「作業療法士と理学療法士の違いって何だろう」

そんな疑問を感じたことはありませんか?

医療や福祉分野で活躍するリハビリテーション職である作業療法士と理学療法士。

両者は医師の指導のもと、患者の身体機能回復や日常生活動作の改善を目的に、治療や訓練を行っています。

1940年に制定された「理学療法士及び作業療法士法」とともに誕生した両職種は、見た目は似ているものの、実は大きな違いがあります。

本記事では、作業療法士と理学療法士、双方の違いについて分かりやすく解説します。

作業療法士・理学療法士の概要

まずは最初に、作業療法士・理学療法士それぞれの概要についてみていきましょう。

作業療法士とは

作業療法士は、日常生活を快適に送るための支援を提供するリハビリテーション専門職です。

理学療法士とは異なり、食事や入浴、歯磨きなどの複雑な動作のリハビリテーションに特化しています。

さらに、作業療法士は身体機能の回復だけでなく、精神的な治療にも取り組みます。

作業活動を通して、精神障がいのある人の社会適応力の向上や心のケアを目指します。

つまり、作業療法士は、日常生活の支援から精神的ケアまで、幅広い分野でリハビリテーションを行う専門家なのです。

理学療法士とは

理学療法士(PT)は、身体機能の回復を支援する専門家です。

法律で定められた通り、彼らは障がいや疾患のある人々に対し、基本的な動作能力の回復を目的としたリハビリテーションを行います。

具体的には、立つ、歩く、座るといった日常生活動作の改善に取り組みます。

理学療法士は、治療体操、電気刺激、マッサージ、温熱療法などの物理的手段を用いて、患者の身体機能の向上を図ります。

理学療法士と作業療法士の相違点一覧

理学療法士と作業療法士の相違点は次のとおりです。

理学療法士 作業療法士
治療の対象者 身体に障害のある人 身体または精神に障害がある人
治療の目的 日常生活の動作の改善・QOLの向上
仕事内容 基本的動作の回復 応用的動作、社会適応能力の回復
治療の方法 動作練習
理学療法(運動・物理刺激) 作業療法
働く場所 病院・介護保険施設・小児施設・訪問リハビリテーション・一般企業など
スポーツ現場 精神病院・職業センター
国家試験科目 解剖学・一般医学などの基礎分野(共通科目)
運動療法、物理療法など理学療法の専門分野 発達障がい治療、精神障害治療などの作業療法の専門分野
国家試験の合格率 85%前後 80%前後

以上が、作業療法士・理学療法士の概要でした。

上記で、表にしてそれぞれの相違点を表しましたが、

作業療法士・理学療法士の違いにさらに注目してご説明していきます。

作業療法士と理学療法士の違い

作業療法士と理学療法士の違いは以下の通りです。

  • ・仕事内容
  • ・治療方法
  • ・治療領域
  • ・活躍の場所
  • ・資格
  • ・就職状況

それぞれ詳しくみていきましょう。

①仕事内容

理学療法士と作業療法士の役割は、リハビリ分野における動作の違いに集約されます。

前者は立ち、歩くなど、基本的な日常生活動作の回復を担当します。

一方、後者は食事や文字の書写、趣味活動など、より細かい手指の動作の練習に注力します。

つまり、理学療法士が全身の大きな運動機能の改善に取り組むのに対し、作業療法士は応用的で精緻な日常動作の回復を支援するのが主な業務となります。

②治療方法

理学療法士と作業療法士は、人体の動作に対する専門性の違いから、リハビリの方法論も異なります。

理学療法士は、身体機能の回復を主眼に置いたアプローチを行います。

一方、作業療法士は、日常生活動作の自立を目標とした治療アプローチを採用しています。

このように、両者は専門性の違いから、リハビリの方法論に差異が生まれるのが特徴です。

作業療法の治療方法

作業療法士は、患者の状況と目標に合わせて適切な作業を選択し、身体機能や精神状態の回復、そして社会復帰を目指してリハビリテーションを行います。

作業療法の中心は、日常生活動作から家事、書字、手芸・陶芸など幅広い作業活動を通じて、身体面と精神面の両方のリハビリテーションを行うことです。

理学療法の治療方法

理学療法士は、患者の基本的な動作、例えば寝返りや起き上がり、立ち上がりや歩行の練習を行います。

さらに、理学療法に基づいたリハビリテーションを通して、患者の身体機能の回復を目指します。

理学療法には主に2つの方法があります。

一つは運動療法です。

歩行訓練や関節可動域運動などの運動を通じて、患者の筋力アップや関節機能の回復を図ります。

もう一つは物理療法。

症状に合わせて温熱、水、赤外線、電気などの刺激を与えることで、痛みの軽減や筋肉の活性化を目指します。

スポーツ現場で働く理学療法士の場合は、その競技特有の動作、例えば走行や投球の練習も行います。

以上のように、理学療法士は様々な手段を使って、患者の身体機能の回復に取り組んでいます。

③治療領域

理学療法士は身体機能の回復に重点を置き、一方で作業療法士は日常生活動作の改善に主眼を置いています。

両者の専門分野は異なるものの、共通の目的は患者の自立支援にあります。

身体障がい領域

理学療法士と作業療法士は身体障がい領域において密接に連携しています。

前者は体の大きな動作のリハビリを担当し、後者は上肢を中心とした細かな動作や日常生活動作の改善を目的とした治療を行います。

作業療法士の治療アプローチは動作練習が中心ですが、必要に応じて動作を補助する自助具の作成も行います。

一方、理学療法士は身体障がい領域に特化しているのに対し、作業療法士の専門領域は老年期障がい、精神障がい、発達障がいなど幅広い分野に及びます。

老年期障がい領域

時を重ねるにつれ、あるいは認知症の影響によって、高齢者の認知機能や身体機能が低下することがあります。

そのような方々を対象に、日常生活の自立と安定を目指したリハビリテーションが行われます。

精神障がい領域

心の健康に苦しむ人々が、リハビリテーションの対象となります。

手仕事から園芸作業まで、幅広い治療アプローチを取り入れ、将棋やオセロなどのゲームも活用しながら、精神的・心理的状態の改善と社会への適応を目指しています。

統合失調症やうつ病などの難しい課題に取り組み、一人ひとりに寄り添いながら、確実な前進を目指す包括的なプログラムです。

発達障がい領域

発達に特別な支援を必要とする子どもたちは、リハビリテーションの重要な対象です。

運動療法や動作訓練を通して、彼らの運動機能と日常生活スキルの向上を目指します。

さらに、楽しみながら様々な感覚を体験できるよう、「遊び」を活用したアプローチも行っています。

④活躍の場所

理学療法士と作業療法士は、さまざまな分野でリハビリテーションサービスを提供しています。

両者は、患者の回復や機能維持に向けて専門的なアプローチを行っていますが、それぞれの役割や活動領域に違いがあります。

理学療法士と作業療法士が共通して活躍している主な場所は以下の通りです。

  • ・医療機関
    ・高齢者福祉施設
    ・訪問リハビリテーション
    ・小児施設
    ・障がい者福祉施設
    ・行政機関
    ・一般企業

これらの場所における両者の役割や取り組みについて、以下で詳しく見ていきます。

医療機関

医療機関は理学療法士と作業療法士の主要な就職先です。

実際、両者の過半数が病院に勤務し、幅広い年齢層の疾病や外傷に対する治療に携わっています。

特にリハビリテーション病院では、医師や看護師などの多職種とチームを組んで治療にあたっています。

理学療法士は筋力強化や歩行能力の向上を目指す一方、作業療法士は応用動作の獲得を目標とした治療を行っています。

このように、同じ職場でも両者がそれぞれの専門性を発揮しながら連携しています。

高齢者福祉施設

高齢者福祉施設では、理学療法士と作業療法士が重要な役割を担っています。

介護老人保健施設、通称「老健」では、退院後の自宅復帰に向けて、利用者がリハビリテーションを受けながら生活しています。

一方、特別養護老人ホームは、自宅での生活が困難な高齢者が居住する施設です。

これらの施設において、理学療法士や作業療法士は、利用者の健康維持と自立した生活を目指して、治療やリハビリを提供しています。

訪問リハビリテーション

自宅で生活する方の日常に寄り添い、訪問リハビリテーションがその人に合わせたケアを提供しています。

外出が難しい方々に、自宅で専門家が直接リハビリを行うことで、より利用者本位のきめ細やかなサポートが可能になります。

同居家族も含めた総合的なアプローチにより、利用者の生活実態に即したリハビリが展開されています。

このように、訪問リハビリテーションは利用者の生活の場に密着したサービスを実現しているのが特徴です。

小児施設

理学療法士と作業療法士は、小児施設においても重要な役割を果たしています。

小児病院では、赤ちゃんの時期から治療を行うことがあり、理学療法士は児童福祉施設や特別支援学校などで身体機能や動作のリハビリテーションを実施しています。

一方、発達障がい領域を担当する作業療法士は、幼稚園や保育園、放課後等デイサービスや母子通園施設などでも活躍しています。

運動面や知能面での発達を手助けするような治療を行うほか、保護者への助言など、総合的なサポートを提供しています。

このように、理学療法士と作業療法士は小児分野においても、多岐にわたる支援を行っているのが特徴といえます。

障がい者福祉施設

理学療法士は身体障がい者の福祉施設で尽力し、一方で作業療法士は精神障がい領域を担当し、精神保健福祉センターや精神障がい者支活援センターで活躍しています。

両者は障がい者の福祉向上に貢献する重要な役割を担っています。

行政機関

理学療法士と作業療法士は、行政機関や一般企業で多様な役割を果たしています。

行政機関では、高齢者や地域住民に向けて、ケガ予防の講演や運動指導を行ったり、心や健康、障がい福祉サービスに関する相談や手続き・調整を担当しています。

一方、一般企業では、介護や福祉に関わる商品の開発に、専門職としての知識を活かしています。

このように、理学療法士と作業療法士は、医療・福祉分野だけでなく、様々な場所で活躍の場を広げています。

作業療法士の活躍の場所

精神科医療の現場や職業リハビリテーションの分野では、作業療法士が大きな役割を果たしています。

精神科病院やメンタルクリニックでは、手工芸や身体を使った活動を通して、患者の精神状態の改善や社会復帰に貢献しています。

患者との交流を通じて、適応能力の向上に取り組んでいます。

近年、メンタルヘルスの問題を抱える人が増加傾向にあり、今後も作業療法士の需要が高まると期待されています。

また、ハローワークなどの職業センターでは、就職希望者の職業相談や、就労に必要な技能の評価・訓練を行っています。

働く意欲はあるものの、就職先が見つからない人々の円滑な職業復帰を支援する重要な役割を担っています。

このように、作業療法士は精神科医療や職業リハビリテーションの分野で活躍しているほか、地域の健康増進活動や行政機関、学術研究分野など、幅広い領域で活躍しています。

理学療法士の活躍の場所

理学療法士は、スポーツ界での専門家としての地位を確立しつつあります。

彼らは、選手のパフォーマンス向上やケガの予防に重要な役割を果たしています。

プロスポーツチームやアマチュアの実業団、大学、高校といった様々な現場で、理学療法士は選手のコンディション管理やトレーニングプログラムの策定、障害の予防に尽力しています。

また、パラスポーツの分野やフィットネスクラブでも、その専門性を発揮しています。

動作分析の専門家である理学療法士は、スポーツ界において欠かせない存在です。

選手のパフォーマンス向上と健康維持に貢献する彼らの役割は、ますます重要になってきているのです。

理学療法士と作業療法士は、治療の現場に留まらず、多岐にわたる領域で活躍しています。

彼らは、医療の現場はもちろんのこと、地域社会や企業など、様々な場所で貢献を果たしているのです。

⑤資格

国家資格を取得し、医療現場で活躍する理学療法士と作業療法士。

2023年3月時点で理学療法士は136,357人、作業療法士は99,788人が従事しています。

毎年、理学療法士が約10,000人、作業療法士は約5,000人が新たに加わっています。

この資格は生涯有効ですが、特別な事情により取り消される可能性もあるので注意が必要です。

⑥就職状況

理学療法士と作業療法士は国内で通用する専門資格を有しているため、就職や転職の際に大きなメリットを享受できます。

医療機関に6割が勤務し、高齢者福祉施設に2割が従事しています。

一方、理学療法士の一部はスポーツ関連分野で、作業療法士は精神障害や発達障がい領域の職場で活躍しています。

資格取得後は、自身のライフスタイルに合わせて柔軟に働くことが可能となります。

作業療法士と理学療法士の給与の違い

理学療法士と作業療法士は、リハビリテーションの専門家として、その収入水準はほぼ同等です。業界調査では、両者の給与データが一括して報告されることが一般的です。

令和3年度の調査結果によると、理学療法士と作業療法士の平均月収は35万円を超えており、看護師やケアマネジャーに次ぐ高水準にあります。

つまり、リハビリテーション分野における専門職としての地位と報酬は、他の介護職種と比べて相対的に高いと言えるでしょう。

以上が、理学療法士と作業療法士の違いでした。

最後に、作業療法士と理学療法士、どちらを目指すか迷っている方に向けて、両者の違いやポイントをお伝えしたいと思います。

作業療法士と理学療法士、どちらを目指す?

理学療法士と作業療法士の選択に迷っているなら、両者の違いに着目して検討するのがおすすめです。

一見よく似ている両者ですが、リハビリの目的やアプローチ、対象者など細かな違いを理解すれば、自分にふさわしい進路が見えてくるはずです。

例えば、「患者の痛みを和らげたい」「身体の機能や構造に興味がある」という人は、基本動作の回復を支援する理学療法士に向いています。

一方、「生きがいを取り戻したい人をサポートしたい」「遊びを通じて子どもの成長を促したい」という人は、精神障がいや発達障がいの領域を扱う作業療法士が適しているでしょう。

また、オープンキャンパスに参加すれば、実際の授業体験や学内設備の見学ができ、より具体的なイメージが湧きます。

在校生や卒業生、学校の先生から現場の生の声を聞くことも大切です。

理学療法士と作業療法士の選択に迷っているなら、両者の違いに着目して検討しましょう。

作業療法士と理学療法士は、加齢、疾患、外傷などによって身体機能の低下に悩む人々のリハビリテーションを担う専門職です。

両者には多くの共通点がありますが、主な違いは、リハビリの焦点となる動作に関してあります。

理学療法士は、患者の基本的な動作、すなわち座る、立つ、歩くなどの能力の回復を目指し、運動療法を中心とした物理的なアプローチを行います。

一方、作業療法士は、日常生活動作、たとえば階段昇降や着替えなど、より応用的な動作の獲得に重点を置きます。

理学療法では基本的な動作能力を培い、作業療法では日常生活動作の改善に取り組む。

両職種が協力し、患者一人ひとりのニーズに合わせたきめ細やかなリハビリテーションを提供することが、このアプローチの特徴といえます。

作業療法士と理学療法士、その中であなたにとって魅力的な職種はどちらでしょうか?

それぞれの特徴や魅力を考え、あなたの興味や適性に合わせて選んでみてください。