「理学療法士ってやりがいはあるけど、本当に大変な仕事なの?」と感じている方は多いのではないでしょうか。

理学療法士はつらいこともありますが、やりがいもたくさんある職業です。

患者さんのリハビリをサポートする理学療法士は、身体的・精神的な負担が伴う仕事です。

忙しい毎日の中で、自分の体力やメンタルが追いつかなくなることもあります。

また、給与面やキャリアの将来性についての不安を感じることもあるでしょう。

しかし、大変なことが多い分、患者さんの「ありがとう」という一言や目に見える回復が、大きなやりがいにつながるのも事実です。

本記事では、理学療法士の仕事で直面しがちなつらいこと・課題を具体的に紹介し、それに対処するためのヒントや改善策をお伝えします。

「つらいけど続けたい」と思っている方が少しでも前向きになれるよう、しっかりサポートしますので、ぜひ最後までお読みください。

理学療法士にとってつらいこと7選

理学療法士は、患者さんの回復をサポートするやりがいのある仕事ですが、その一方で独特のつらさや悩みを抱えることも少なくありません。

ここでは、理学療法士として働く中でつらい点を7つに分けて詳しく解説します。

給料が安い

理学療法士が「辛い・大変」と言われる理由の一つに、給料の低さがあります。

昇給や昇進の機会が少ない一方で、業務量は年々増えていく傾向にあり、その結果、多くの理学療法士がモチベーションを維持するのに苦労している現状が見受けられます。

具体的な平均年収データを見てみましょう。

求人ボックスによると、2024年3月時点での理学療法士の平均年収は367万円です。

一方、2023年9月に国税庁が発表した「令和4年分 民間給与実態調査統計」によれば、日本人の平均年収は約458万円で、理学療法士の平均年収は約90万円も下回っています。

人事の現場でも、「国家試験に合格して理学療法士になったのに、これほど給料が低いとは思わなかった」という声をリハビリ職からよく耳にします。

そのため、「高い給料を得るために努力を惜しまない」という方には、理学療法士以外の職種のほうが適している場合もあるかもしれません。

仕事量が多い

「理学療法士は辛い・大変」と言われる理由の2つ目は、リハビリ以外の業務量が多いことにあります。

理学療法士の仕事は、患者さんのリハビリだけではなく、以下のような業務も含まれます。

  • カルテの記入
  • 形式上は任意だが実質的に強制参加となる勉強会
  • 退院時の指導書作成
  • 新人理学療法士の指導
  • 病院の委員会への参加
  • カンファレンスへの出席
  • サービス残業で行う学会発表用データの作成
  • 絶え間なく現れる実習生の指導

これらの業務をこなすため、理学療法士はリハビリの合間を縫って作業することが求められます。

一般的な会社員であれば、55分作業して5分休憩する、といった具合に、自分でスケジュールを調整することも可能です。

ですが、理学療法士の場合はリハビリの予定が分単位で決められており、隙間時間を作るのは非常に難しい状況です。

その結果、常にタイトなスケジュールに追われ、休む暇もなく業務をこなさなければならない現状が「激務」と捉えられている要因の一つとなっています。

成果が表れるまで時間がかかる

リハビリは、始めてすぐに目に見える成果が得られることは少なく、多くの場合、患者さんが身体機能を取り戻すまでに長い時間が必要です。

数ヶ月にわたる取り組みの中で、何度も訓練プログラムを見直し、試行錯誤を繰り返しながら、ようやく少し改善が見られる、といったケースも珍しくありません。

同じリハビリメニューを繰り返す中で、「この方法で本当に効果があるのだろうか」と不安に感じることもあるでしょう。

さらに、最善を尽くしたとしても、患者さんの状態によっては、それ以上の改善が難しい場合もあります。

結果が出るまでに時間がかかり、努力が必ずしも成功につながるとは限らない点は、理学療法士にとって大きな試練であり、時に最も辛く感じる部分です。

サービス残業が多い

「理学療法士は辛い・大変」といわれる理由の一つに、サービス残業の多さが挙げられます。

多忙な業務が、結果的にサービス残業の増加につながっています。

定時を過ぎてからタイムカードを切り、カルテの記入や勉強会を始めるといった状況が、今でも多くの職場で「当たり前」とされています。

このような状況の背景には、根性論や昔ながらの働き方が根強く残っていることが挙げられます。

さらに、休日の学会参加や症例発表の準備などで、プライベートな時間も削られることが多く、こうした働き方が働き手に大きな負担を与えています。

最近になってようやく労働環境改善の動きが見られるものの、まだ解決には至っていないのが現状です。

このような環境では、特に若い理学療法士がストレスを抱え、早期に退職してしまうケースも少なくありません。

精神的に辛さを感じる場合、職場環境が自分に合っていない可能性も考えられます。

一度、自分の働き方や職場を見直してみることが必要かもしれません。

 プライベートが犠牲になる

「理学療法士は辛い・大変」と言われる理由の一つに、プライベートが犠牲になりがちな点が挙げられます。

理学療法士の仕事は業務量が多く、サービス残業が発生することが少なくありません。

それでも終わらない場合、症例発表の準備や研究資料の作成を自宅で行う必要が出てきます。

さらに、休日でさえ学会への参加が義務付けられるケースがあり、実質的に休息の時間が確保できないこともあります。

低い給料、過重な業務量、そして奪われるプライベート――

こうした状況にストレスを感じるのも当然でしょう。

患者さんとのコミュニケーションが大変

理学療法士が『辛い・大変』と感じる理由の一つに、患者さんとのコミュニケーションの難しさがあります。

例えば、3単位(60分間)のリハビリ中には、患者さんと会話をしながら、ご機嫌を取りつつ治療を進める必要があります。

理学療法士は、患者さんを相手にするサービス業でもあるため、気を遣う場面が多く、これが精神的な負担となることもあります。

リハビリそのものが辛いと感じるという話はあまり聞きませんが、患者さんとのやり取りに苦労することは少なくありません。

学生の方には想像しにくいかもしれませんが、仲の良い友人と話すのと、初対面の方と会話を続けるのでは全く違いますよね。

それと同じように、患者さんの性格や話題に合わせて接するのは、簡単ではありません。

特に、患者さんが自分と話が合う方ばかりではないため、一人ひとりに合わせて20~60分間、触れ合いながら過ごすのは、慣れていないと大変に感じるでしょう。

人間関係が複雑

「理学療法士は辛い・大変」と言われる理由の一つに、人間関係の複雑さが挙げられます。

リハビリ職は、上下関係が厳しい職場が多く、上司との折り合いがつかずに退職を選ぶ人も少なくありません。

特に、上司の言うことに絶対服従しなければならないという風潮が根強い職場では、理不尽な指導や指摘に苦しむ場面が見られることもあります。

例えば、ある新人スタッフが50代の同僚から「なぜ勉強会に参加しないのか。周りはみんな出ているのに」と強い口調で叱責されていたケースがあります。

この勉強会は任意であり、法人が「予定がある場合は優先してよい」としているにも関わらず、個人の価値観や昭和的な働き方を押し付けられる状況が発生していました。

現代では、怒鳴る行為はパワハラやモラハラと見なされるケースが多いですが、リハビリ職の現場ではこうしたハラスメントが未だに残っていることも事実です。

これが職場のストレス要因の一つになっていると言えます。

以上が、理学療法士にとってつらいこと7選でした。

次に、理学療法士の方がよく抱えがちな悩みについてみていきましょう。

理学療法士にとっての悩み

理学療法は、体系化された理論や方法論に基づく確立された学問です。

しかし、具体的な治療方法や訓練の細部については、現場での対応に委ねられることが多いのが現状です。

患者さんごとに臨機応変に治療を提供できるのは利点ですが、明確な正解がない分、理学療法士間やリハビリを指示する医師との意見の相違が発生することもあります。

また、患者さん本人やその家族の希望と異なる治療方針が提案される場合には、医師と患者さん、または患者さんと家族の間で板挟みになることも少なくありません。

さらに、病院によっては、異なる治療理論を支持する派閥のようなものが存在し、それが人間関係の対立や治療方針を巡る葛藤を生む要因となることがあります。

そのため、学校で学んだ治療法と現場で指示される方法が異なる場合でも、柔軟に対応し、不要な衝突を避ける姿勢が求められるかもしれません。

以上が、理学療法士の方がよく抱えがちな悩みでした。

次に、「仕事が辛い…」そんなときはどうすればいいのかみていきましょう。

仕事がつらい理学療法士の皆さんへ

理学療法士として働く中で、つらいと感じたり、日々の仕事に疲れを感じることは珍しくありません。

患者さんとの向き合い方、職場環境、収入面での悩みなど、さまざまな要因が仕事へのモチベーションを下げてしまうことがあります。

しかし、このような状況に陥っても、自分の働き方や考え方を見直すことで、つらさを軽減し、やりがいを再発見することが可能です。

①やめたい理由と解決する条件を明確にする

自分が「つらい」と感じる理由と、その解決に必要な条件を具体的に整理しましょう。

理由と条件を整理する意義

つらいときほど、自分を冷静に見つめるのが難しくなりがちです。

しかし、このステップを踏むことで、現状を打開するための方向性が見えてきます。

つらい理由 解決する条件
技術向上に対するモチベーションが持てない 技術研鑽を求められない環境で働きたい
身体的に移乗介助が負担になっている 移乗介助が不要な職場で働きたい
長時間労働でプライベートの時間が確保できない プライベートの時間を大切にできる職場で働きたい

このように具体的に挙げていくことで、自分が進むべき道が明確になります。

それが、理学療法士を辞めて新たな職種に挑戦するべきなのか、同じ職種の中で条件の合う職場に転職するべきなのかを判断する材料になるでしょう。

次のステップへ進むために

辛い理由を解決する条件の多くは、別の職場で理学療法士として働くことでクリアできる場合も少なくありません。

現状を見直し、どの方向に進むべきかをじっくり考える時間を取りましょう。それが、自分自身を見つめ直す重要な第一歩となります。

②自分の強みを明確にする

次に、自分自身の「強み」を明確にしていきましょう。

USJの再建で知られる森岡毅氏も、「キャリアを切り開くには、自分の強みを見つけて磨くことが大切」と提言しています。

現在の厳しい状況を乗り越え、「挑戦してよかった」と思える未来を手にするためには、自分の強みを見つめ直し、それを活かすことが鍵となります。

自分の強みを活かせる場所を探す

①と②の手順をしっかり踏むことで、「自分の強みを活かせる場所を探す」段階に進む準備が整います!

やめたい理由が曖昧だったり、自分の強みが明確でないまま転職を決めると、失敗するリスクが高くなります。

まずは、辞めたい理由を解決し、自分の強みを活かせる場所がどこなのかをはっきりさせることが重要です。

その上で、自分にとってベストな場所を探しましょう。

その結果、今の職場で頑張り続けるのが正解だと気づく人もいれば、理学療法士として新しい職場に挑戦するのが適している人、あるいは全く別の道を選ぶのが正しい人もいるでしょう。

たとえ「やめたい」というネガティブな感情から始まったとしても、自分を見つめ直すことはキャリアアップのチャンスです。

この機会を逃さず、自分の強みを活かして新たな一歩を踏み出しましょう!

一番大切なのは自分の身体

ここまで前向きな解決策についてお話ししてきましたが、「そんな余裕すらないくらい辛い」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

例えば、「夜眠れない」「涙が止まらない」「動悸が激しい」といった症状がある場合、前向きに考えること自体が難しい状態かもしれません。

そんなときは、まず「逃げる」ことや「休む」ことを最優先に考えてください。

一番大切なのは、あなた自身の心と体の健康を守ることです。

そのことをどうか忘れないでください。

以上が、理学療法士としてつらいと感じた時にしてほしいことについてのお話でした。

次に、理学療法士の魅力を再確認していきましょう。

悪いところだけじゃない!理学療法士の魅力

「生活できない」「給料が低い」などのネガティブなお話がこれまで出てきました。

しかし、理学療法士には他の職種にはない魅力ややりがいがたくさんあります。

ここでは、理学療法士という仕事のポジティブな魅力に焦点を当て、その魅力を解説します。

人の役に立つ

理学療法士の最大の魅力は、患者さんの生活の質を向上させる支援ができることです。

リハビリを通じて患者さんの身体機能を改善し、再び自立した生活を送る手助けができるのは大きなやりがいです。

患者さんやその家族から感謝の言葉をもらう瞬間は、理学療法士にとって仕事の価値を再認識する機会となります。

理学療法士の仕事は、単なる医療行為にとどまらず、人々の人生にポジティブな影響を与える使命感に満ちた職業です。

良い同僚が多い

理学療法士は、同じ志を持つ仲間と働ける環境も魅力の一つです。

多くの理学療法士は、患者さんを第一に考える思いやりや協力精神を持っています。

そのため、良い同僚が多いことが多く、仕事の悩みや課題を相談しやすい環境が整っています。

特に、チーム医療の現場では他の医療従事者との連携が求められますが、互いに支え合いながら成長できる場でもあります。

同僚と切磋琢磨しながら働けるのは、大きな魅力です。

国家資格である

理学療法士は国家資格であり、その信頼性と専門性の高さが社会に認められています。

一度資格を取得すれば、そのスキルは全国どこでも通用します。

これにより、転職やキャリアアップを目指しやすい環境が整っています。

また、国家資格であるため、医療・福祉分野での需要が安定しているのもポイントです。

今後も高齢化社会が進む中で、理学療法士の必要性はさらに高まると予測されます。

ここまで紹介したように、理学療法士には「人の役に立てる」「良い同僚と働ける」「国家資格ならではの安定性がある」といった多くの魅力があります。

理学療法士の魅力を理解しながらキャリアを考えることで、さらに前向きな未来を描けるでしょう。

最後に理学療法士に向いている人の特徴をご紹介します。

理学療法士に向いている人の特徴

理学療法士に向いている人の特徴を、以下の3つにまとめました。

「理学療法士は大変そう…」「目指していたけど不安になってきた」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、理学療法士として適性がある人も確実に存在します。

人と関わり、人を助けることが好きな人

理学療法士は患者さんと直接的に関わる仕事です。

一人ひとりの状態に合わせたリハビリ計画を立てるだけでなく、励ましやサポートを通じて患者さんの心のケアも担います。

そのため、人と接するのが好きで、他人を助けることに喜びを感じられる人に向いています。

例えば、リハビリを通じて患者さんが少しずつ歩けるようになる姿を見ると、大きな達成感が得られるでしょう。

このような「誰かのために働きたい」という気持ちが強い人は、理学療法士として充実したキャリアを築くことができます。

他者の感情に敏感で、思いやりがある人

理学療法士は、患者さんの身体的なサポートだけでなく、精神的な支えとなる役割も果たします。

患者さんが感じる不安や苦しみを理解し、寄り添う姿勢が大切です。

そのため、他者の感情に敏感で、思いやりを持って接することができる人が向いています。

患者さんが感じる小さな変化や希望を共に喜び、困難な状況でも励まし続けることが求められる場面もあります。

寄り添う力がある人は、患者さんだけでなく、その家族からも信頼される存在となるでしょう。

安定を求める人

理学療法士は医療業界に属しており、景気の影響を受けにくい安定した職業です。

医療分野の需要は常に高く、高齢化社会が進む中で理学療法士の重要性はますます増しています。

そのため、安定した職を求める人にとって理学療法士は非常に魅力的な選択肢です。

また、病院や介護施設だけでなく、訪問リハビリやスポーツ分野など、働く場所やキャリアの選択肢が広がっていることもポイントです。

安定しながらも、自分の興味やライフスタイルに合った働き方を選べるのは理学療法士の魅力の一つです。

理学療法士に向いているのは、人と関わることが好きで、他者の感情に敏感で、思いやりがある人、安定を求める人です。

これらの特徴を持つ人は、理学療法士として患者さんや社会に貢献しながら、充実した職業人生を送ることができるでしょう。

理学療法士は、患者さんの運動機能の回復をサポートする尊い仕事ですが、その分、心身への負担や悩みを抱えることも少なくありません。

以上が、理学療法士に向いている人の特徴でした。

本記事では、理学療法士が感じやすい「つらい」と思う理由や、その背景について掘り下げました。

また、日々の業務を少しでも楽にするための対処法などもご紹介しました。

大切なのは、自分自身の健康と向き合いながら、無理のない働き方を見つけることです。

そして、悩みを一人で抱え込まず、周囲の同僚や専門家に相談することで、解決の糸口が見つかることもあります。

理学療法士としてのキャリアを充実させ、心から「この仕事を選んでよかった」と思える日々を目指しましょう。

ですが、選択肢は一つではありません。

どうしてもつらいときは転職やキャリアチェンジを考えてみましょう。

以下の記事では、理学療法士のセカンドキャリアについて詳しく解説しています。

キャリアについて悩んだとき、こちらも合わせてご参考にしてください。

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