放課後等デイサービスの給料は高い?平均年収や年収アップの方法について
放課後等デイサービスで働くことに興味はあるけれど、「実際の給料はどのくらいなんだろう?」「生活していけるのかな?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
こどもと関わるやりがいのある仕事ですが、収入面も大切なポイントですよね。
本記事では、放課後等デイサービスにおける平均的な年収や給料の相場についてわかりやすく解説するとともに、収入をアップさせるための方法や工夫についてもご紹介します。
これから働こうと考えている方はもちろん、すでに現場で働いている方にも役立つ情報をお届けします。
放課後等デイサービスにおける給料について
放課後等デイサービスで働くスタッフの給料は、その人の職種やこれまでの経験年数、勤務する地域の特徴など、さまざまな要因によって大きく変わってきます。
給与の支払い方法についても、月給制で安定した収入を得られる場合もあれば、時給制で働くケースもあり、雇用形態や施設の方針によって異なります。
厚生労働省が公表している「令和5年 障がい福祉サービス等経営実態調査」の結果によれば、放課後等デイサービスで常勤として勤務しているスタッフの平均年収は、313万円程度となっています。
一方で、国税庁が発表したデータによると、日本国内の給与所得者全体の平均年収はおよそ461万円とされています。
この数字と比較すると、放課後等デイサービスの給与水準は、全国平均よりもやや低めであると言えるでしょう。
地域ごとの給与相場(職種別)
次に、地域ごとに異なる給与水準について、職種別に詳しく見ていきましょう。
以下の情報は、障がい福祉分野に特化した転職支援サービス「LITALICOキャリア」が公表しているデータをもとにしています。
北海道・東北地方
このエリアでは、月給は約18万円〜29.5万円の範囲に収まるケースが多くなっています。
物価や生活コストが比較的低いため、給与も控えめな傾向が見られます。
- 児童発達支援管理責任者:23.8万円〜29.5万円
- 保育士:18.0万円〜24.7万円
- 機能訓練担当職員:19.5万円〜26.2万円
甲信越・北陸地方
こちらの地域では、平均的な月給は18.8万円〜32.3万円ほど。
地域ごとのニーズや人材不足の度合いによって、若干の差が見られます。
- 児童発達支援管理責任者:23.2万円〜32.3万円
- 保育士:18.8万円〜26.8万円
- 機能訓練担当職員:19.6万円〜27.9万円
関東地方
関東エリアは、全国的に見ても給与が高めに設定される傾向があります。
とくに東京都や神奈川県といった都市部では、人材需要が高く、待遇にも反映されています。
- 児童発達支援管理責任者:28.5万円〜36.0万円
- 保育士:23.7万円〜29.8万円
- 機能訓練担当職員:26.7万円〜33.8万円
東海地方
東海エリアの平均月給は、20.5万円〜33.7万円程度です。
名古屋市のような都市部では、比較的高めの給与が設定されるケースもあります。
- 児童発達支援管理責任者:26.7万円〜33.7万円
- 保育士:20.5万円〜26.8万円
- 機能訓練担当職員:22.1万円〜29.2万円
関西地方
この地域では、大阪や京都などの大都市を中心に、月給21.3万円〜33.9万円程度の範囲で設定されています。
都市部の需要の高さが給与にも影響を与えていると考えられます。
- 児童発達支援管理責任者:26.2万円〜33.9万円
- 保育士:21.3万円〜28.2万円
- 機能訓練担当職員:23.6万円〜31.8万円
中国地方
平均的な月給は18.2万円〜29.2万円程度とされており、地方ならではの生活コストの低さが給与にも反映されています。
- 児童発達支援管理責任者:23.3万円〜27.8万円
- 保育士:18.2万円〜22.4万円
- 機能訓練担当職員:20.3万円〜29.2万円
四国地方
物価が安いとされる四国地方では、月給は19.4万円〜31.1万円程度となっています。
- 児童発達支援管理責任者:23.9万円〜31.1万円
- 保育士:19.4万円〜24.8万円
- 機能訓練担当職員:23.1万円〜27.4万円
九州・沖縄地方
このエリアでは、月給は20万円〜30.8万円ほど。
特に沖縄では、物価の影響で給料がやや抑えられているケースもあります。
- 児童発達支援管理責任者:25.2万円〜30.8万円
- 保育士:20.0万円〜25.9万円
- 機能訓練担当職員:21.2万円〜27.3万円
保育士と比べて、放課後等デイサービスの給与は高いの?
厚生労働省が公表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、一般的な保育士の平均的な月給は約26万6,000円となっています。
一方で、「令和5年障がい福祉サービス等経営実態調査」の結果によれば、放課後等デイサービスで勤務する保育士の平均月給は約22万1,000円という数値が出ています。
このことから、一般的な保育園などで働く保育士と比べると、放課後等デイサービスに勤務する保育士の給与はやや低めである傾向が見受けられます。
とはいえ、これらの金額はあくまで統計上の平均値に過ぎず、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
実際の給与額は、勤務する施設の規模や運営方針、地域差のほか、個々の保育士が持つ経験年数や取得している資格などによっても大きく左右されます。
また、放課後等デイサービスの現場では、特別支援学校教諭免許や社会福祉士、言語聴覚士などの専門的な資格を保有している場合、専門性が評価されて給与が高く設定されることもあります。
そのため、「放課後等デイサービスは給与が低い」と一概に断言することはできず、自分のキャリアやスキルに応じた待遇が受けられる可能性があるという点も押さえておきたいところです。
以上が、放課後等デイサービスにおける給料についてのお話でした。
続いて、放課後等デイサービスの給料が安い理由についてみていきましょう。
放課後等デイサービスの給料が安い理由について
放課後等デイサービスの給料が安い理由についてお話していきます。
施設が得られる売上に限界がある仕組み
放課後等デイサービスの職員の給与が比較的低くなりやすい背景には、施設そのものが得られる売上に上限があるという構造的な問題があります。
特に、利用者数や営業可能な時間帯が限られている点が、直接的な原因の一つといえるでしょう。
まず、放課後等デイサービスでは、1日に受け入れることができる利用者の定員が法的に定められており、その数は多くの施設でおよそ10名程度に設定されています。
この定員制限があるため、希望者が多数いたとしても、法律に則って定められた範囲内でしかサービスを提供することができません。
結果として、利用者数が大幅に増えることはなく、売上の拡大も自然と頭打ちになります。
さらに、サービス提供の時間帯が「放課後」に限定される点も、収益を制限する要因の一つです。
平日は主に学校が終わったあとの午後の時間帯にのみ開所しており、1日に確保できる営業時間は非常に短くなっています。
長期休暇の期間中は午前中から開所することもありますが、それでも年間を通じて見れば、営業時間は限られています。
そのため、サービスの提供回数や利用単価を上げたとしても、大幅な増収は期待しにくいという現実があります。
また、放課後等デイサービスは地域密着型の福祉事業であるため、施設が立地する地域の人口や障がいのあるこどもたちの数によっても、利用者の確保が大きく左右されます。
人口が少ない地域や、既に多くの施設が存在する地域では、競合も発生しやすく、利用希望者の獲得が難しくなるケースも少なくありません。
このような条件から、収益を拡大しにくい構造が形成されており、職員の給与水準にも影響を及ぼしていると考えられます。
介護報酬制度の仕組みによる影響
放課後等デイサービスは、「障がい児通所支援事業」として国の制度の一環で運営されており、そのサービスに対する報酬は、介護給付費などの公的支援によって支えられています。
つまり、民間の自由な価格設定ができないという制約がある中で、国が定めた介護報酬単価に沿って事業運営が行われているのです。
この介護報酬は、サービスの提供時間、内容、利用者の状態など、細かい基準によって金額が決定されており、必ずしも高額な設定にはなっていません。
そのため、施設側は限られた収入の中で、運営コストや人件費をやりくりしなければならず、職員の給与に十分な予算を割くことが難しくなる傾向にあります。
また、介護報酬の金額は数年ごとに国の政策によって改定されており、報酬の増減によって事業所の経営状況が大きく左右されます。
報酬が減額されれば当然、事業所の収益は減少し、職員の給料にもマイナスの影響が出てしまいます。
一方で、報酬が増額された場合でも、その分がすぐに給与に反映されるとは限らず、時間差が生じるケースが多いのも実情です。
さらに、介護報酬は地域ごとの経済状況や物価などに応じて設定されているため、都市部と地方では報酬単価に差があり、これが地域ごとの給与格差を生む原因にもなっています。
同じ仕事内容でも、働く場所によって収入に違いが出るというのは、働く側にとっては不公平に感じる要素の一つかもしれません。
このように、制度上の制約や報酬単価の変動性、地域による差異などが重なり合って、放課後等デイサービスの職員の給与が上がりにくいという課題が生まれています。
今後、この問題を解消していくためには、介護報酬制度の見直しや、施設の収益向上のための新たな取り組みが必要とされますが、現段階ではそれが簡単に実現できる状況にはないのが現実といえるでしょう。
以上が、放課後等デイサービスの給料が安い理由についてのお話でした。
続いて、放課後等デイサービスで給料を上げるための方法についてみていきましょう。
放課後等デイサービスで給料を上げるための方法
放課後等デイサービスで働く中で、「もっと収入を増やしたい」「生活に余裕を持ちたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
福祉業界はやりがいのある仕事である一方で、給与面に課題を感じる人も少なくありません。
そこでここでは、放課後等デイサービスで給料を上げるために実践できる具体的な方法を詳しくご紹介します。
専門的な資格を取得する
専門性の高い資格を取得することは、給与アップを目指すうえで非常に有効な手段となります。
放課後等デイサービスでは、特定の資格を持っている職員が重宝される傾向にあり、持っているだけで基本給や手当が上がる場合もあります。
特に評価されやすい資格には、以下のようなものがあります。
- 保育士資格
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
これらの資格は、こどもたち一人ひとりに合わせた専門的な支援を行ううえで必要とされるスキルや知識を備えている証明となります。
そのため、現場での信頼度も高まり、給与に反映されやすくなるのです。
さらに、複数の資格を取得することで業務の幅が広がり、より高い評価を得る可能性も高くなるでしょう。
長く勤務を続ける
勤続年数が長くなることも、給与を上げるための有効な方法の一つです。
多くの施設では、在籍年数に応じて昇給制度が整っており、ボーナスや手当が支給されるケースもあります。
また、長期間働くことで施設の運営や支援業務に関する深い理解が培われ、周囲からの信頼も高まっていきます。
経験や知識の蓄積は、主任や管理者などの役職に昇格するための土台となるため、結果的に給与アップにもつながるでしょう。
さらに、一つの職場で長く勤務していることは、雇用主にとっても安心材料となります。
転職が頻繁な場合、安定性に疑問を持たれることもありますが、長く勤めている実績があると、責任あるポジションを任せられる人材として評価されることが多くなるのです。
公務員を目指す
放課後等デイサービスの中には、公立の施設も存在しており、そちらで勤務することで公務員として働く道もあります。
公務員になると、給与水準が比較的高く、安定した昇給制度や各種手当が支給されるため、民間の施設よりも待遇が良いことが多いです。
また、公務員としての経験は、将来的に管理職や行政機関での福祉関連の仕事へとつながる可能性もあり、キャリアパスの幅を広げることができます。
たとえば、地域福祉を推進するプランナーや施設長など、より高いポジションを目指すことも可能です。
ただし、公務員になるには採用試験に合格する必要があります。受験にはしっかりとした準備が求められ、応募資格や条件も自治体によって異なります。
事前に募集要項をよく確認し、計画的に対策を進めていくことが大切です。
キャリアアップを目指す
現在働いている施設の中で、キャリアアップを図ることも収入増につながる有効な手段です。
役職に就くことで業務の責任は増しますが、そのぶん給与面でも優遇されるケースが多く見られます。
たとえば、以下のような昇進が考えられます。
- 一般職員から主任職への昇格
- サービス管理責任者としての役割を担う
- 施設長や運営責任者としてマネジメントに関わる
こうした役職に就くためには、日頃からの業務に真摯に取り組み、職場内での信頼を積み重ねることが大切です。
加えて、必要な研修への参加や管理職に求められる知識・スキルを身につけておくことも重要です。
より良い条件の施設へ転職する
現在の職場で大きな給与アップが見込めない場合、思い切って他の施設へ転職するという選択肢もあります。
転職によって給与条件が改善されるケースは多く、経験や資格を活かしてステップアップする好機にもなります。
転職先を選ぶ際には、以下の点をしっかり確認しましょう。
- 基本給、手当、賞与を含む給与体系の内容
- 勤務時間や休日などの労働条件
- 法人や施設の規模、安定性
- キャリアアップの支援体制や制度の有無
とはいえ、転職を考える際は給与だけでなく、「自分に合った職場かどうか」や「働きやすさ」「人間関係」なども含めて、総合的に判断することが大切です。
焦らず、じっくりと情報を集めて、納得のいく職場を選びましょう。
以上が、放課後等デイサービスで給料を上げるための方法についてのお話でした。
放課後等デイサービスの給料は、他の福祉・教育職と同様に決して高水準とは言えないものの、資格の取得や経験の積み重ね、職場での役職や勤務形態によって収入を伸ばすことは十分に可能です。
給与だけでなく、やりがいや働きやすさ、将来のビジョンを総合的に考えながら、自分らしい働き方を見つけてください。
この記事が、その第一歩となることを願っています。