2025年11月6日
【2025年最新】サビ管から児発管になるには?こどもの発達支援へのキャリア転向について
サービス管理責任者(サビ管)として経験を積み、「次は児童分野でこどもに関わりたい」「児発管の仕事にも挑戦したい」と考える方が増えています。
この記事では、サビ管から児発管へ転向する際の経験の扱い・研修受講条件・ステップをわかりやすく解説します。
両職種の違いを整理したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:サビ管と児発管の違いは?自分に合った働き方の選び方
サビ管から児発管になるには?必要な手順と全体の流れ
サビ管から児発管になるには、「資格を取り直す」のではなく、児発管として配置されるための追加要件を満たしていくことが必要です。
ここでは、転換の全体像を最初に整理します。
サービス管理責任者(以下、サビ管)は、障害者総合支援法に基づき、主に18歳以上の成人の自立支援や生活支援を担う専門職です。
一方で、児童発達支援管理責任者(以下、児発管)は児童福祉法に基づき、未就学児や就学児を対象とした「発達支援(療育)」と「家族支援」に特化した役割を担います。
同じ「管理責任者」という呼称がついていても、対象者・目的・根拠となる法律が異なるため、配置要件も別のものとして扱われます。
サビ管から児発管に転換する基本ステップ
サビ管経験者が児発管を目指す流れは、次のステップで進みます。
①実務経験要件の確認
自身の経歴が児発管の要件(相談支援業務の経験年数、直接支援の経験、保有資格など)を満たしているか照らし合わせます。
②基礎研修の確認
2019年度の制度改正以降は、サビ管と児発管の基礎研修が統一されています。サビ管として2019年度以降に基礎研修を修了している場合、児発管で再受講する必要はありません。未修了の場合は、児発管の要件に基づき受講します。
詳細記事:サビ管と児発管の研修制度の統合について
③OJT(みなし児発管)として現場に配置
基礎研修修了後、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスに「みなし児発管」として配置され、個別支援計画の原案作成などの業務に実際に携わります。
詳細記事:児発管のOJTとは?6か月の要件・実務内容を分かりやすく解説
④実践研修の受講・修了
OJTで経験を積んだうえで実践研修を受講し、修了することで、正式な児発管として配置可能となります。
⑤行政へ変更届を提出
法人が、児発管として配置するための変更届を都道府県や市区町村へ提出します。
OJT期間は原則2年以上※ただし例外措置あり
OJT期間は、基礎研修修了後から 原則「2年以上」 の実務従事が必要です。
ただし、基礎研修を受講する時点で すでに児発管の実務経験要件を満たしている人に限り、OJT期間を6か月以上に短縮できる特例があります。
この特例を適用する場合、法人はOJT開始時に 指定権者(市や県)へ事前に届出を行う必要があります。
届出がないまま6か月経過しても、実践研修の受講資格が認められない可能性があり、人員配置計画に大きな支障を生じるため、法人側の管理が非常に重要です。
6カ月のOJT短縮については以下の記事で詳しく解説しています
児発管のOJTとは?6か月の要件・実務内容を分かりやすく解説
支援の対象者が変われば、支援計画で重視する視点・関係機関との連携・家庭支援の必要性など、業務の組み立て方が大きく異なります。
そのため、キャリア転換ではOJTを通した経験の積み上げが欠かせません。
次の段落では、最も関心が高い「サビ管の経験は児発管の要件として有効か?」について、具体的に整理します。
サビ管の実務経験は児発管になるときに有効?
サビ管としてそれまで積んだ経験は、児発管の要件として認められるのでしょうか?
結論から言うと、サビ管としての経験が自動的に児発管へスライドされるわけではありません。
どの施設・どんな業務に従事してきたかによって、評価が大きく分かれます。
サビ管経験が児発管要件として有効になるケース
サビ管が、障がい者支援施設や障害福祉サービス事業所で、個別支援計画の作成やケース会議対応などの「相談支援業務」に従事していた場合、
その経験は児発管要件における「相談支援業務5年以上」へカウントできます。
たとえば・・・
| 従事していた分野 | 優先される業務内容 | 児発管要件としての扱い |
|---|---|---|
| 就労移行支援・生活介護・グループホームなど(障害福祉) | 個別支援計画の作成、会議対応など | そのまま有効(除外ルールにひっかからない) |
このパターンは、サビ管→児発管の転向が最もスムーズに進むケースです。
注意が必要な「高齢者分野」の経験について
一方で、サビ管・相談支援経験が高齢者分野のみで構成されている場合は注意が必要です。
児発管の要件には、「高齢者等支援業務を除いた上で3年以上の実務経験が必要」という除外ルールが定められています。
つまり、特養・老健・ケアハウスなど介護保険領域のみで経験を積んだ場合、児発管の実務経験としてはカウントされない可能性が高いです。
高齢者分野で10年経験を積んだとしても、児発管経験としては0年扱いとなるケースがありえます。
その場合、児発管を目指すためには、障害福祉または児童福祉の領域で3年以上の実務経験を積み直す必要があります。
これは、キャリア選択に大きく影響する重要ポイントです。
児童分野・特別支援学校などは有効なケースが多い
児発管の実務要件では、サビ管要件では含まれにくい以下の分野も有効な経験として認められます。
| 分野 | 対象施設例 | 扱い |
|---|---|---|
| 児童福祉分野 | 放課後等デイサービス、障がい児入所施設など | 有効(スムーズな転向が可能) |
| 特別支援学校(教員) | 特別支援学校の担任・支援担当 | 有効(ただし大学は除外) |
この分野に馴染みがある方は、児発管に自然に移行しやすいタイプです。
判断に迷ったら自治体に相談しよう
最終的な「有効・無効」の判断は、指定権者(都道府県・政令市)が行います。細かい要件は自治体ごとにことなるというのが実情です。
未確認のまま進めると、配置後に「基準違反(人員欠如)」とみなされ、事業所が指導・改善命令を受けるリスクがあります。
次の段落では、サビ管から児発管に転向するときの「働き方・責任・キャリアの変化」について具体的に整理していきます。
サビ管から児発管になる際、同法人での異動・兼務はできる?
サビ管から児発管へキャリア転向を「同じ法人内」で行うケースは多く見られますが、その際に最も重要なのは人員配置基準と減算リスクです。
結論から言うと、サビ管と児発管を1人の職員が兼務することは、原則できません。
ここでは、その理由と、異動手続きで必要な準備について整理します。
サビ管と児発管の兼務は原則NG!「専任かつ常勤」が求められる
サビ管と児発管は、そもそも根拠となる法律そのものが異なる職種です。
| 職種 | 根拠法 | 対象 | 主な事業所 |
|---|---|---|---|
| サビ管 | 障害者総合支援法 | 成人(18歳以上) | 就労移行・生活介護・グループホーム等 |
| 児発管 | 児童福祉法 | こども(18歳未満) | 児童発達支援・放課後等デイサービス |
児発管は、児童発達支援・放デイにおいて 「専任かつ常勤」 で配置することが義務づけられています。
ここでいう「専任」とは、その事業所における児発管業務に専ら従事することを意味します。
同法人内でのサビ管→児発管の異動でも、変更届は必須
同じ法人であっても、サビ管の配置事業所(例:生活介護など)から児発管の配置事業所(例:放デイ・児童発達支援)へ異動する場合は児発管の配置変更手続き(変更届)が必須です。
法人が提出する書類の例(異動日から10日以内)
- 変更届(第3号様式)
- 経歴書(参考様式4)
- 研修修了証(基礎・実践)
- 実務経験証明書(参考様式5)
- みなし配置の場合:実践研修受講誓約書(参考様式14)
- 免許・資格証の写し(該当者)
これらの提出書類はあくまで例であり、詳細は自治体ごとに変わるため必ず確認が必要です。
10日間の期間を過ぎると、「無資格者が児発管として配置されている」扱いとなり、人員基準違反になります。
最後に、サビ管から児発管になる際に活かせる経験について見ていきましょう。
サビ管経験を活かして児発管として活躍するには
サビ管で培ったスキルは、児発管の現場で 確実に強みとして活かせます。
サビ管経験が活きる3つのポイント
児童分野に適応するうえで新しい知識は必要ですが、支援を組み立てる「考え方の軸」は変わりません。
①アセスメントの思考プロセスが応用できる
サビ管として個別支援計画を立ててきた方は、本人の特性や生活背景、環境要因を整理しながら課題を見立てる「アセスメントの思考の流れ」が身についています。
この「情報整理 → 課題抽出 → 支援方針の組み立て」というプロセス自体は、児発管が行う児童のアセスメントにも共通しています。
児童分野では「5領域(健康・運動・認知・言語・社会性)」という枠組みを用いますが、考え方のベースは同じです。
そのため、分野が変わっても、サビ管時代に身についた思考の順序や整理の仕方は、児発管としての計画作成にそのまま活かせます。
②多機関連携のコーディネーション力が強みになる
サビ管は、利用者・家族・事業所・医療・企業など、様々な立場の人と協力しながら支援を調整する役割を担います。
相手ごとの立場やゴールの違いを理解しながら、合意形成や情報共有を進める力は、児発管にとっても非常に重要です。
児童の支援では、保育所、幼稚園、学校、児童相談所、療育センターなどと連携する場面が多くあります。
そのため、関係者の意向を丁寧にすり合わせ、協力体制をつくる力は、児発管としての大きな強みになります。
③PDCAによる計画管理能力が現場の安定につながる
サビ管の業務では、個別支援計画を立てて実行し、振り返り改善するというPDCAサイクルを自然に回すことが求められます。
この「計画を作って終わり」ではなく、「実施 → 評価 → 見直し」まで継続する視点は、児発管の役割にそのまま引き継がれます。
児発管は、個別支援計画の更新やモニタリングを通じて、支援の質を安定させる中心的な立場です。
そのため、計画の運用と改善を継続的に行う力は、事業所全体の支援レベルを底上げする重要な要素となります。
法人内で期待されるキャリア展開
児発管として専門性を確立した後は、以下のような発展的なキャリアもあります。
- 事業所の管理者を兼任し、運営の中核を担う
- 複数事業所を横断する統括児発管(スーパーバイザー)
- 法人内研修の教育担当・新人育成ポジション
このように、児発管として「法人運営・専門育成・地域連携」といった領域にキャリアを広げることができます。
サビ管で育てた「自立支援の視点」と、児発管で新しく得る「発達支援の視点」をどちらも持つ人は、学齢期から成人期までを支援できる専門家です。
これは法人にとっても、利用者にとっても、非常に価値の高い存在になります。
これまでの経験を土台にしながら、あなたらしい支援の形を少しずつ育ててください。
