「理学療法士になるには、具体的に何から始めればいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

理学療法士は、医療・介護・スポーツなど幅広い分野で活躍でき、患者さんの生活をより良くする大切な存在です。

しかし、国家資格の取得までには、専門学校や大学での学習、実習を経て国家試験に合格するなど、いくつかのステップを踏む必要があります。

この記事では、理学療法士になるにはどうしたらいいのか、具体的な道のりをわかりやすく解説します。

加えて、学校選びや勉強方法、そして試験合格への対策まで徹底的に解説します。

不安や疑問を抱える方が前向きな一歩を踏み出せるよう、丁寧に寄り添いながらお伝えしていきます。

理学療法士になるには資格を取得しよう

理学療法士になるには、国家試験に合格して理学療法士の国家資格を取得することが必須です。

国家試験を受験するには、指定された理学療法士の養成校で3年以上学び、必要な単位を取得して卒業することが条件となっています。

単位が不足していると進級や卒業が認められないだけでなく、成績が著しく悪い場合には国家試験を受験できないこともあるため、注意が必要です。

さらに、養成校では座学だけでなく、実習にも多くの時間が割かれます。

このため、在学中は計画的に学習を進め、しっかりと取り組む姿勢が求められます。

卒業後は、厚生労働省が実施する国家試験に挑戦し、合格することで理学療法士の資格を取得できます。

資格取得には努力と覚悟が必要ですが、その先には充実したキャリアが待っています。

理学療法士になるため必要なことをお伝えしました。

次に理学療法士になるために通う学校についてご紹介します。

理学療法士になるには学校に通おう

理学療法士になるには、理学療法士養成施設で3年以上学び、卒業することで国家試験の受験資格を得るのが一般的なルートです。

養成施設には、専門学校(3年制・4年制)、大学(4年制)、短期大学(3年制)の3つの選択肢があります。

養成校のカリキュラムでは、以下の4つの分野を中心に学びます。

  • 一般教養科目
  • 専門基礎科目(身体の仕組みや医学の基礎)
  • 専門科目(理学療法士として必要な知識や技術)
  • 臨床実習(現場での実践学習)

授業では、座学だけでなく、実技やグループ課題を通じて実践力を養います。

また、臨床実習ではリハビリテーション病院や福祉施設などの現場に赴き、実際に働いている理学療法士から直接指導を受けることで、理学療法士として必要なスキルを現場で身につけます。

大学を卒業する

日本理学療法士協会によると、全国には理学療法士を養成する学校が261校あり、そのうち4年制大学は106校、3年制短期大学は6校となっています。

4年制大学では、理学療法士として必要な知識と技術を体系的に学ぶことができます。

スポーツリハビリテーション、基礎医学、介護予防、内部障害、運動器、神経系、小児など、幅広い分野について深く学ぶ機会があり、理学療法士としての基礎をしっかり築けます。

また、学内実習や臨床実習がカリキュラムに組み込まれているため、実践的なスキルを磨きながら現場の雰囲気を体感できる点も魅力です。

さらに、近年では研究者の需要も高まっており、大学卒業後に大学院に進学して研究を深めるという選択肢も広がっています。

理学療法士に求められる多岐にわたる知識をじっくりと学び、実践力と理論を兼ね備えたプロフェッショナルを目指したい方には、4年制大学がおすすめです。

短期大学を卒業する

短期大学は全国に6校あり、3年制のため、4年制大学よりも1年早く卒業して理学療法士国家試験の受験資格を取得できます。
また、短期大学は4年制の医療系大学に併設されていることが多く、大学と同じ施設や環境で講義や実習を受けられる点が大きなメリットです。

一方で、3年間という限られた期間で幅広い教養や専門知識を身につける必要があるため、カリキュラムは非常にハードになることがあります。

そのため、じっくりと時間をかけて学びたいという人にとっては、負担を感じる場合もあるかもしれません。

さらに、短期大学から4年制大学の3年次に編入することも可能です。

「もっと専門知識を深めたい」「研究を続けたい」という方には、編入という選択肢も視野に入れることで、将来の可能性を広げられるでしょう。

理学療法士の専門学校を卒業する

理学療法士を目指せる専門学校には3年制と4年制があり、両者の大きな差は取得できる称号にあります。

  • 3年制:専門士
  • 4年制:高度専門士

4年制では、大学卒業と同等以上の学力を有することが認められ、「高度専門士」という称号を取得できます。

この称号は学歴としても評価され、就職時に有利となるほか、大学院への入学資格も得られます。

一方、学びの流れにも違いがあります。

3年制の場合、1年次に教養基礎を学び、2年次で専門科目を履修した後、3年次に臨床実習を行います。

つまり、最初の2年間で座学を修め、最後の1年で実習に取り組む形です。

4年制では、1年次は教養基礎、2年次に専門基礎科目、3年次に専門科目を段階的に学び、4年次から実習に入ります。

学びをより段階的に深めながら、最終年度に実践経験を積む構成になっています。

特別支援学校を卒業するパターンも

高等学校を卒業した視覚障害者を対象に、理学療法科を設置している特別支援学校も存在します。

そこでは、所定の課程を修了することで学士の学位が取得でき、理学療法士国家試験を受験する資格を得ることができます。

高卒認定を取得する

理学療法士を目指して大学・短大・専門学校に進学するには、高校卒業の資格が必要です。

したがって、高校を卒業していない方は、まず高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)に合格し、その資格を取得することが求められます。

高卒認定の合格後は、希望する大学・短大・専門学校へと進学し、理学療法士への道を歩んでいくことが可能になります。

以上のように、理学療法士になるには、理学療法士養成施設で3年以上学び、卒業することで国家試験の受験資格を得るのが一般的です。

次にそんな学校の選び方についてご説明します。

理学療法士になるための学校の選び方

理学療法士になるための学校の選び方をご紹介します。

たくさん選択肢がある中で、自分にあった学校を選んでいきましょう。

3年制か4年制か

理学療法士になるための学校を選ぶ際には、まず3年制と4年制のどちらにするかを検討する必要があります。

3年制は、学費を抑えられ、1年早く現場で働き始められるという利点があります。

しかし、その分カリキュラムが詰まっており、短期間で集中して学ぶ努力が求められます。

一方、4年制は学びの時間に余裕があり、知識や技術を深く身につけやすい点が魅力です。

ただし、学費や生活費の負担が大きくなりやすい点には注意が必要です。

どちらにもメリットとデメリットがありますが、卒業後のキャリアには大きな差はありません。

自分の状況や目標に合わせて、最適な選択肢を選びましょう。

設備の充実度合い

理学療法士の仕事では、物理療法や運動療法など、リハビリテーションに関する実践的な知識が重要です。

そのため、教科書で学ぶだけでなく、実際の体験を通じて学べる環境が整った学校を選ぶことが理想的です。

専用の実習室が完備されていたり、車椅子、義肢(義足・義手)などの補助器具や、各種療法を実施するための設備が充実している学校を選ぶと、より実践的な学びが得られます。

こうした設備の有無は、学校のホームページやパンフレットで確認できますが、オープンキャンパスや入学説明会に実際に足を運んで、自分の目で確かめることをおすすめします。

現在、理学療法士を養成する学校は数多くあります。

複数の学校を訪れ、設備やカリキュラムを比較しながら、自分に最適な学校を見つけることが大切です。

国家試験の合格率

理学療法士の国家試験合格を目指すうえで、養成校の国家試験合格率は非常に気になるポイントです。

多くの学校が卒業生の合格実績を公開しており、それらは学校選びの大切な参考材料となります。

しかし、一部の学校では、合格の可能性が高い生徒だけに国家試験を受験させるケースもあるため、合格率の数値をそのまま信じ込むのは注意が必要です。

そのため、合格率だけでなく、在校生の総人数や合格者数といった具体的なデータを確認し、情報の信ぴょう性を総合的に判断することが大切です。

以上が、理学療法士になるための学校の選び方でした。

次に理学療法士になるために必要な国家試験についてお話していきます。

理学療法士になるために必要な国家試験

理学療法士になるために必要な国家試験についてお話していきます。

受験資格

理学療法士国家試験を受験するには、以下の3つのいずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 文部科学大臣または都道府県知事が指定した理学療法士養成校で3年以上学び、卒業していること。
  2. 海外の理学療法士養成校または養成施設を卒業、もしくは理学療法士免許を取得し、厚生労働大臣によってその知識と技能が認定されていること。
  3. 昭和40年8月28日時点で、文部大臣または厚生大臣指定の学校や施設で修行中であり、法律の施行後に卒業していること。

現在、理学療法士を目指す場合、最も一般的な受験資格取得の方法は、①のルートで指定の養成校に進学し、卒業することです。

試験概要

理学療法士国家試験は、筆記形式で実施され、「一般問題」(7科目+理学療法)と「実地問題」(4科目+理学療法)に区分されています。

一般問題には、解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)、および理学療法が出題されます。

一方、実地問題には、運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、および理学療法が含まれます。

試験時間は午前と午後に分かれており、それぞれ2時間40分ずつ、合計5時間20分で構成されています。

受験者数・合格率

以下に、理学療法士国家試験の直近5年間(第52回~第56回)の出願者数・受験者数・合格者数・合格率を示します。

回次 出願者数 受験者数 合格者数 合格率
第52回 14,379人 13,719人 12,388人 90.3%
第53回 12,691人 12,148人 9,885人 81.4%
第54回 13,253人 12,605人 10,809人 85.8%
第55回 12,831人 12,283人 10,608人 86.4%
第56回 12,503人 11,946人 9,434人 79.0%

理学療法士国家試験では、一般問題は1問1点、実地問題は1問3点で配点されており、合格するには総得点および実地問題得点の両方で定められた基準を満たさなければなりません。

過去5年の傾向としては、総合得点が全体の60%以上、かつ実地問題で35%以上の正答率を確保することが、概ね合格ラインの目安となっています。

合格発表の確認

理学療法士の国家試験の合格発表は、厚生労働省のホームページ内にある「資格・試験情報」ページで確認することができます。

例えば、2021年2月21日・22日に実施された理学療法士国家試験では、試験から約1ヶ月後の3月23日14時に合格発表が行われました。

登録・更新手続き

理学療法士として正式に業務を行うには、免許の登録申請が必要です。

国家試験に合格した後は、厚生労働省指定の免許申請書、本人確認用の戸籍抄本、健康診断書などの必要書類を揃え、住所地の保健所に提出してください。

この手続きを完了しなければ、厚生労働省が管理する国家資格者名簿に登録されず、理学療法士としての活動が認められません。

未登録のまま業務を行った場合、行政処分の対象となる可能性があるため、十分に注意しましょう。

なお、理学療法士の資格は更新制ではないため、一度登録すれば、基本的にその後も資格を維持し続けることができます。

安心して長く理学療法士として活躍できるのが、この資格の大きな特徴です。

以上が、理学療法士になるために必要な国家試験についてのお話でした。

次に理学療法士になるために知っておきたいことを4つご紹介します。

理学療法士になるために知っておきたい4つのこと

ここからは理学療法士になるために知っておきたいことを4つご紹介します。

理学療法士に向いている人

理学療法士は、リハビリなどを通じて患者さんと長時間直接関わる仕事です。

また、医師や看護師などの他職種と情報を共有しながら、1日に何度も打ち合わせを行う機会があります。

そのため、机に向かって1人で作業するよりも、多くの人と接しながらコミュニケーションを取りつつ仕事を進めることが得意な人に向いている職業といえます。

さらに、リハビリの効果を最大化するためには、単にマニュアルに従うだけではなく、「患者さんの状態を少しでも良くしたい」という熱意を持って取り組む姿勢が求められます。

人との関わりを楽しみ、人の役に立ちたいという気持ちが強い人ほど、理学療法士としてその才能を発揮し、充実したキャリアを築くことができるでしょう。

キャリアプラン・キャリアパス

理学療法士は、資格を取得しただけではすぐに仕事をスムーズにこなせるわけではありません。

実際の現場では、先輩や上司から指導を受けながら、実務スキルを少しずつ身につけていく必要があります。

物理療法や運動療法など、覚えるべき技術は多岐にわたり、多様な症状や患者さんに対応する力が求められるため、一人前とされるまでには約10年かかるとも言われています。

基本的なスキルを習得した後は、キャリアの選択肢も広がります。

同じ職場でキャリアアップを目指す人もいれば、より良い待遇を求めて転職する人もいます。

また、スポーツトレーナーとして活動するために専門知識を深める人や、作業療法士の資格を追加で取得してリハビリの幅を広げる人も少なくありません。

さらに、近年では独立してデイサービスセンターや訪問リハビリテーション事業所を開設し、介護分野で経営者として活躍する理学療法士も増加しています。

それぞれのキャリアパスが、自分の目指す未来に応じた多様な可能性を示しています。

理学療法士を目指せる年齢

理学療法士の養成校には、他大学の卒業生や社会人経験者など、さまざまな背景や年齢層の学生が集まっています。

求人情報を見ても、資格さえ取得していれば、未経験者を積極的に採用する施設が多く、年齢制限を設けていないケースも珍しくありません。

これは、理学療法士の離職率が高く、人材の入れ替わりが激しいことが背景にある一方で、常に求人需要が高いため、30代や40代からでも十分に理学療法士を目指せる環境が整っているといえるでしょう。

さらに、多くの学校で夜間講座が開講されているため、日中の仕事を続けつつ、段階的に資格取得を進めることが可能です。

理学療法士は女性でも活躍できる

近年の理学療法士の男女比はおおよそ6:4で、全国で約4万人の女性理学療法士が活躍しています。

リハビリでは患者さんの身体に直接触れることが多いため、女性患者さんの中には女性理学療法士を希望する方も少なくありません。

そのため、病院やクリニックでも女性理学療法士の採用が積極的に行われています。

一方で、リハビリの現場では力を必要とする場面も多く、身体の大きな患者さんを介助するケーースもあります。

そのため、女性理学療法士には筋力や体力、さらには持久力が求められることもあるでしょう。

以上が、理学療法士になるために知っておきたいお話でした。

それでは最後に、理学療法士になった後のことについてお話していきます。

理学療法士になった後のこと

理学療法士になるために続けてきた努力が実を結び、ついに理学療法士として働き始める。

そんなあなたに向けて理学療法士になった後のことについて色々とお話していきます。

理学療法士の活躍の場所

理学療法士は、およそ6割が病院やクリニックなどの医療機関で勤務し、医療サービスを提供しています。

また、約2割は介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護保険施設で働いています。

そのほか、市・区役所などの行政機関、特別支援学級、障害福祉センターといった福祉関連施設、養成校での講師業務、さらには企業で福祉用具の研究・開発に携わるなど、多岐にわたる領域で活躍が可能です。

さらに、理学療法士は運動機能を幅広くサポートする専門家であるため、アスリート向けにケガ予防のトレーニングを考案するなど、プロスポーツ団体での活動も行われています。

ここからは、理学療法士が主に活躍する領域として挙げられる医療施設、介護保険施設、そして小児施設について、もう少し踏み込んでご紹介していきます。

医療施設

理学療法士が最も多く活躍する場所の一つが、病院や診療所などの医療施設です。

そこでは、こどもから高齢者まで幅広い年齢層を対象に、さまざまな疾患やけがによって低下した筋力や歩行能力などの身体機能を改善するための治療を行います。

施設ごとに扱う分野は異なりますが、共通して理学療法士は患者が自分らしい生活を取り戻せるよう、リハビリプログラムを組み立て、機能回復をサポートしています。

介護保険施設

理学療法士は、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなど、介護保険に関連する施設でも活躍しています。

「老健」として知られる介護老人保健施設では、病院を退院したばかりで自宅生活に戻るのが不安な方が、リハビリをしながら日常生活を送ります。

一方、特別養護老人ホームは、自宅での生活が困難な高齢者が入居し、長期的なケアが行われる場です。

これらの介護施設では、利用者の健康状態や生活環境に合わせたリハビリを提供し、可能な限り自立した生活を送れるよう支援しています。

小児施設

一部の理学療法士は、児童向けの病院や支援センター、特別支援学校などで、小児分野の支援に携わっています。

赤ちゃんの段階から治療やトレーニングを始め、運動機能や認知機能の発達を促すとともに、保護者に対して育児や支援方法のアドバイスを行うことも重要な役割です。

このように、小児施設で働く理学療法士は、こどもたちとその家族を総合的にサポートし、健やかな成長と発達を支えています。

就職先の選び方

様々な活躍の場がある理学療法士。

自分にあった就職先を選ぶにはどんなポイントを押さえればいいのでしょうか。

どんなリハビリを行いたいか

リハビリと一口に言っても、その内容や目的は多岐にわたります。

医療施設と介護施設ではリハビリのアプローチが異なり、さらに同じ医療施設内でも、急性期病院と回復期病院では異なる手法が用いられます。

また、スポーツ選手や部活動に励む中高生を対象にした「スポーツリハビリ」という分野では、競技への早期復帰を目指した特化型のリハビリが行われることもあります。

そのため、就職先を選ぶ際には、まず自分が理学療法士としてどのような業務に取り組みたいのかを明確にし、それぞれの施設の特徴を比較検討することが大切です。

職場の雰囲気

理学療法士の職場は多岐にわたり、それぞれの雰囲気も大きく異なります。

理想的には、スタッフ同士が良好な関係を築き、患者や施設利用者が前向きにリハビリに取り組む環境が望まれますが、現実には意見の対立や派閥が存在する職場も少なくありません。

リハビリはチームで取り組む作業であり、人間関係は患者に提供するケアの質や、自身のモチベーションにも直結します。

そのため、就職先を選ぶ際には、可能な限りさまざまな施設を訪問し、実際の職場の雰囲気を感じ取ることをおすすめします。

身につけたいスキル

理学療法士は、生涯を通じて知識やスキルを磨き続けられる職業です。

そのため、スキルアップのしやすさを基準に就職先を選ぶ方法も有効です。

例えば、回復期リハビリテーション病院では、作業療法士との連携を通じて作業療法のスキルを学べる機会があります。

言語聴覚士が多く働く職場では、発話や摂食に関するリハビリの知識を深められるでしょう。

また、介護施設での勤務を通じて、福祉に関する知識や施設運営について学ぶことも可能です。

理学療法士の数が増加している現状では、安定したキャリアを築くために、理学療法の専門スキルに加え、他分野のスキルも身につけることが重要です。

このような「プラスアルファ」のスキルを習得することで、将来のキャリアの幅を広げることができます。

理学療法士の雇用形態

理学療法士の雇用形態は、大きく「常勤」と「非常勤」に分かれます。

常勤は、病院や介護施設などで正規職員としてフルタイム勤務する形態で、一般企業でいう「正社員」に相当します。

一方、非常勤は、アルバイトやパートのように勤務日数や時間を限定して働く形が中心となります。

理学療法士は専門性が高く、資格取得までに多くの時間と費用が必要なことから、その大半は常勤として勤務しています。

しかし、わずかではありますが非常勤で働く理学療法士も存在し、病院においては非常勤者の割合がおおむね2%程度といわれています。

非常勤で働く理由はさまざまで、結婚・出産・育児・介護など家庭生活との両立を目的に、アルバイト・パートの雇用形態を選ぶ方が目立ちます。

また、以前は常勤で働いていた人が、家庭の事情などで一時離職し、子育てなどが落ち着いたタイミングでブランクを埋めつつ現場に戻るため、まずは非常勤で再スタートするケースもみられます。

以下では、常勤・非常勤それぞれの特徴や待遇面の違いを比較し、理学療法士としての働き方を考える上での参考情報を提供します。

常勤の理学療法士

常勤の理学療法士は、施設内でリハビリの中心的な役割を担い、患者さんの治療やリハビリ計画の策定を行います。

担当患者を持ちながら、数年の経験を積むと役職者としてチーム全体を統括する立場になることが一般的です。

このように責任のあるポジションではありますが、医師や看護師のような夜勤が必要になることはなく、施設によって異なるものの長時間の残業が求められるケースは少ない傾向にあります。

また、非常勤と比べると自由度は低いものの、勤務時間や勤務体系が比較的安定している点が常勤の特徴といえるでしょう。

厚生労働省の統計によると、理学療法士の平均年収は約400万円前後と、日本のフルタイム労働者の平均よりやや低い水準です。

国家資格取得にかかる時間や費用を考えると見合わないと感じることもあるかもしれませんが、理学療法士の平均年齢が比較的若いことも、この数値に影響していると考えられます。

長年同じ施設で働き続けると、「理学療法士課長」や「リハビリ部長」「施設長」などの役職に昇進し、年収が平均を上回ることも十分可能です。

ただし、役職に就くことで新人教育や他施設との調整など、現場の仕事以外の業務が増える場合があります。

そのため、現場での仕事に集中したいという理由から昇進を辞退する選択をする理学療法士もいるようです。

非常勤の理学療法士

非常勤で働く最大のメリットは、自分のライフスタイルに合わせて時間を柔軟に使えることです。

勤務時間を短くして家庭との両立を図ることもできますし、正規雇用よりスケジュールの融通が利く分、長時間働いて収入を増やすことも可能です。

さらに、理学療法士は活躍できる領域が幅広いため、経験を積んだり人脈を広げたりする目的で、複数の職場を掛け持つケースも少なくありません。

まずは非正規雇用で現場の雰囲気をつかんでおけば、後に正規職員として職場を選ぶ際に役立ちます。

ただし、アルバイトやパートといった非常勤は、施設側の都合で契約が打ち切られるリスクもあり、常勤と比べて雇用の安定性が低い点には注意が必要です。

理学療法士は国家資格を要する専門職であるため、一般的なアルバイトやパートよりも時給は高めに設定されています。

病院やクリニック、老人ホームでの相場は時給1,800円~2,300円ほどで、スキルや経験によってさらに高い時給を得ることも可能です。

近年は需要が拡大中の訪問リハビリ事業所などでは、1件(40分~60分)あたり3,000円~5,000円と、病院勤務よりも高単価の現場も見られます。

もし週6日、一日7件の訪問をこなせば、月収50万~80万円ほどになり、常勤より高収入を狙うことも可能です。

日曜日も働くことで、年収1,000万円に届く計算も立てられますが、これだけの稼働は相当な体力を要する点を念頭に置いておきましょう。

独立開業する理学療法士

リハビリは医師の指示に基づく必要があるため、理学療法士が独立して保険請求を行うことはできません。

しかし、個人として起業すること自体は可能で、近年は理学療法士がデイサービスセンターや訪問介護ステーションなどを立ち上げるケースが増加しています。

こうした施設を運営する理学療法士は、通常の介護サービスに加え、近隣の病院やクリニックと連携して物理療法や運動療法などのリハビリテーションサービスを提供することも可能です。

また、非常勤勤務を組み合わせて資金を貯め、念願のサービスを実現できる施設を開業する理学療法士も存在します。

ただし、独立開業には資金確保はもちろん、施設運営に必要な人材・設備の管理、利用者を集めるための営業活動、さらに経理・税務など、多岐にわたる業務を自ら行う覚悟が求められます。

失敗のリスクを抑えるためにも、綿密なビジネスプランを練り、計画的な起業を目指すことが重要です。

志望動機と面接

理学療法士の業務がリハビリに特化しているため、志望動機が似た内容になりやすい傾向があります。

しかし、近年では資格保有者が増加し、競争が激化しているため、内定を勝ち取るには他の就職希望者との差別化が重要です。

志望動機を考える際は、学生時代の経験やアルバイト、臨床実習での体験をもとに、自分なりの考えをまとめることが大切です。

完璧でなくても、自分の個性や価値観が伝わる内容を心がけましょう。

さらに、面接では理学療法士の多岐にわたる就職先について、「なぜその業界や施設を選んだのか」という質問を受けることが多いため、具体的な理由を準備する必要があります。

事前に各施設の特徴や運営方針をしっかり調べ、「ここで働きたい」という強い意志が伝わる回答を用意しておくことで、説得力を高めることができます。

理学療法士の1日

ある理学療法士の1日のスケジュールを順を追ってご紹介します。

朝、出勤後に最初に行うのは、全体ミーティングです。

ここでは、当日の連絡事項や担当患者さんの状況を共有し、各職種(医師、看護師、ほかのリハビリスタッフなど)との連携を確認します。

理学療法士にとって、この朝のミーティングはチーム医療を円滑に進めるために欠かせない時間となります。

全体的な情報共有に加え、個別に必要な指示や細かな要望を確認するのも、このタイミングです。

ミーティングが終わると、使用する道具や器具を準備します。

理学療法では、歩行訓練に用いる器具や、患者さんの症状に合わせた特殊な用具など、様々な道具が必要となります。

事前に整えておくことで、その後のリハビリテーションがスムーズに進行します。

準備が整ったら、患者さんごとの理学療法を開始します。

たとえば、リハビリ室での歩行訓練や、入院患者さんのベッドサイドに赴いて上半身の軽い運動を行うなど、患者さんの状況に応じて多様なプログラムを実施します。

その後、医師と一緒に病棟を回り、患者さんの回復状況を直接確認しながら、必要に応じてリハビリ計画を見直していきます。

夕方になると、その日の業務を振り返り、リハビリ訓練中や回診で得た情報をカルテに入力します。

その日の成果や課題を整理し、翌日のスケジュールを確認したら、業務はひと段落です。

このような流れを経て、理学療法士は1日の仕事を終え、退勤します。

以上が、理学療法士になった後のお話でした。

理学療法士になるためには、資格取得までの道のりをしっかりと理解し、計画的に学びを進めることが不可欠です。

専門学校や大学で基礎知識や技術を身につけ、実習で実践力を養ったうえで国家試験に合格すれば、理学療法士として患者さんの生活を支えることができます。

本記事で紹介したポイントを参考に、自分に合った学習環境や試験対策を見極め、着実にステップを踏んでください。

努力を重ねた先には、理学療法士として成長し、やりがいあふれるキャリアが広がっています。

あなたの未来を応援しています!

以下の記事では、理学療法士の就職先についてさらに詳しく解説しています。

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