作業療法士とはOTと呼ばれる、医療現場や介護施設で、患者や利用者の身体的・精神的リハビリテーションを担う専門家です。

彼らは、対象者の社会生活機能の維持や向上にも取り組んでいます。

この記事では、作業療法士(OT)の資格や職業について詳しく解説します。

その定義や業務内容、作業療法士としての仕事内容や活躍の場、平均給与などについて紹介します。

作業療法士とはOTと呼ばれる、身体的・精神的リハビリテーションを行う専門家たち。

彼らは一体どんな仕事をこなしているんでしょうか。

作業療法士(OT)を目指す人や、この職業に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

作業療法士とは(OT)

作業療法士とは、「OT」と略されている、リハビリテーションの分野における専門家の一員です。

その専門性は、対象者の「作業」に重点を置いた治療と支援にあります。

英語では「Occupational therapist」と呼ばれ、日本においては「OT」と略されて知られています。

「作業療法」とは?

「作業療法」とは、心身に障害のある方々の治療手段として、さまざまな作業活動を活用する療法です。

ここでの「作業」とは、日常生活に関わる全ての活動を指しており、セルフケア、家事、仕事、余暇活動などが含まれます。

何らかの理由で作業(=活動)が困難になった際、作業療法士(OT)はさまざまな方法で対象者をサポートします。

作業療法士(OT)は、身体的な側面だけでなく、精神面にも作業を用いてアプローチすることができます。

作業療法士(OT)の役割は、対象者が自分らしく生き生きとした生活を送ることができるよう、さまざまな作業を通して心と体を支えていくことにあります。

作業療法士(OT)の歴史

作業療法士(OT)の歴史は古代エジプトやギリシアにまで遡ります。

当時は現代のような形態ではありませんでしたが、日常的な活動が心身の癒しに重要とされていました。

その後、ヒポクラテスが病人の自然治癒力を高める手段として「作業」を推奨し、ガレノスも「仕事は人間の幸福に不可欠」と述べ、作業療法の発展に寄与しました。

18世紀末には、フランスのピネルが精神病院の患者を解放し、農作業やレクリエーションで回復を図る「精神障害者の解放運動」や「道徳療法」が展開されました。

また、産業革命に対抗する「アーツ・アンド・クラフツ運動」も、現代の作業療法に影響を与えています。

日本では、呉秀三が精神障がい者の無拘束化を推進したことが作業療法の始まりとされ、戦後は GHQ の指導の下、リハビリテーションの重要性が認識されるようになりました。

1963年に東京都清瀬市に日本初の作業療法士養成校が開校し、1965年に理学療法士および作業療法士法が制定されました。

第1回国家試験に合格したのは22名で、彼らが日本の作業療法の基礎を築いていきました。

作業療法士(OT)と理学療法士の違いとは?

作業療法士(OT)と理学療法士は、職場や名称が似ていることから、その違いが分かりにくいことがあります。しかし、両者の仕事の内容や目的は明確に異なります。

理学療法士は、患者さんや利用者の日常生活に必要な基本動作、例えば寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行などの回復を目指す専門職です。

具体的には、関節可動域の拡大や筋力強化といった運動機能の治療、動作練習、歩行練習などを行い、対象者の日常生活の自立を支援します。

一方、作業療法士(OT)は、日常生活の基本動作に加えて、応用的な動作や社会的適応能力の回復をサポートするのが主な役割です。

そのため、食事、入浴、着替え、家事などはもちろん、その人らしい生活を目指した様々な訓練を行います。

また、作業療法士(OT)は精神に障がいのある方へのアプローチも可能な職種であり、うつ病や摂食障がいなど、精神疾患を持つ方も訓練の対象となります。

まとめると、作業療法士とは(OT)、医療機関や介護施設において、患者や利用者の身体的・精神的な回復を支援する専門家です。

彼らは、日常生活動作の訓練や、機能改善のためのさまざまなアプローチを通して、クライアントの自立と社会復帰を目指しています。

そんな作業療法士(OT)の仕事内容についてみていきましょう。

作業療法士(OT)の仕事内容

作業療法士(OT)の仕事内容は対象領域によって多様ですが、あらゆる場面において「対象者の自己実現」を支援する姿勢は一貫しています。

作業療法士(OT)は、対象者の身体的・精神的機能、生活環境、個人的ニーズなどを総合的に把握し、それに応じた作業療法のアプローチを実施していきます。

作業療法士(OT)が関わる時期

現代社会において、病気の早期発見・早期治療、健康寿命の延伸に向けた介護予防が重要視されています。

作業療法士(OT)は、発症直後から人生の終末期に至るまで、さまざまな時期に関わっています。

作業療法士(OT)が対象者と関わる主な時期と業務内容は以下の通りです。

予防期:
– 疾病や障がいを未然に防ぎ、日常生活への支障を最小限に抑える。
– 加齢やストレスによる心身機能の低下に対して、作業療法の観点から介入する。
– 健康状態の変化にも対応し、健康増進の支援を行う。

急性期:
– 発症直後の集中的な医療治療期間中、二次的障がいの予防や回復期への円滑な移行を支援する。

回復期:
– 障がいの改善が期待できる時期に、心身機能の回復や活動・参加能力の獲得を積極的に支援する。

生活期:
– 疾病や障がいが一定レベルに達した時期に、再発の予防と社会参加の促進を図る。

終末期:
– 対象者の心身機能の維持と尊厳ある生活の実現、家族への支援を行う。

作業療法士(OT)が関わる分野

作業療法士(OT)の主な対象領域は身体障がい、精神障がい、発達障がい、老年期障がいの4つに大別されます。

その中でも、身体障がい領域で活躍する作業療法士(OT)が全体の半数を占めています。

続いて老年期障がい、精神障がい、発達障がいの順となりますが、各領域によって業務内容や活躍の場は異なっています。

身体障がい領域

作業療法士(OT)は身体障がい領域において、病気やけが、事故などの後遺症により運動機能が低下したり、体にまひが残ったりする方々をサポートしています。

具体的には、起き上がりや歩行といった基本的動作や、食事、着替え、入浴などの応用的動作の訓練を行い、日常生活活動の維持・改善を目指します。

また、症状の回復状況に合わせて、家事や公共交通機関の利用などのリハビリも行い、本人らしい生活と社会復帰を支援します。

作業療法士(OT)の職場は、一般病院、総合病院、大学病院、整形外科病院、身体障害者福祉センター、リハビリテーションセンターなどに広がっています。

精神障がい

精神障がい領域において、作業療法士(OT)は統合失調症、うつ病、認知症、アルコール・薬物依存症などの対象者を支援します。

これらの方々は日常生活に支障をきたしているため、作業療法士(OT)は対象者の心に寄り添いながら、生活技能訓練や職業リハビリテーションなどを行い、コミュニケーション力や社会適応能力の改善を目指します。

精神障がい領域に従事する作業療法士(OT)は、精神科病院、デイケア、メンタルクリニック、支援センター、福祉センターなどに勤務しています。

発達障がい

発達障がい領域における作業療法士(OT)の役割は、遊びの要素を取り入れた作業療法によって、対象者の運動能力、学習能力、社会性などを向上させ、心身の発達を促すことです。

また、作業療法士(OT)は医療機関や教育機関と連携しながら、家族への助言や環境づくりなども行います。

この領域には自閉症や脳性まひ、知的障がい、学習障がい、発達障がいなどの障害がある子どもが対象となります。

そのため、それぞれの症状や疾患に応じた訓練やサポートが必要となり、医学的知識を身につけておくことが重要です。

発達障がい領域に携わる作業療法士(OT)の職場は、一般病院や総合病院の小児科、小児科病院、発達障がい児支援センター、児童福祉施設、特別支援学校、放課後等デイサービスなどです。

老年期障がい

加齢に伴う身体機能や認知機能の低下により、日常生活や社会参加に支障をきたす高齢者(65歳以上)が、この領域の対象となります。

作業療法士(OT)は、食事、着替え、排せつ、入浴、買い物などのトレーニングを通して、自立した日常生活を送れるよう支援します。

また、将来の機能低下を予防するための作業療法も行います。

その際、作業療法士(OT)は対象者の考え方や不安な気持ちに寄り添い、精神の安定を図ることが重要です。

この領域で活躍する作業療法士(OT)は、認知症を診療する一般病院や総合病院、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護ステーション、在宅介護支援センターなどで勤務しています。

作業療法士(OT)が活躍できる場所

先ほどの説明に繋がりますが、作業療法士(OT)の職域は多岐にわたります。

その大部分を占める医療施設と介護保険関連施設における作業療法士(OT)の業務内容を紹介します。

医療施設

作業療法士(OT)は、大学病院やリハビリテーション病院、一般の総合病院などの作業療法部門に所属し、リハビリテーション業務に従事しています。

作業療法は、医学的な治療がある程度落ち着いた後に行われることが一般的ですが、患者の状態を慎重に把握しなければなりません。

バイタルサインや栄養状態などの情報を十分に把握しないまま介入すると、患者の回復に悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重な対応が求められます。

新人作業療法士にとって、障害を受け止められない患者の心理的ケアは大変な責任を伴いますが、障害を克服していく過程に携わることができるのは、大きな意義と喜びとなるでしょう。

介護保険関連施設

介護保険サービスを提供する施設に所属する作業療法士(OT)は、介護支援専門員が作成するケアプランに基づいて、機能訓練や日常生活動作訓練、指導を行います。

主な勤務先は以下のようなところです。

– 介護老人保健施設
– 特別養護老人ホーム
– 訪問看護・リハビリ事業所
– 通所リハビリテーション施設
– 通所介護施設(デイサービス)

医療施設で働く作業療法士(OT)と比べると、理学療法士や社会福祉士といった他職種との連携が密接です。

また、介護保険関連施設では、医療・介護従事者だけでなく、地域住民との連携も重要になります。

信頼関係の構築に時間がかかることもありますが、作業療法を通じて地域全体の健康づくりに携われるのは大きな魅力といえるでしょう。

様々な場所で患者を支え、活躍できる作業療法士(OT)の仕事内容をご紹介しました。

そんな作業療法士(OT)には、一体どんなスキルが必要とされるのでしょうか。

作業療法士(OT)に必要とされるスキル

作業療法士(OT)には、多様なスキルが必要とされます

クリエイティビティ、コミュニケーション力、分析力など、幅広い専門性が必要不可欠です。

この職業は挑戦的ではありますが、それだけやりがいも大きいのが特徴といえるでしょう。

①コミュニケーション能力

作業療法士(OT)は、幅広い年齢層の患者を対象にリハビリを提供しています。

中には、病気やケガをきっかに精神的に不安定な状態にある方もいるでしょう。

そのため、作業療法士(OT)には、どのような患者にも柔軟に対応できる高度なコミュニケーション能力が求められます。

リハビリに消極的な患者や、態度が横柄な患者がいたとしても、会話を通じて趣味や好み、希望などを引き出すことができれば、より良好な関係が築け、より効果的なリハビリが提案できるはずです。

また、日々の会話を通じて患者の悩みや不安を取り除き、元気づけることも、作業療法士(OT)の重要な役割なのです。

②観察力

作業療法士(OT)にとって、対象者の状態変化を的確に捉え、心情を把握することは重要な能力です。

早期に変化を察知することで、プログラムや自助具の調整を円滑に行うことができます。

さらに、患者の気分や心理の変化に気づくことは、信頼関係の構築にもつながります。

③忍耐力

リハビリには長期的な取り組みが欠かせません。

作業療法士(OT)には、対象者と長期的な視点で向き合い、根気強くサポートする姿勢が求められます。

対象者の中には、リハビリの進捗に焦りや落胆を感じる方もいます。

そのような場合、作業療法士(OT)が焦ってしまうと、対象者の不安感をさらに高めてしまう可能性があります。

したがって、作業療法士(OT)には、どのような状況でも根気強くリハビリを続け、対象者の社会復帰を支えようとする姿勢が重要です。

前向きに取り組む作業療法士(OT)の姿が、患者や利用者のやる気や笑顔につながるはずです。

作業療法士とは、「OT」と呼ばれる、リハビリテーション領域における専門家で、コミュニケーション能力や忍耐力などのスキルが求められる魅力的な仕事でした。

今回の記事が、「作業療法士とは?OTと呼ばれてるの?」というあなたの疑問を解消できていましたら幸いです。

以下の記事では、作業療法士のあるあるをご紹介しています。

リアルな作業療法士の日常を知ることができるので、ぜひ参考にしてください。

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