療法士」の資格取得をおすすめいたします。
専門作業療法士は、特定の分野においてより専門的な知識と技術を提供するスペシャリストとして、高品質なサービス提供が求められます。
この資格は、作業療法士として優れた能力を持っていることを示すものであり、キャリアアップだけでなく、転職時のアピール材料としても非常に役立つものです。
ただし、専門作業療法士の資格を取得するには、まず「認定作業療法士」の資格を取得していることが前提条件となります。
また、各専門分野における4つの実践(研修・臨床・研究・教育と社会貢献)を修了し、審査を通過することで、認定試験を受けることができます。
<受験資格>
- ・認定作業療法士の資格を取得している。
- ・専門分野においての4つの実践を修了している。
- 1)研修実践:計20専門単位
- 2)臨床実践:計20専門単位
- 3)研究実践:計10専門単位
- 4)教育と社会貢献の実践:計10専門単位
- ・資格認定審査の合格
専門作業療法士の資格を取得する際には、自身がどの分野に特化していきたいかを事前に考慮する必要があります。
では、具体的にはどのような分野が存在するのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
【作業療法士6年目以上~】専門性を高めていく
専門作業療法士の資格を取得するためには、資格認定審査に合格する必要があります。
そのためには、まずは専門分野を選び、その分野での専門性を高める必要があります。
現在は10の専門分野があります。
<専門分野>
- ・福祉用具
- ・認知症
- ・手外科
- ・特別支援教育
- ・高次脳機能障害
- ・精神科急性期
- ・摂食嚥下
- ・訪問
- ・がん
- ・就労支援
上記の中から、専門とする分野を選び、研修や臨床、研究、教育、社会貢献などの活動を行います。
資格取得の前に、今後どの分野を専門として進んでいきたいのかを考えておきましょう。
以上が、作業療法士の方ができるスキルアップの方法でした。
続いて、上記でご紹介した資格の他に、資格取得がおすすめな資格をご紹介していきます。
作業療法士のスキルアップのためにおすすめな民間資格
ここからは、作業療法士(OT)のスキルアップに役立つ民間資格について解説します。
まずは、現在の専門分野でのスキルを活かすことができる資格や、新しい分野にチャレンジする際に役立つ資格を選ぶことが重要です。
この他にも、地域糖尿病療養指導士やシーティング・コンサルタントといった資格も存在しますが、今回はキャリア形成に特に役立つ資格を厳選しました。
ぜひ参考にしてください。
認知症ケア専門士
「認知症ケア専門士」は、「日本認知症ケア学会」によって認定される資格であり、認知症介護従事者の自己研鑽や生涯学習の機会を提供することを目的としています。
この資格は、老年期や精神科だけでなく、身体障害のある患者さんにも関わるOT(作業療法士)のスキルアップに人気があり、2022年12月現在、1,597人が取得しています。
受験資格は、「試験実施年から過去10年間において、認知症ケアの実務経験が3年以上あること」とされています。
第1次認定試験(筆記試験)と第2次認定試験(論述試験、面接試験)に合格することで、この資格を取得することができます。
健康運動指導士
「公益財団法人 健康・体力づくり事業財団」が制定した認定資格である健康運動指導士は、個々人の心身の状態に適した安全かつ効果的な運動プログラムを作成し、実施する役割を担っています。
健康運動指導士は、生活習慣病予防や介護予防に関する専門知識を身に着けることで、OTとしての業務を兼務することも可能です。
これにより、仕事の幅を広げることができます。
健康運動指導士の認定資格を取得するには、財団が定める養成講座を受講し、所持している資格に応じた必要な単位(OTの場合は104単位)を取得し、認定試験に合格する必要があります。
JSPO-AT(アスレティックトレーナー)
JSPO-AT(アスレティックトレーナー)は、競技者の健康管理、外傷・障害予防、スポーツ外傷・障害の救急処置、アスレチックリハビリテーション、体力トレーニング及びコンディショニングなどを行うために、民間資格として「公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)」によって認定されました。
この資格は、整形外科でスポーツリハビリテーションに従事している方や、フィットネスクラブなどで体力トレーニング指導に興味のある方におすすめです。
資格を取得するためには、JSPOやJSPO加盟団体などからの推薦を受け、受講者選考基準を満たし、指定された講習会を受講し、最終的に検定試験に合格する必要があります。
NESTA-PFT(パーソナルフィットネストレーナー)
NESTA-PFT(パーソナルフィットネストレーナー)は、身体に関する専門知識や実践的技術、ビジネススキルなど、プロフェッショナルにとって不可欠な総合的な知識と技術を学ぶことができる民間資格です。
この資格は、「全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)」によって認定されています。
この資格は、フィットネスクラブでパーソナルトレーナーを目指す方や、海外での活躍を視野に入れている方に特におすすめです。
取得方法は、養成講座を受講し認定試験に合格するか、既にパーソナルトレーナーとして経験があるなど、受験要件を満たしていれば、直接認定試験を受けることができます。
NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)
NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)は、フィットネスクラブのトレーナーやスポーツ指導者に興味がある方におすすめの民間資格です。
この資格を取得するためには、NSCAジャパンの会員であり、CPR(心肺蘇生法)やAED(自動体外式除細動器)の講習会を受けていることなどの資格取得条件を満たし、認定試験に合格する必要があります。
取得後は、健康や体力のニーズに関する評価、動機づけ、教育、トレーニング、コンディショニング全般の指導が専門的に行えるようになります。
以上が、作業療法士(OT)のスキルアップに役立つ民間資格でした。
最後に、実際に働きながら知識や技術を磨く方法として、おすすめの副業をご紹介していきます。
作業療法士のスキルアップのためにおすすめな副業
作業療法士のスキルアップの方法には、実際に働きながら知識や技術を磨くために副業をする方法があります。
作業療法士(OT)の資格を活かして副業を行うことは、収入を増やしながら知識を深めるという大きなメリットがあります。
以下では、具体的な副業について詳しく説明していきます。
セミナーや専門学校などで、臨時講師として働く
講師の仕事は、受講者にわかりやすく知識を伝えるために、自身の持つ知識を整理し発信する必要があります。
また、自身の知識をより確固たるものにする効果も期待できます。
また、この仕事は同業者や医療・福祉に興味を持つ人々に自分の名前やスキルを知ってもらえるチャンスでもあります。
時には、講師の仕事を通じて他の仕事の紹介を受けることもあり、キャリアアップや収入向上につながるメリットがあります。
卒業した学校の先生や先輩と積極的に連絡を取り合ったり、セミナーに参加した際には名刺交換を行ったりすることで、積極的に人脈を広げてみると良いでしょう。
別の職場で短時間のパートとして働く
メインの職場で平日に働きながら、土日に別の職場でパートをするという働き方もあります。
掛け持ちの職場では、メインの職場と同じ分野で働くこともできますが、意図的に異なる分野で働くこともおすすめです。
それによって気分転換にもなり、知識の幅も広がるでしょう。
需要が高まっているのは、訪問リハビリやデイサービス(高齢者向けや放課後等)などの短時間のパートです。
ただし、掛け持ちで働くことによって休息時間が短くなとるいうデメリットもありますので、体調管理には十分留意する必要があります。
最後に、副業が禁止されている職場もありますので、トラブルを避けるためには、事前に上司に確認し、許可を得るようにしましょう。
このように、作業療法士のスキルアップの方法には、実際に働きながら知識や技術を磨くために副業をする方法があります。
作業療法士の経験が浅い方には、積極的にセミナーや講習会などに参加して作業療法士としての基盤を強化することが重要です。
経験を積んだ後は、スキルアップにつながる資格取得に挑戦してみましょう。
また、専門としたい分野や興味がある分野がある場合は、その分野に関連する職場への転職を考えてみるのも良い考えでしょう。
幅広いキャリアを築くために、看護師や保育士のダブルライセンスを取得する人もいます。
作業療法士と看護師・保育士のダブルライセンスについては以下の記事をご参考にしてください。
前向きな気持ちでスキルアップを望むことは非常に重要です。
作業療法士としてスキルアップするためには、まず自分に必要なものや何から始めるべきかをじっくり考えてみてください。
そして、自分に合ったスキルアップの方法を選びましょう!