「作業療法士は、うつ病になってしまった患者さんにどんなケアを行うの?」

身近な人がうつ病になってしまった方などにとって、うつ病へのケアはどうすればよいのか悩んでしまうことだと思います。

抗うつ薬などの薬物療法以外にも、うつ病の治療には様々な取り組みがあります。

その中でも作業療法は特に注目されています。

作業療法とは、患者さんが創作活動やスポーツに取り組むことで、社会復帰に向けた機能回復や日常生活の改善を目指すリハビリテーションです。

具体的には、どのような「作業」が行われ、どのような効果が期待できるのでしょうか。

この記事では、作業療法士によるうつ病患者への作業療法を例にご紹介します。

作業療法士によるうつ病患者への作業療法

まず初めに、作業療法士によるうつ病患者への作業療法についてみていきましょう。

うつ病は現代社会における代表的な精神疾患の一つであり、ほとんどの人が症状を理解しているものと思われます。

この病気は、気分の落ち込み、やる気の消失、睡眠の乱れ、食欲低下など、さまざまな症状が現れる深刻な状態です。

具体的な症状には、以下のようなものがあげられます。

  • ・抑うつ気分
  • ・他者から隠れたい衝動
  • ・漠然とした不安感
  • ・意欲の低下
  • ・食欲低下
  • ・睡眠障害
  • ・性欲の減
  • ・喜び退の減少
  • ・ネガティブな思考
  • ・集中力の低下
  • ・身体症状などです。

過去の調査では、うつ病の有病率は6.7%と報告されており、およそ15人に1人が生涯にわたってうつ病を経験する可能性があるとされています。

この数値は他の疾患と比べても高い水準にあります。

現在ではさらに有病率が上昇しているとも考えられます。

このように誰もがうつ病に罹患する可能性があるため、作業療法士はうつ病患者の退院や職場復帰、学校復学を見据えた「継時的作業療法」を行っています。

この療法は、導入期、継続期、集結期の3つのフェーズから構成されており、患者さんの状態に合わせて段階的なアプローチを行っています。

導入期

作業療法士は、患者さんとの信頼関係構築を通して、患者さんの回復に向けて様々な取り組みを行います。

まず、患者さんに作業療法の必要性を丁寧に説明し、同意を得ることが重要です。

特に消極的な患者さんに対しては、治療の枠組みを明確に伝えながら、作業を通じて心身への負担やストレスを和らげていくことを共有していきます。

通常、作業療法の導入期は治療開始から1ヶ月前後が目安となります。

この期間、作業療法士は以下のような取り組みを行います。

– 生活リズムの安定化: ベッドから起きる、作業療法への参加を生活の軸とする
– 回復を自己認識できる作業の提供
– 1日の活動量の評価と向上
– 生活における喜びや楽しみの提供
– 気分回復に伴う潜在的な自殺念慮の評価

これらの取り組みを通して、作業療法士は患者さんと専門的な視点で関わることができます。

なお、これらの知識は作業療法士にとって当然のものですが、一般の方にも十分応用できるものです。

これからさらに詳しく解説していきますので、ぜひ続けて読んでいただければと思います。

継続期

症状が一時的に悪化しても、無理に参加を強要せず、「休憩を取りましょう」や「症状が改善したら再開しましょう」といった柔軟な対応が重要です。

患者の退院後の生活を見据え、症状悪化の原因を検討し、日常生活への円滑な復帰を促すことが大切です。

作業療法を強要するのではなく、社会生活への参加と関連付けて説明していきましょう。

作業療法への参加を、職場や学校への参加に置き換えて練習してもらうことで、実際の社会生活への適応を目指します。

参加できなくても構いませんが、繰り返し練習することで、将来的な社会復帰につなげていきます。

この時期は症状の再燃が起こりやすいため、あえて患者さんにストレスを与えるのは避けるべきです。

ゆっくりと時間をかけ、社会参加への不安を軽減することが効果的です。

断続期は治療開始から1ヶ月以降を指し、この時期の作業療法士の役割として以下が重要になります。

  • – 社会的役割の再認識と必要とされる体験の提供
    – ストレス要因と心身症状の客観的理解の促進
    – 生活に必要な作業耐久性の向上
    – 再発予防のための生活習慣の見直し

うつ病患者にとって、この時期は非常に大切な時期となります。

少しずつ再発予防の学習と自信の醸成を行っていきましょう。

集結期

作業療法では、患者さんの行動の向上や開発を図り、その成果を社会生活に反映させることが重要です。

そのために、作業療法士は患者さんから相談や表出があるのを待つ姿勢を大切にしています。

患者さん自身が、他者に相談したり、他者と協力して物事を進めたりする体験を通して、ストレス対処技能を学習することができます。

しかし、過度な介入は今までの支援を無駄にしかねないため、できることは患者さん自身に行ってもらうよう促します。

復職検討時期以降の集結期には、作業療法士が以下のことに取り組みます。

  • – ストレス要因の認識を促す作業の提供
    – ストレス対処技能の向上、開発、調整
    – 再発予防のための生活の再構築
    – 患者さんが望む現実的な社会生活の維持
    – 症状再燃への自己対処能力の向上

このように、3つの時期を意識しながら、作業療法はうつ病の回復に寄与していきます。

以上が、作業療法士によるうつ病患者への作業療法でした。

では次に、作業療法士によるうつ病患者への就労支援についてみていきましょう。

作業療法士によるうつ病患者への就労支援

ここからは、作業療法士によるうつ病患者への就労支援についてみていきたいと思います。

うつ病を発症された方にとって、日常生活のリズムを取り戻すことや、職場や学校への復帰が非常に重要になってきます。

近年の調査によると、50人以上の企業に勤める精神障がい者の数が、2016年6月時点で前年より20%増加しており、身体障がいや知的障がいの伸び率を上回っていることが明らかになりました。

これは、さまざまな悩みを抱えながらも懸命に仕事に取り組んでいる人が多いことを示しています。

このような現状を踏まえ、作業療法がうつ病を持つ方々にどのように寄与しているのかについて、詳しくお話ししていきたいと思います。

就労に向けたリハビリテーション

就労に向けたリハビリテーションでは、準備段階に重点を置いています。

まず、薬物療法と休息・休養により体調の改善を図ります。

その後、生活リズムを整え、徐々に活動性を高めていくことが重要です。

このように段階的に進めることで、日常生活の安定を目指します。

しかし、日常生活が安定しただけでは、すぐに就労できるわけではありません。

日中の生活では、限られた人や家族とのコミュニケーションで、自分のペースで物事を進められます。

一方、社会に出ると状況が一変します。

時間制限、初対面の人との交流、人前での発言、様々な人とのコミュニケーションが求められ、仕事へのノルマも課されます。

作業療法士の役割は、この日常生活と社会のギャップをいかに埋めていくかにあります。

社会復帰に向けたリハビリテーションを展開し、クライエントが円滑に職場復帰できるよう支援していきます。

具体的にはどのような作業療法が行われているのか、詳しく説明していきます。

基礎体力と活動性の改善

生活リズムの改善と基礎体力の向上は、就労に向けての重要な基盤となります。

自宅では起床時間や睡眠時間、日中の活動を自身で管理しなければならず、睡眠障害や抑うつ、意欲低下などの症状があると、一人で復職準備を進めるのは容易ではありません。

そのため、外来作業療法に通うことで、生活リズムの構築と基礎体力作りに取り組むことが有効です。

作業療法では、朝起きる時間や食事、外出の時間などを一定のフレームワークの中で管理し、徐々に活動性を高めていくことができます。

また、対人関係におけるストレス耐性も高めていくことが可能です。

このように、外来作業療法を通じて生活リズムを整え、基礎体力と活動性を改善させることは、就労に向けての大きな一歩となるのです。

作業活動やメンバーとの関わりから見えてくるもの

作業療法では、会話だけでは見落とされがちな患者さんの特性や課題が、実際の作業活動やメンバーとの関わりの中から浮き彫りになることが多いです。

作業療法プログラムは長期にわたるため、問題や課題が表面化しやすい傾向にあります。

作業療法士は、患者さんの行動特性を把握し、その特性に合わせた付き合い方を考えることが重要な役割となっています。

例えば、外来作業療法に参加して疲れてしまった患者さんの場合、どの活動で、どの工程で疲労が生じたのかをセルフモニタリングできるよう支援することが大切です。

このようなセルフモニタリングとセルフコントロールの能力を身につけることで、患者さんは復職時に自身の行動特性を理解し、無理なく仕事を行えるようになる可能性が高まります。

また、どのような活動で疲れるのか、何が苦しくなるのかをメモに残しておくことも重要です。

対人交流からの気づき

うつ病を抱える方は、対人関係におけるストレスに悩まされることが多いです。

他者との交流が苦手な場合、集団の場面で、自分なりの関わり方や距離感を練習することが重要です。

個人での課題遂行には問題がなくても、人々との関わりの中で、新たな課題が浮き彫りになることがあります。

例えば、グループディスカッションでなかなか発言できない参加者がいた場合、その背景にある要因を分析することが大切です。

「周りから変に見られるのではないか」「私の意見なんて誰も聞きたくないだろう」「意見を言われたらどうしよう」「発言がうまくいかないと恥ずかしい」など、うつ病の方は様々な不安を抱えていることがあります。

一方で、うつ病の方は思いやりが深く、努力家で真面目な方が多いのも特徴です。

しかし、相手を思いやるあまり、自分の意見を述べられなくなってしまうこともあります。

これらの課題を改善するには、同じような境遇の人と意見交換を行うことが非常に重要です。

発言に対して否定的な反応をしないよう配慮しながら、会話を続けることで、自分の性格特性や価値観に気づくことができます。

作業療法士も、うつ病の方同士の交流を促進するような関わりを持っています。

これにより、自己理解を深めながら、支え合いの関係性を築いていくことができます。

一人で復職や就労の準備を行うのは大変ですが、支え合いがあれば、スムーズな就労につながります。

また、辛い時期にも、お互いに支え合うことができるのです。

このように、対人交流は、うつ病の方にとって必要不可欠なものといえるでしょう。

以上が、作業療法士によるうつ病患者への就労支援でした。

最後に、うつ病を患っている方への接し方についてお話していきます。

うつ病の方とは適切なタイミングで接していくことが大事

うつ病の方に対するケアを行う際には、適切なタイミングで接することが非常に重要です。

うつ病は、精神的な病気であり、患者さんの心の状態は非常に不安定なことが多いです。

まずは、患者さんの状態を把握するために、適切なタイミングで話を聞くことが大切です。

患者さんが落ち着いている時や話しやすそうな雰囲気の時に、ゆっくりと話を聞くことで、彼らの心の声を聞くことができます。

また、うつ病の方は、集中力や意欲の低下が見られることがあります。

そのため、適切なタイミングで適切なケアを行うことが重要です。

具体的なケア方法としては、リラックスできる環境を整えることや、彼らのペースに合わせたスケジュールを組むことが挙げられます。

さらに、適切なタイミングで患者さんとのコミュニケーションを取ることも大切です。

彼らが話したいときや相談したいときに、いつでも気軽に話せる環境を提供することで、彼らの不安や悩みを共有し、解決に向けて一緒に取り組むことができます。

うつ病の方に対しては、適切なタイミングで接することが大事です。彼らの心の声を聞き、適切なケアを行いながら、一緒に向き合っていきましょう。

以上が、うつ病を患っている方への接し方のポイントでした。

作業療法士によるうつ病患者へのケアは、患者さんの回復に向けて非常に重要な役割を果たしています。

特に、個々の患者さんに合わせた柔軟な対応や、作業活動を通じた対人関係のスキル向上は、長期的な回復と再発予防に大きな効果があります。

作業療法士は、うつ病の患者さんが自分のペースで回復し、再び充実した日常生活を送れるよう、専門的な視点で支援しています。

もし身近にうつ病に悩む方がいる場合は、作業療法の活用を考えてみてください。

そして、専門家と連携しながら、温かいサポートをすることが大切です。