「作業療法士が行う訓練内容ってどんな内容なの?」

作業療法士は、リハビリテーションの現場において不可欠な専門家です。

彼らは、病気や事故により身体に障害を抱える患者、あるいは身体機能の低下した患者の状態を正確に評価し、心身の機能回復を目指した治療やリハビリテーションを行っています。

しかしながら、作業療法士がどのような場所で、どのような人々にリハビリテーションを提供しているのかについては、一般の方には十分に認知されていないのが現状です。

そこで本記事では、作業療法士が行う訓練内容について詳しく解説します。

作業療法士による訓練内容①機能や動作の訓練

作業療法士の訓練内容には、食事動作、認知機能、高次脳機能などの分野が含まれます。

それぞれの分野で、具体的にどのような内容の訓練が行われているのでしょうか。

食事動作訓練の内容

食事動作訓練、別名「嚥下訓練」は、嚥下障がいのある方が自力で食べ物を咀嚼・飲み込めるよう支援するものです。

患者さんとのコミュニケーションを大切にしながら、訓練を行います。

この訓練には広い視点が必要とされるため、言語聴覚士や理学療法士などの他職種と連携し、チームで患者さんをサポートすることもあります。

認知機能訓練の内容

認知機能は、五感を通じて得られる外部情報を基に、現状の把握や記憶の想起を行う機能です。

リハビリテーションは、手指の動きや上肢筋力などの身体機能、判断力や集中力などの心理機能の維持・改善に役立ち、認知症の予防や症状の遅延に効果が期待できます。

さらに、これらの能力を維持することで、大きな環境変化にも適応できるようになります。

高次脳機能訓練の内容

高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる疾患です。

脳梗塞や脳出血などの病気がその主な原因となります。

この障がいにより、認知機能の低下が生じることがあります。

そのため、作業療法士は、思考力、判断力、注意力などの向上を目的とした訓練を行います。

具体的には、細かな手工芸やパズルなどを使用した訓練を通じて、高次脳機能の改善に取り組みます。

以上が、作業療法士による訓練内容でした。

では次に、作業療法士のもう一つの訓練内容である、リハビリテーションについてご説明していきます。

作業療法士による訓練内容②リハビリテーション

作業療法士による訓練内容は主に、身体的、精神的、発達期、老年期のリハビリテーションです。

具体的には、身体機能の回復支援、心の健康維持、子どもの発達促進、高齢者の自立生活支援などを行っています。

身体のリハビリテーション

リハビリテーションは、病気や怪我、加齢などで身体に障がいのある人々の機能回復を目的としています。

関節の可動域を広げたり、筋力を高めるための訓練が行われます。

作業療法士は、日常生活動作の改善に焦点を当てます。

食事、入浴、着替えなど、健常者にとっては当たり前の行動でも、障がいのある人にとっては困難な場合があります。

作業療法士は、一つ一つの動作を分析し、個人に合わせた訓練を行うことで、できる限り自立した生活を送れるよう支援します。

急性期のリハビリ

怪我や病気の直後から約1ヵ月間は急性期と呼ばれます。

この期間は早期のリハビリに取り組むことで、寝たきりや後遺症などの身体機能の低下を防ぐことができ、日常生活動作の改善を目指すことができます。

ただし、この時期のリハビリの目的は、発症前の状態まで完全に回復させることではなく、回復期のリハビリに向けた準備といえます。

回復期のリハビリ

厚生労働省によって、回復期のリハビリの入院期間や条件が定められており、専門医の判断が必要とされています。

患者さんの状態に応じて、最大入院期間は 60 日から 180 日と幅があります。

回復期のリハビリでは、基本動作の訓練に加えて、社会復帰に向けた生活訓練も行われます。

目標は、可能な限り以前の生活に近い状態を取り戻すことです。

さらに、認知面や精神面の訓練、心のケアなど、身体面以外のリハビリにも取り組みます。

場合によっては、自宅訪問を行い、家の改修や補助器具の導入などの検討も行い、退院後の生活をサポートします。

維持期・生活期のリハビリ

リハビリの維持期・生活期は、急性期と回復期のリハビリを経た人が在宅で機能の維持と向上を目指すものです。

病院で行うリハビリでは、回復期までと同様のリハビリに加え、さらなる能力向上を図ります。

この時期の目的の1つは、対象者のQOLの向上です。

ただし、全ての患者さんが理想的な回復ペースで進むわけではありません。

個々の状況に合わせた支援が必要となるでしょう。

精神のリハビリテーション

精神的な課題を抱える人々にとって、日常生活や社会参加が困難な場合があります。

そこで、作業療法士が様々な活動を通じて、心のリハビリテーションをサポートしています。

料理、洗濯、将棋、書道、園芸、木工、裁縫、体操など、さまざまな「作業」を行うことで、生活の見直しや自信の醸成を促します。

こうした取り組みを通して、その人が抱える生きづらさの改善を目指すのが作業療法の役割です。

発達期(子ども)のリハビリテーション

作業療法士は、発達障がいのある子どもの日常生活スキルや社会性、運動能力の発達を支援します。

乳幼児期には這い這いや物の把握など、幼児期には歩行、食事、着替えなどの動作を訓練します。

リハビリテーションでは、子どもが楽しめる遊びを通して、道具の使い方などを教えながら、身体を動かすことが多いのが特徴です。

老年期のリハビリテーション

高齢者のリハビリテーションは、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下を補い、自立した生活を支援することを目的としています。

介護老人保健施設では、要介護度1以上の高齢者に対して、在宅復帰を目指した訓練を実施しています。

一方、特別養護老人ホームでは、終生施設で生活する入所者が多いため、現状の維持や機能低下の予防を目的としたリハビリを行っています。

このように、施設や対象者によって、その人らしい生活が送れるよう、それぞれのニーズに合わせたリハビリが行われています。

病院以外での作業療法

老年期障害の作業療法は、医療機関のみならず、介護施設や在宅サービスなど、多様な場所で行われています。

具体的には、介護老人保健施設、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、通所リハビリテーション(デイケア)、訪問リハビリテーション(自宅)などがその対象となります。

このように、老年期障害に対する作業療法は、幅広い場所で提供されているのが現状です。

介護予防支援

高齢者の自立した生活を支援する介護予防サービスでも、作業療法士が重要な役割を果たしています。

具体的には、通所型や訪問型の介護予防事業において、日常生活や社会参加の評価を行い、生活行為の改善に向けた助言や指導を行います。

また、地域介護予防活動支援事業では、住民の社会参加に対するニーズを把握し、活動の場づくりを支援します。

さらに、地域ケア会議では、バリアフリーのまちづくりなど、地域の課題解決に向けた提案を行っています。

このように、作業療法士は高齢者の自立した生活を支援するために、様々な取り組みを行っているのです。

ここでは作業療法士の訓練内容のうちの、リハビリテーションについて詳しくご紹介しました。

最後に、これらの訓練内容を行う作業療法士という仕事について深堀していきましょう。

作業療法士の仕事をより詳しく理解するために

作業療法士の仕事を深く理解するために、重要なポイントを以下にご紹介します。

作業療法士を目指す方法、作業療法士の試験、作業療法士の勤務先、そして作業療法士に向いている人や向いていない人の特徴について、それぞれ詳しく説明します。

作業療法士を目指す方法

作業療法士を目指すには、国家試験に合格する必要があります。

その前提として、4年制大学や3年制短大、専門学校などで受験資格を取得する必要があります。

就職率が高く、学費サポートや学習環境が整っているため、主婦や社会人の方の中でも作業療法士を目指している人が多くいます。

作業療法士の試験

作業療法士の国家試験は、養成学校に3年以上通って受験資格を得た人のみが受験できます。

試験は毎年2月に、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県および沖縄県の試験会場で実施されています。

合格基準は年度によって異なりますが、概して総得点の約60%、実地問題の30%が合格点となっています。

合格発表は試験翌月の3月で、合格率は例年70〜80%程度です。

作業療法士の勤務先

作業療法士の主要な職場は多岐にわたります。

病院、介護施設、作業療法士の養成校、児童福祉施設などがその代表的な勤務先です。

作業療法士としての自己実現には、自分に合った職場を見つけることが重要です。

自分の希望する働き方を明確にし、各職場の特徴を慎重に比較検討することが賢明でしょう。

作業療法士に向いている人や向いていない人の特徴

作業療法士を目指すには、養成学校に通い、国家試験に合格する必要があります。

この道のりは時間がかかるため、自分に適性があるかを慎重に検討するのが賢明でしょう。

作業療法士に向いている人の特徴としては、患者さんに寄り添う思いやりの心、コミュニケーション能力、好奇心などが挙げられます。

一方、コミュニケーション力や協調性、忍耐力に課題がある人は、作業療法士の仕事で苦労することが予想されます。

以上が、作業療法士の仕事についてでした。

からだとこころのリハビリを担当する作業療法士は、リハビリテーションの現場で重要な役割を果たす職業です。

専門分野が多岐にわたるため、活躍の場も広く、今後ますます社会にとって不可欠な存在となっていくでしょう。

作業療法士は、「作業活動」を通じて、病気や怪我、加齢などで生きがいを失った人が、その人らしく、可能な限り自由に・自立した日常生活を送れるようサポートします。

このように、作業療法士という職業は、人々の生活の質を向上させるうえで大きな意義を持っています。

以下の記事では作業療法士についてさらに詳しく解説しています。

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