2025年10月21日
児童指導員の将来性は「自分で育てる」もの!キャリアを築くためにできること
児童指導員の仕事は、社会的に需要が伸びている仕事であり将来性があります。
少子化のなかでも支援を必要とする子どもは増えており、国も人材の育成と待遇改善に力を入れています。
一方で、給与や働く環境などの課題もまだ多く、「長く続けられる仕事なのか」「この先どう成長していけるのか」と不安を感じる人も少なくありません。
この記事では、最新のデータや現場の声をもとに、児童指導員という仕事の将来性について整理していきます。
児童指導員の将来性は「高いが差が出る」職業である
結論から言えば、児童指導員の将来性は高いものの、働く環境やキャリアの築き方によって大きな差が出る仕事です。
支援を必要とする子どもが増え続けるという社会的な追い風がある一方で、待遇やキャリアの伸び方には課題も残っています。
こども家庭庁の統計によると、放課後等デイサービスや児童発達支援の利用者数はこの10年でおよそ2倍に増加しました。
少子化が進んでも、発達支援・家庭支援を必要とする子どもは増えており、専門職としての児童指導員は今後も安定して求められるといえます。
ただし、厚生労働省の調査によると、児童指導員の平均年収は360万円台から410万円と報告されており、全産業平均(約458万円)にはまだ届いていません。
出典:
厚生労働省|令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果
国税庁|令和4年分民間給与実態統計調査
つまり、仕事の需要は伸びているのに、待遇やキャリアの伸びは「本人の戦略次第」。
ここではその背景を、将来性を高める3つの視点とあわせて整理します。
児童指導員の将来性が高いと言われる主な理由
児童指導員が「将来性がある」と言われる理由には、3つの確かな要因があります。
① 社会的な需要の拡大
発達障害やグレーゾーンと呼ばれる子どもへの理解が広まり、支援を受ける家庭が増えています。放課後等デイサービスや児童発達支援センターの数も急増しておりこの伸びは今後も続く見通しです。
② 国の政策による後押し
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定では、経験豊富で常勤の児童指導員を配置する事業所が加算の対象となり、待遇改善とキャリアパスの明確化が進められています。
国がこの職種に「長期的な人材投資」を行っていることは、安定職種としての大きな裏づけになります。
③ 慢性的な人材不足
福祉分野の有効求人倍率は常に全産業平均を上回る高水準です。つまり、有資格者であれば就職先の選択肢が多く、失業リスクが非常に低い職業といえます。
需要が供給を上回る状態が続いているため、今後も人材確保のための待遇改善が期待できます。
児童指導員の給与・キャリアアップの「壁」
一方で、将来性を考える上で無視できないのが待遇とキャリアの格差です。
厚生労働省の調査によると、児童指導員を含む福祉職の平均年収は全産業より40〜80万円ほど低い水準にあります。
専門性が求められる一方で、業務量や責任に見合った給与体系が整っていない施設も少なくありません。
また、現場では日々の支援業務に追われ、スキルアップの時間が取りにくいという声も多く聞かれます。
キャリアの差は、「児発管」など上位資格を取得し管理職に進む人と、現場で止まってしまう人の間で大きく広がっています。
将来性を掴むかどうかは、環境選びと学び続ける姿勢に左右されるといえるでしょう。
児童指導員の仕事は今後10年でどうなる?
児童指導員全体の需要は確実に拡大していますが、今後10年では「伸びる分野」と「変化する分野」がはっきり分かれていくと予測されます。
伸びる分野・・・児童発達支援・放課後等デイサービス
まず、今後最も成長が見込まれるのが児童発達支援・放課後等デイサービスの分野です。
発達障害や発達の遅れがある子どもへの支援ニーズは年々高まっており、国の制度的支援もこの分野に集中しています。実際、利用者数・施設数・求人数はいずれも右肩上がりで推移しており、今後も継続的な人材需要が見込まれる領域です。
変化する分野・・・児童養護施設などの入所型施設
一方で、児童養護施設などの入所型施設は、性質の異なる変化を迎えています。
国は家庭的な養育環境を重視する方針を掲げ、里親やファミリーホームといった家庭養護の推進を進めているため、施設の総数は横ばいまたは微増にとどまると見られています。
ただし、入所する子どものケースはより複雑化・重度化しており、一人ひとりに合わせた支援を行える高い専門性を持つ児童指導員の重要性は高まっているのが現状です。
結論として、「児童指導員」という職業全体の将来性は明るいと言えます。
ただし、誰もが自動的に安定を得られるわけではなく、「成長分野で専門性を磨く人ほどキャリアの伸びが大きい」というのが私の考えです。
児童指導員という仕事の今を知ろう
児童指導員の将来性を正確に判断するためには、まず今この仕事がどんな現場で、どんな背景のもとに求められているのかを理解することが欠かせません。
この職種は少子化の時代にも関わらず、社会的ニーズが年々拡大している数少ない仕事です。その理由を知ると、「なぜ安定しているのか」「今後どこで活躍できるのか」が自然と見えてきます。
児童指導員が活躍する主な現場
児童指導員の勤務先は幅広く、支援対象となる子どもの年齢や特性によって仕事内容が大きく変わります。主な職場を以下に整理します。
①児童養護施設
家庭で生活が難しい子どもが入所し、生活支援や学習支援、心のケアを行う場。児童指導員は”家族に近い存在”として日常生活を支えます。
②放課後等デイサービス
障害のある小・中・高校生を対象に、放課後や長期休暇中に療育・学習・生活支援を行う通所施設。「障害児の学童保育」とも呼ばれ、現在もっとも急速に施設数が増えている分野です。
③児童発達支援センター・事業所
未就学の子どもが対象。日常生活の練習や集団活動への適応訓練を行い、早期療育の中心的な役割を果たします。保護者支援も重要な業務のひとつです。
④障害児入所施設
24時間体制で生活支援や自立訓練を行う施設。「福祉型(生活支援中心)」と「医療型(治療を含む)」に分かれます。
⑤乳児院
家庭での養育が難しい0〜1歳前後の乳幼児を養育する施設。専門的なケアが求められる現場です。
このように、児童指導員は「家庭で支援が届きにくい子どもたち」を支える多様な現場で活躍しています。
少子化でも需要が伸びる社会的背景
一見、子どもの数が減っているのに仕事が増えているのは不思議に感じるかもしれません。その理由は、社会構造の変化が”支援の必要性”を増やしているからです。
大きく2つの要因があります。
① 発達支援のニーズが急増している
文部科学省の調査によると、通常の学級に在籍しながら特別な支援を必要とする子どもの割合は、2012年の6.5% → 2022年には8.8%に上昇しています。
出典:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について
クラス35人中およそ3人が支援を必要としている計算です。つまり、発達支援は「特別なこと」ではなく、どの学校にも必要なサポートになりつつあります。
② 家族・地域のサポート機能が弱まっている
核家族化と共働き世帯の増加により、祖父母や地域が担っていた「子育てのサポート機能」が弱まりつつあります。
特に困難を抱える家庭ほど孤立しやすく、外部の専門機関による支援や関わりがより重要になっているのが現状です。
こうした社会構造の変化が、児童指導員が活躍する施設の需要を根本から押し上げています。
求人・施設数から見る「児童指導員の仕事が増えている理由」
データで見ても、児童指導員の需要は確実に増え続けています。厚生労働省の「社会福祉施設等調査」によると、
- 放課後等デイサービス:17,294カ所(2021年)→18,349カ所(2022年)[+6.1%]
- 児童発達支援事業所:14,359カ所(2021年)→15,310カ所(2022年)[+6.6%]
わずか1年でこれだけ増える業界は、福祉分野の中でも極めて珍しい伸び率です。
求人市場でもこの傾向は明確で、大手転職サイトでは「児童発達支援」関連だけで数万件規模の募集が常に掲載されています。
福祉職の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回る状態が続いており、就職先が見つからないリスクはほぼゼロと言ってよいレベルです。
つまり、児童指導員の仕事が増えているのは「一時的なブーム」ではなく、社会の構造変化そのものが生み出した、持続的で本質的な需要の増加だといえます。
児童指導員の将来性を左右する2つの視点
児童指導員の「将来性」という言葉を具体的に考えるには、それを支える2つの要素①社会的需要と国の制度、②キャリアパスの多様性に分けて見るのが分かりやすいでしょう。
① 社会的需要と国の支援制度の動き
児童指導員の将来性を最も強く支えているのは、社会全体の需要の増加と、それに合わせて制度が進化していることです。
その代表例が、2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定です。
この改定では「経験と専門性を持つ職員をしっかり評価する」仕組みが導入されました。
たとえば、勤続5年以上の常勤の児童指導員を配置する事業所には、「児童指導員等加配加算」で1日あたり187単位(定員10名以下の場合)が認められます。
一方で、経験5年未満の職員では107単位にとどまります。
つまり、経験を積み重ねていくほど事業所にとっての価値が高まり、「長く働くほど待遇が上がる」構造が制度的に組み込まれたということです。
これまで福祉職全体で課題だった「低賃金」「非正規雇用」といった問題に対して、国が本格的に”持続可能な職業”として改善を進めている表れです。
さらに、児童福祉法により多くの施設では児童指導員(または保育士など)の配置が法的に義務付けられています。これは、児童指導員という資格そのものが制度によって守られた安定職種であることを意味します。
② 児童指導員としてのキャリアパスの広がり
児童指導員は、現場のサポート職というだけでなく、専門職としてキャリアアップができる出発点でもあります。
代表的なのは、児童発達支援管理責任者(児発管)へのステップアップです。
児発管は、個別支援計画を作成し、チーム全体をまとめるリーダー的役割を担います。
児童指導員として5年以上の実務経験+指定研修の修了が必要ですが、その分、給与・役職ともに大きく上がり、マネジメント層への道が開かれます。
そのため、一度取得すれば、長期的に安定したキャリアを築きやすいという特徴もあります。経験を積んだ児童指導員ほど重宝される、希少性の高いポジションです。
そのほかにも、
・相談支援専門員(福祉サービス計画の作成・相談対応)
・児童福祉司(公務員として児童相談所などで勤務)
といった道もあります。
いずれも、児童指導員としての現場経験や対人支援スキルがそのまま活かせる職種です。
また、大規模法人などでは、現場の主任→施設長→エリアマネージャーへと組織運営やマネジメントのキャリアを積むケースも増えています。
児童指導員は福祉職の中でも、キャリアパスの幅が広い職種といえるでしょう。
「将来性のある児童指導員」とは?
ここまで見てきたように、児童指導員という職業は、社会的需要の拡大と制度的な後押しに支えられ、全体として高い将来性を持つ仕事です。
ここからさらに「将来性のある児童指導員」として成長していくためには、自分の価値を高め続ける姿勢が欠かせません。
この章では、これからの時代に求められるスキルと考え方、そして”将来性を自分で作る”ための実践的な方法を紹介します。
今後の現場で求められる児童指導員のスキル
児童福祉の現場は、子どもを取り巻く社会の変化とともに日々進化しています。
今後の児童指導員に特に求められるスキル・姿勢は次の4つと考えます。
① 発達障害への深い理解と専門的支援スキル
発達障害を持つ子どもへの支援は、いまや児童指導員の中心的な業務です。
感覚過敏やコミュニケーションの特性、行動上の課題を正しく理解し、応用行動分析(ABA)など科学的根拠に基づいた支援を行える専門性が、これからますます求められます。
発達支援の現場では、ただ”経験を積む”だけでなく、体系的に学び続ける姿勢が重要です。
そのため当社では、職員のスキルアップを支援する制度を整えています。
運動保育士など、キャリアアップにつながる資格取得を会社としてサポートしており、資格取得のための費用補助も実施。働きながら安心して学べる環境を整えています。
当社が所属するNPO法人が認定する「運動療育支援員資格認定制度」では、運動療育と発達障がい支援を体系的に学ぶことができ、現場での実践力と専門資格の両立を目指すことができます。
② チームで動く力(多職種・多機関連携)
子どもを支えるには、ひとりの力では足りません。保護者、学校の先生、医師、心理士、行政など、さまざまな立場の人と情報を共有しながら支援を進めていきます。
その中で児童指導員は、みんなをつなぐ”ハブ役”のような存在。人の話を聞き、要点をまとめ、わかりやすく伝える――そんなコミュニケーション力と調整力が欠かせません。
③ デジタルを味方にする力(ICT活用)
支援記録の電子化や、タブレットを使った療育、保護者とのアプリ連絡など、福祉の現場でもデジタル化がどんどん進んでいます。
実際に私たちこどもプラスの現場でも、施設運営には専用のソフトが使用されています。
児童指導員に求められるのは、機械に詳しいことではなく、「ITをうまく使って仕事をスムーズに進められること」です。
たとえば、記録をデータ化してチームで共有したり、教材をデジタルで作ったり。ICTを味方につけることで、支援の質もぐっと上がります。
④ 自分を守る力(セルフケアとレジリエンス)
児童指導員の仕事は、子どもと深く関わる分だけ、感情のエネルギーを使います。ときには思い通りにいかず、落ち込んだり悩んだりすることもあるでしょう。
そんなときに大切なのが、自分の心を整える力=セルフケアです。ストレスを感じたら誰かに話す、気持ちをリセットする習慣を持つなど、小さな工夫の積み重ねが「折れない自分」をつくります。
感情に飲まれず、立て直して前に進むレジリエンス(回復力)は、長く働くためのいちばんの武器になります。
スキルアップで「将来性を自分で作る」
安定した職種とはいえ、受け身で働いていてはキャリアの伸びは限られてしまいます。将来性を自らの手でつくるために、次の3つのステップを意識しましょう。
① 継続的な学習と自己研鑽
自治体や専門団体が主催する研修・セミナーへの参加、最新の支援技法の習得など、「学び続ける姿勢」こそがキャリアの燃料になります。特に発達支援やチーム連携に関する研修は、現場の即戦力に直結します。
② 上位資格の計画的な取得
キャリアの節目で、児童発達支援管理責任者・社会福祉士・精神保健福祉士といった上位資格を目標に設定すると、長期的な成長ルートを描きやすくなります。
資格には実務経験年数の要件があるため、早めに要件を調べ、「何年後にどの資格を取るか」を明確に計画しておきましょう。
③ 専門分野の確立(スペシャリティを持つ)
「この領域なら自分が一番」と言える強みをつくることは、組織内での価値を高めます。
たとえば、
- 強度行動障害への支援
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)の実践
- 保護者支援プログラムの企画・運営
といった分野で専門性を磨くことで、代替不可能な存在としてキャリアの安定につながります。
児童指導員の将来性は「最初から保証されているもの」ではなく、自分で作り出すものです。
社会の追い風と制度の支援を活かしながら、自らの知識・スキル・働き方を磨き続けることで、
その将来性は確かなものになります。
大切なのは、
こどもたちの未来を支える使命感 × 自分のキャリアを守る現実的な視点
この2つをバランスよく持ち続けることです。
児童指導員という仕事は、これからの社会で最も価値あるキャリアのひとつになるでしょう。