2025年11月5日
児発管のOJTとは?6か月の要件・実務内容を分かりやすく解説
児童発達支援管理責任者(児発管)を目指すには、まず「基礎研修」を受講し、そのあとにOJTと呼ばれる実地研修を行う必要があります。
児発管のOJTは原則「2年以上」の実地研修が必要です。
ただし、平成31年度(令和元年度)の制度改正で、一定の条件を満たす場合に限り「6か月以上」へ短縮できる特例が設けられました。
本記事では、児発管のOJTの仕組みと、2年→6か月短縮の要件についてわかりやすく解説します。
児発管OJTとは?制度の仕組みと実施場所をやさしく整理
児発管OJTとは、基礎研修で学んだ知識を現場で実践し、実践研修に進むための6か月間の実地研修制度です。
基礎研修で学んだ理論を実際の支援現場で活かし、支援計画づくりや多職種連携の進め方を実践的に身につけることを目的としています。
原則は「2年以上」ただし条件を満たせば「6か月」へ短縮が可能
OJTの実務従事期間は、制度上原則2年以上と定められています。
しかし、平成31年度(令和元年度)の制度改正によって、特定の条件を満たす場合に限り、「6か月以上」への短縮が認められるようになりました。
短縮の主な条件は次の3点です。
- 基礎研修受講開始時点で、児発管の実務経験要件(3〜8年)を満たしていること
- 児発管が配置されている指定事業所で、個別支援計画(原案)作成などの実務に従事していること
- 法人が行政(市・県)へOJT実施届を提出し、受理されていること
このOJTを修了してはじめて「実践研修」に進むことができます。
児発管のOJTは「基礎研修のあと」に始まるステップ
児発管になるまでの流れは、次の6ステップで構成されています。
- 実務経験要件(相談支援または直接支援の経験)を満たす
- 基礎研修を修了
- OJT(6か月〜2年間の現場研修)を実施
- 実践研修を修了
- 児発管として配置(正式に勤務可)
- 5年ごとの更新研修
OJTは、この中で「基礎研修」と「実践研修」の間に位置づけられています。
制度改正の背景には「人材確保と支援の質の両立」があります。
その中でもOJTは「質」の側面を支える仕組みであり、6か月〜2年間の現場経験を通して、児発管としての判断力・計画力を磨く重要なフェーズとなっています。
OJTは児発管がいる事業所でしか行えない
児発管のOJTは、必ず児発管が配置されている指定事業所で実施しなければなりません。
これは、OJTが「児発管の監督・指導のもとで行う実習」として制度上位置づけられているためです。
なぜ児発管が必要なのか?
児発管の主な業務である「個別支援計画書の作成」は、行政の監査や報酬算定に関わる法的文書です。この計画書は、誤りがあれば報酬の減算や行政指導につながる重要な書類のため、作成・承認には法的責任が伴います。
OJT研修生にできること・できないこと
OJT中の研修生は、まだ正式な児発管ではありません。
そのため、実際の支援計画づくりに関わることはできますが、行えるのは「原案(下書き)」までです。
保護者との面談やカンファレンスに同席して計画案をまとめることはできますが、最終的な承認や交付を自分の名義で行うことはできません。
指導児発管の監督責任
OJTで作成された計画原案は、必ず「事業所に配置されている正規の児発管(指導児発管)」が確認・修正を行います。
そのうえで、正式な「個別支援計画」として承認し、交付する責任を負います。
つまり、研修生は実務を学ぶ立場、指導児発管は法的責任を担う立場という明確な役割分担があるのです。
児発管のいない事業所でOJTができない理由
児発管がいない事業所では、この「監督・承認」のプロセスを実施できません。
そのため、OJTを行っても制度上は「監督のない実習」=有効なOJTと認められない扱いになります。
このルールは、現場の学びを形式的な”勤務期間”に終わらせず、支援の質を担保するために設けられています。
OJTは個人では申請できない。届出は法人の責任
児発管OJTの開始には、必ず所属法人(事業者)による届出が必要です。
個人のみで直接申請を完結させる運用は、一般的に認められていません。
これは、OJTが「個人の資格取得活動」ではなく、「法人の法的な取り組み」として扱われるためです。
行政(市・県)は、個人ではなく「指定事業所単位」で研修や運営体制を監督しています。
「当法人は、正規の児発管の監督下で、研修生のOJTを実施します」
という公式な通知を行政に提出することです。
提出書類には、勤務体制表、実務経験証明書、基礎研修修了証の写しなど、法人体制を示す文書が含まれます。
もし届出が遅れたり不備があると、OJTの開始日が遅延したり、人員欠如減算などのリスクにつながる場合もあります。
次の章では、OJTが「原則2年以上」から「6か月以上」に短縮されるための要件を解説します。
児発管のOJTを「6か月」で修了できるのはどんな人?3つの要件をわかりやすく解説
児発管のOJTは、原則2年以上の実務期間が必要ですが、次の3つの条件をすべて満たす人は「6か月」に短縮できます。
【6か月短縮の3要件(いずれも必須)】
- 実務経験要件を満たしていること(相談支援または直接支援業務3〜8年)
- 障害福祉サービス等の事業所で、個別支援計画(原案)作成業務に6か月以上従事していること
- OJTの届出が法人により適正に行われ、行政に受理されていること
要件のどれか一つでも欠けている場合、6カ月への短縮制度は適用されず、児発管としてのOJT期間は原則どおり「2年以上」となります。
詳しく解説します。
6カ月の短縮要件① 実務経験が3〜8年以上あること
児発管OJTの6か月短縮制度の前提となるのが、基礎研修の受講時点で必要な実務経験年数を満たしていることです。
ここで言う「実務経験」とは、児童指導員、保育士、生活支援員、相談支援専門員などとして、障害福祉サービスまたは児童福祉施設等で支援業務に従事した期間を指します。
| 経験区分 | 必要な目安年数 |
|---|---|
| 相談支援業務 | 3年以上 |
| 直接支援業務(児童指導員・保育士など) | 5〜8年程度 |
6カ月の短縮要件②個別支援計画の原案作成など児発管の中核業務を行っていること
6か月短縮ルールを適用する場合は、明確に定められた「業務範囲」と「達成基準」を満たす必要があります。
OJT期間中に経験すべき主な業務
| 業務ステップ | 内容(OJT中に行うこと) |
|---|---|
| アセスメント | 利用者(子ども)とその家族へ面接を行い、発達状況・ニーズ・生活環境などを整理する。 |
| 個別支援計画(原案)作成 | アセスメント結果にもとづき、「目標」「支援方法」「評価の視点」などを盛り込んだ原案を作成する。 |
| カンファレンス(担当者会議)への参加 | 指導児発管や他職種と協議し、原案の方向性・妥当性を検討する。必要に応じて修正する。 |
| 交付・同意 | 家族に計画内容を説明し、文書で同意を得たうえで正式に交付する。 |
| モニタリング(評価) | 計画に基づく支援の実施状況を継続的に確認し、必要に応じて計画の見直しを行う。 |
OJTでは、研修生が計画づくりの手順を実際に行いますが、最終決定や承認は必ず、配置されている児発管が行います。
研修生は「原案を作る人」、児発管は「最終的な中身を確認して承認する人」という役割分担です。
OJTの目的は「数をこなすこと」ではなく、1件ごとに計画を立て、評価まで責任を持つ経験を積むことです。
個別支援計画の原案作成のプロセスを通じて、支援のPDCAサイクルを自分の手で回せる力が身につきます。
6か月OJTで求められる「10件のケース」とは?自治体ごとの運用差に注意
多くの自治体では、アセスメントからモニタリングまでの一連のサイクルを「概ね10件以上」経験することを目安としています。
ただし、この「10件」という件数は、国が一律に定めた必須条件ではありません。OJTの実績確認方法は 自治体(指定権者)ごとに運用が異なります。
多くの自治体が目安として採用していますが、実践研修の受講要件は自治体により異なります。
OJT開始前に、必ず指定権者(市または県)へ確認してください。
6か月の短縮要件③法人がOJTを指定権者へ届け出ていること
児発管のOJTを始めるには、法人による正確な届出と手続きが必須になります。
①OJT届出は「法人」が行う。提出先と期限を間違えないこと
児発管OJTの届出は、法人(事業者)が行う正式な行政手続きです。
個人での申請は認められていません。
②どこに提出する?
OJTを実施する事業所の所在地を管轄する指定権者(市または県)
全国展開法人は、自治体ごとに異なる提出先を一覧で管理する必要があります。
③提出期限は?
OJT開始に関する届出の提出期限は、自治体によって異なります。
多くの自治体では、「OJT業務開始後○日以内」とする運用が見られますが、期限が明文化されていない自治体もあります。
期限を過ぎてしまうと届出の受理日が「OJT開始日」として扱われ、修了時期が後ろにずれる可能性があります。
そのため、OJTを始める前に、必ず管轄自治体の障害福祉課に確認することが重要です。
④OJT届出で提出すべき書類一覧
OJT届出に必要な書類は自治体によって異なりますが、基本構成は共通しています
法務・人事担当者は、OJTを実施する事業所の自治体ウェブサイト(障害福祉課ページなど)から最新版の様式を必ずダウンロードしましょう。
以下は、神戸市と群馬県の提出例をもとにした一般的な書類構成です。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 1. OJT実施届出書 | 法人がOJTを開始する旨を届け出る主文書 |
| 2. 経歴書 | 受講者の職歴・資格の確認 |
| 3. 実務経験証明書(写) | 児発管の実務要件(3〜8年)を証明 |
| 4. 基礎研修修了証(写) | 受講済みの証明 |
| 5. 相談支援従事者初任者研修修了証(写) | 該当者のみ添付 |
| 6. 勤務の体制及び勤務形態一覧表 | 職員配置と勤務状況の証明 |
| 7. 資格証(写) | 該当資格の裏付け |
| 8. 返信用封筒 | 行政から控え返却を受けるために必要 |
⑤OJTの届出書提出でよくあるミス
児発管OJTの届出では、書類不備や誤解による遅延が頻発しています。
行政からの注意喚起や届出実務の傾向から、特に多いミスと対策をまとめました。
| よくあるミス | 結果 | 防止策 |
|---|---|---|
| ① 事後届出(期限超過) | 開始日が受理日扱いになり、修了が遅延 | 開始予定日と提出日を同時設定し、10日以内を徹底 |
| ② 6か月短縮要件の誤適用 | 届出無効・2年ルール適用 | 基礎研修前の実務経験を確認し、対象者を明確化 |
| ③ 様式違い(管轄外) | 書類受理不可 | 提出自治体ごとに最新様式マスターを管理 |
| ④ 添付漏れ | 返却・再提出 | チェックリストで事前確認 |
| ⑤ 行政審査の遅延 | 控の返却が1か月以上遅れる | 申込集中期(年度末など)を避け、早期提出 |
特に「事後届出」と「様式違い」は致命的ともいえます。
短縮対象者の届出が無効になるケースもあるため、法人の本部で必ず二重チェックを行いましょう。
パート・短時間勤務でも児発管OJTはできる?勤務形態別の扱いを詳しく解説
児発管OJTはパート・非常勤など多様な働き方の職員も、条件を満たせばOJTを受けることが可能です。
パート・非常勤でも児発管のOJT対象になる条件
児発管OJTの制度上、「常勤でなければならない」という規定はありません。
OJT実施届に添付する「勤務形態一覧表」にその職員の勤務形態が明記されていれば、パート・非常勤職員も正式なOJT対象者として認められます。
つまり、雇用形態ではなく”条件の充足”が判断基準となります。
パート・非常勤でもOJT(6か月短縮)を行うためには、以下の3条件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 適格性 | 基礎研修修了済みであり、基礎研修受講前に児発管の実務経験要件(3〜8年)を満たしていること |
| ② 実施体制 | 指導児発管の監督下でOJTを開始し、法人が10日以内に届出を提出・受理されていること |
| ③ 修了要件 | OJT期間中に「10件の個別支援計画(原案作成〜モニタリング)」を完了していること |
パート勤務であっても、これらの条件をすべて満たせばOJTを修了することが可能です。
ただし、勤務日数が少ない場合、10件のケース達成までの時間が延びる点に注意しましょう。
勤務時間が短い場合の注意点
OJTの起算日は、常勤・非常勤を問わず届出が行政に受理された日です。
ここから6か月以上の期間と10件のケース完了の両方を満たした時点で修了と認められます。
注意すべきは、「暦上の6か月」と「実務上の6か月」にギャップがある点です。
例として、週3日勤務のパート職員の場合を見てみましょう。
- 4月1日に届出受理 → 暦上では9月30日で6か月経過
- しかし、勤務日が少ないため、実際のケース経験が8〜9件しか完了していない場合OJTは未修了扱いとなり、10件を終えるまで(8〜9か月程度)継続が必要
つまり、6か月という期間は「最短目安」であり、勤務実態によっては延長されるという理解が正確です。
自治体によって異なる児発管OJT期間の扱いについて
OJTの期間計算や勤務形態の扱いには、自治体ごとの解釈差(運用差)があります。
たとえば、神戸市では実務経験の算定に「1年=従事期間1年以上かつ日数180日以上」という日数要件を採用しています。
このような基準をOJTに準用している自治体もあり、以下のような2パターンが想定されます。
| 勤務形態 | 期間の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 常勤職員 | 暦上の6か月を基準に修了可 | 10件達成で修了確定 |
| 非常勤職員 | 従事日数の累積(例:180日)で判断 | 勤務日数が少ないと期間延長の可能性あり |
このように、基準が異なるため、法人は必ず管轄の指定権者に確認する必要があります。
確認を徹底すれば、安心してOJTを進められます。
児発管OJTは、基礎研修で学んだ知識を実際の現場で活かすための大切な期間です。
6か月という短期間でも、支援計画の作成やカンファレンスなどを通じて、「理論を実務に変える力」を培っていきましょう。
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