児発管は、福祉・教育・医療のいずれかの分野で実務経験を積み、段階的に研修を受けていくことで資格を得られる専門職です。
児発管になるには、一定の実務経験と段階的な研修の受講が必要です。
制度の仕組みは少し複雑に見えますが、順を追って整理すれば理解しやすくなります。
この記事では、児発管になるまでの流れをわかりやすく解説します。
※児発管の具体的な仕事内容や役割を知りたい方は、
こちらの記事「児発管とは?仕事内容をわかりやすく解説」をご覧ください。
児発管になるための3つの要件(実務経験・推薦・研修)
児童発達支援管理責任者(児発管)になるには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
要件①一定の実務経験を積むこと
児発管になるには、まず福祉・教育・医療のいずれかの分野で実務経験を積むことが基本条件です。
- 有資格者(保育士・社会福祉士・教員免許など)は5年以上(900日以上)
- 無資格者は8年以上(1,440日以上)
この「実務経験」には、こどもや障がいのある方への直接支援、または相談支援のいずれかが含まれていなければなりません。
要件②勤務先事業所からの推薦を受けること
児発管研修は、基本的に勤務先を通じた申し込み制です。
多くの自治体では、個人での申し込みを受け付けておらず、法人代表者または管理者による推薦書が必要になります。
そのため、資格取得を目指す際には、早い段階で「児発管を目指したい」と職場に伝え、推薦を得る準備をしておくことが大切です。
施設によっては、児発管候補としてのキャリアパスを整備しているところもあります。
また、転職活動の際には「資格取得支援制度あり」「児発管候補歓迎」などの求人を選ぶと、推薦を受けやすくスムーズに研修に進めることができます。
要件③指定の研修(基礎研修・実践研修)を修了すること
実務経験と推薦を得たら、次に都道府県が実施する基礎研修・実践研修を受講します。
この研修は「サービス管理責任者等研修」に含まれており、法律・支援計画・チームマネジメントなど、児発管として必要な知識を体系的に学びます。
- 基礎研修:合計26時間(講義+演習)
- 実践研修:合計14.5時間(演習中心)
児発管になるための制度は随時見直されているため、最新情報は都道府県の公式ページで確認することが欠かせません。
児発管になるために必要な「実務経験」の基本
児童発達支援管理責任者(児発管)になるには、資格や職種に応じて定められた実務経験年数を満たす必要があります。
この実務経験は、福祉・教育・医療などの分野での直接支援または相談支援業務に従事した期間を指します。
有資格者は「5年以上」、無資格者は「8年以上」
児発管の受講資格を得るには、次のように職種・資格により必要な年数が異なります。
| 区分 | 必要な実務経験年数 | 主な該当資格 |
|---|---|---|
| 有資格者 | 5年以上(900日以上) | 保育士・社会福祉士・教員免許・看護師・理学療法士など |
| 無資格者 | 8年以上(1440日以上) | 資格なし・介護職など |
この「1年」は暦年ではなく、年間180日以上勤務した年を1年としてカウントします。
そのため、パートタイム勤務や非常勤職員でも、年間180日以上勤務していれば常勤と同様に1年分の実務経験として認められます。
全てのルートに共通する必須条件「障害児・者支援3年以上」
有資格・無資格を問わず、障がい児または障がい者の支援に関わった実務経験が3年以上(540日以上)含まれていなければなりません。
たとえ看護師や介護職として長年勤務していても、障害福祉に直接関わっていない期間は要件に含まれません。
・看護師として一般病棟勤務20年 → 要件を満たさない
・放課後等デイサービスで5年勤務 → 要件を満たす(児発管受講可能)
この「障害児・者支援3年以上ルール」は、児発管が発達支援・療育に特化した専門職であることを示しています。
次の章では、職種・資格ごとに、最短で児発管を目指すための具体的ルートを紹介します。
【職種別】最短で児発管になるには?
児発管になるまでに必要な期間やステップは、これまでの職種・資格の種類によって異なります。
ここでは代表的な4つのルートを紹介します。
保育士・児童指導員から児発管になる場合
保育士資格または児童指導員任用資格を持つ方は、最短5年の実務経験で児発管を目指すことができます。
勤務先が放課後等デイサービスや児童発達支援事業所であれば、そのまま勤務実績をカウントできるため、もっとも短期間で資格取得を実現しやすいルートです。
①必要な実務経験
- 実務経験5年以上(900日以上)
- うち3年以上(540日以上)は、障がい児支援に直接関わる業務であること
放課後等デイサービス/児童発達支援/障害児入所施設/福祉型児童施設 など。
②研修とOJTの流れ
| ステップ | 内容 | 受講・実施のポイント |
|---|---|---|
| 基礎研修の受講 | 3年目以降に受講可能。福祉・教育分野での実務経験を積みながら受講資格を得る。 | 原則として勤務先法人の推薦が必要。個人申込不可の自治体が多い。 |
| OJT(実務研修) | 正式な児発管の指導のもとで、個別支援計画の作成・会議運営・モニタリングに6か月以上従事。 | OJT届出書を提出すれば、従来2年のOJT期間を6か月に短縮可能(2023年改正)。必ず開始前に届出を行う。 |
| 実践研修の修了 | OJT期間中または修了後に受講し、児発管としての配置が可能になる。 | 実践研修ではチーム運営・支援計画の管理・人材育成など、現場マネジメントを学ぶ。 |
③最短ルートの目安
最短約5〜6年で児発管として配置可能。
このルートは、日々の支援業務と並行して研修を進められるのが大きな利点です。
現場での経験を積みながら、個別支援計画やチーム運営の力を体系的に身につけていくことで、児発管として自然にステップアップできるキャリア形成が可能です。
関連記事:保育士から児発管になれる?実務経験の扱いと必要条件を解説
看護師・療法士など医療職から児発管になる場合
看護師、理学療法士、作業療法士などの医療系国家資格を持つ方も、最短5年の実務経験で児発管を目指せます。
ただし、勤務先の種類によっては「障がい児支援の実務」としてカウントされない場合があるため、勤務内容の確認が非常に重要です。
①必要な実務経験
- 実務経験5年以上(900日以上)
- うち3年以上(540日以上)は、障がい児支援や医療的ケア児支援の現場であること
重症心身障害児施設/医療型児童発達支援センター/訪問看護ステーション(児童支援対応)/小児在宅医療など。
一方で、一般病棟/高齢者介護施設/成人リハビリ特化型クリニックでの勤務は原則としてカウント対象外になるので注意が必要です。
②研修とOJTの流れ
| ステップ | 内容 | 受講・実施のポイント |
|---|---|---|
| 基礎研修の受講 | 3〜4年目以降に受講可能。医療職としての経験を活かしながら、福祉分野の知識を体系的に学ぶ。 | 医療法人所属の場合、法人代表者による推薦書提出が必要な自治体が多い。 |
| OJT(実務研修) | 正式な児発管のもとで、個別支援計画の原案作成・ケース会議・家族支援などに従事。 | OJT届出書の提出で、2年→6か月の短縮が可能(2023年改正)。医療から福祉へ転じる場合は必須。 |
| 実践研修の修了 | OJT中または終了後に受講。障がい児支援のマネジメントやチーム運営を学ぶ。 | 医療職としての強みを活かし、福祉職員との連携スキルを強化する内容。 |
③最短ルートの目安
最短約5〜7年で児発管として配置可能。
このルートでは、医療知識とリハビリ視点を活かして児童支援に転じることができ、特に医療的ケア児を支援する事業所では強く求められる人材となります。
現場における医療・福祉の橋渡し役として活躍できる点が、このルートの大きな魅力です。
教員免許を持つ人が児発管になる場合
教員免許(小学校・中学校・高等学校など)を保有している方は、法的には児童指導員任用資格者とみなされます。
そのため、保育士と同じカテゴリーに分類され、学校での勤務経験も実務経験として扱われるのが一般的です。
ただし、扱いには自治体差があるため、必ず受講前に指定権者(都道府県・市町村)へ確認しましょう。
関連記事:教員免許を持っていれば児童指導員として働くことができます!
①必要な実務経験
- 実務経験5年以上(900日以上)
- うち3年以上(540日以上)は、障がい児支援に関連する業務であることが望ましい
学校(特別支援学級・支援学校)/児童発達支援/放課後等デイサービス/福祉型児童施設など。
②研修とOJTの流れ
| ステップ | 内容 | 受講・実施のポイント |
|---|---|---|
| 基礎研修の受講 | 教員としての勤務を3〜5年積んだ後に受講可能。教育現場の経験を活かしながら福祉制度・支援計画の基礎を学ぶ。 | 多くの自治体で法人推薦が必要。教育機関から福祉分野への転職時に申請するのが一般的。 |
| OJT(実務研修) | 放課後等デイサービス等に転職後、正式な児発管のもとで支援計画の作成や会議運営に従事。 | OJT届出書の提出で2年→6か月へ短縮可能(2023年改正)。初任期からの計画的な移行が鍵。 |
| 実践研修の修了 | OJT期間中または終了後に受講。福祉現場での支援マネジメントやチーム調整を学ぶ。 | 教育と福祉の両視点を統合したケース共有・演習が中心。 |
③最短ルートの目安
最短約5.5年で児発管として配置可能。
普通学級での指導経験も、自治体によっては実務経験として評価される場合があります。そのため、勤務期間や担当学年、支援内容などを記録に残しておくことが大切です。
一方、特別支援学級や特別支援学校での勤務経験は、ほとんどの自治体で確実に実務要件として認められます。
教育分野で培った支援スキルを福祉現場で活かすためにも、経験内容を明確に整理しておくとよいでしょう。
無資格・介護職から児発管を目指す場合
福祉や教育の国家資格を持たない場合でも、一定の実務経験を積むことで児発管を目指すことが可能です。
介護職や支援スタッフとして障がい児・者の支援に関わる経験を重ねることで、研修受講資格を得られます。ただし、有資格者に比べて求められる実務年数が長くなるため、計画的にキャリアを積むことが重要です。
①必要な実務経験
- 実務経験8年以上(1,440日以上)
- うち3年以上(540日以上)は、障がい児支援または児童発達支援に関わる業務であること
放課後等デイサービス/児童発達支援/障害福祉サービス事業所/生活介護施設/グループホームなど。
介護職として高齢者施設に勤務している場合は、その経験のみでは児発管の実務要件を満たしません。障がい児・者支援分野での勤務期間を追加で積む必要があります。
②研修とOJTの流れ
| ステップ | 内容 | 受講・実施のポイント |
|---|---|---|
| 基礎研修の受講 | 6〜7年目以降に受講可能。無資格者でも実務経験の要件を満たせば受講できる。 | 法人代表者による推薦書の提出が必須。個人での申込は不可。 |
| OJT(実務研修) | 正式な児発管のもとで、支援計画の作成・会議運営・家族支援などに従事。 | OJT届出書の提出で2年→6か月の短縮が可能(2023年改正)。転職時は届出忘れに注意。 |
| 実践研修の修了 | OJT中または修了後に受講。児発管として配置可能になる。 | 実践研修では、チーム運営・支援計画管理・人材育成などを実務に即して学ぶ。 |
③最短ルートの目安
最短約8.5〜9年で児発管として配置可能。
無資格から児発管を目指す場合は、資格要件を満たすまでの期間が長くなる分、計画的にキャリアを積む意識が大切です。
まずは、障がい児や発達支援に関わる職場で経験を重ね、業務内容を把握しながら少しずつ専門性を高めていきましょう。
そのうえで、途中で保育士や社会福祉士などの資格を取得すれば、実務要件が短縮されるケースもあり、より早く児発管を目指せます。
次の章では、実務経験の細かいルールを確認していきましょう。
児発管になるための実務経験の細かいルールを確認しよう
児発管の実務経験は、勤務日数・業務内容・施設区分・証明書類の整備状況など、いくつかの細かい条件があります。
一つずつ確認していきましょう。
実務経験の基本ルール「1年=180日以上」
厚生労働省の事務連絡により、児発管における「1年」の実務経験は暦年ではなく、1年間に180日以上勤務していることを基準としてカウントします。
- 5年要件:900日以上(180日 × 5年)
- 8年要件:1,440日以上(180日 × 8年)
勤務日数の基準を満たしていれば、1日の勤務時間は問われません。
そのため、非常勤やパート勤務でも年間180日以上あれば常勤と同様に1年として認められます。
複数施設・職種の経験は「通算」できる
実務経験は、1つの事業所での継続勤務に限られません。以下のようなケースでは、複数の勤務を合算して実務年数に含めることができます。
- 児童発達支援事業所で3年+放課後等デイサービスで2年 → 合計5年
- 直接支援業務2年+相談支援業務3年 → 合計5年
ただし、勤務していた施設が児発管の対象となる障害児・障害者支援分野の事業所であることが前提です。(例:老人介護施設や一般医療機関での経験は該当しません)
ブランク(離職期間)はマイナスされない
出産・育児・介護などの理由で一時的に離職していた期間(ブランク)は、それ以前の勤務実績が無効になることはありません。
「通算」とは、実務経験を計算する際に、連続した勤務期間である必要がないことを意味します。したがって、「従事した日数の累計」で判断されます。
そのため、再就職後に同分野での業務を再開すれば、過去の経験も含めてカウント可能です。再就職を予定している場合は、以前の勤務先から従事証明書を取り寄せておきましょう。
実務経験を証明するために必要な書類
児発管の研修受講には、実務経験を証明する書類の提出が必須です。主な書類と準備のポイントは以下の通りです。
| 書類名 | 内容・目的 | 提出元・注意点 |
|---|---|---|
| 従事証明書(就労証明書) | 実務経験年数・業務内容を証明する書類 | 勤務先法人が発行。過去分も含め複数提出可能 |
| 推薦書 | 受講を承認する法人代表または管理者の署名が必要 | 個人申込不可の自治体が多いため事前相談が必要 |
| OJT届出書 | 実践研修に進む際に、法人がOJTの実施を自治体に届け出る書類 | 自治体により様式・提出時期が異なる |
特にOJT届出書は、2023年の改正で導入された「OJT期間6か月短縮制度」を利用する際の必須書類です。
この届出が自治体に受理されていない場合、6か月での修了が認められず、従来どおり2年間の実務期間が必要となるため注意が必要です。
提出タイミングや様式は自治体によって異なりますが、OJTを開始する前に提出しておくことが原則です。
次の章では、児発管の基礎研修について解説していきます。
児発管の基礎研修の内容と受講方法【2025年版】
児発管になるには、まず実務経験の要件を満たしたうえで基礎研修に進むのが基本です。
児発管の基礎研修は、これまでの「合計26時間」という一律の時間制から、
オンライン学習(eラーニング)+ライブ演習(対面またはオンライン)のハイブリッド形式へと大きく変化しました。
全国的にこの新モデルが採用されており、働きながら自分のペースで受講できる環境が整っています。
目的は、制度や理論を学ぶだけでなく、現場での支援計画づくりやチーム連携を実践的に理解することにあります。
eラーニング(オンデマンド学習)
講義部分は、指定された期間(例:14日間)内に
自分のペースで動画教材を視聴し、確認テストや課題を提出する形式です。
- 基礎研修ではおおむね約7時間程度がこのeラーニングに割り当てられています。
- 実践研修・更新研修でも同様に、約3時間前後がオンライン講義として設定されることが多いです。
オンデマンド形式により、全国から勤務の合間や休日を利用して受講でき、地理的・時間的な制約が大幅に緩和されました。
ただし、指定期間内にすべての講義・課題を修了する必要があり、依然として自己管理力が求められます。
ライブ演習(集合またはオンライン形式)
講義で得た知識を実践的に活かすために、
グループワーク・事例検討・ロールプレイなどの演習が必ず含まれます。
この演習は指定日時に実施され、以下のいずれかで受講します。
- 集合形式(会場に集まる研修)
- オンライン形式(Zoom等を利用)
期間は1〜2日間が一般的で、講師や他の受講者と意見交換しながら、実践的なケース対応力を磨きます。
近年では、学研や日本福祉アカデミーなどの指定事業者が「オンデマンド+オンライン演習」という組み合わせを採用しており、全国どこからでも受講しやすい体制が整いつつあります。
児発管基礎研修のカリキュラム
基礎研修の内容は、令和元年(2019年)に見直された全国統一の標準カリキュラムに基づいています。主な科目は以下の通りです。
- 障害福祉制度・児童福祉法の基礎
- 発達障がい・知的障がいの理解
- サービス提供プロセスと個別支援計画の作成手順
- チーム支援・マネジメント・リスク管理
- 関係機関との連携と記録の在り方
また、一部の講義には「相談支援従事者初任者研修」の内容(約11時間相当)が組み込まれ、より体系的に支援の基礎を学べる構成となっています。
オンライン研修を受ける際の注意点
ハイブリッド研修への移行により、自宅や職場から学習できる柔軟性が高まる一方、受講者には以下のような新たなスキルや準備も求められます。
- 安定したインターネット環境とPC、ヘッドセット等の準備
- ZoomやOfficeツールなど、基本的なデジタル操作への慣れ
- 自主的に進捗を管理し、締切を守る自己管理力
eラーニングでは動画視聴や確認テストの提出期限が設定されており、「受講完了報告」や「修了テスト未提出」による修了取り消しの例もあります。
また、ライブ演習はカメラ・マイクをONにしたリアルタイム参加が原則であり、欠席や遅刻は再受講扱いとなる場合もあります。
事前に受講準備を整えることで、研修の修了を目指しましょう。
基礎研修を修了すると、実際の事業所でのOJT(実地研修)に進みます。
次の章で詳しくみていきましょう。
児発管のOJT期間(6か月〜2年)について【2025年版】
児発管の基礎研修を修了すると、次のステップはOJT(実地研修)です。
児発管としてのOJTは、実際の現場で支援計画の立案やモニタリング、職員との連携を学びます。
これらは、現場リーダーとして必要な判断力・マネジメント力を育てることを目的としています。
OJTの期間は原則2年間ですが、2023年6月30日付で厚生労働省およびこども家庭庁の告示改正により、一定の条件をすべて満たした場合に限り、6か月への短縮が正式に認められました。
【標準ルート】OJT2年間で身につけること
通常のOJT期間はおよそ2年間です。
この間に、正式に配置された児発管の指導・監督のもとで、候補者は事業所で実務を経験します。
個別支援計画の作成・見直し、会議運営、職員との調整を通して、児発管として必要な実践力を段階的に身につけていきます。
主な学びの内容は以下の通りです。
- 個別支援計画の立案・モニタリング
- アセスメントや保護者面談への同席
- 他職種・関係機関との情報共有
- 記録作成や支援会議の準備
- チーム運営の補佐
2年間のOJTでは、単なる補助業務ではなく、「支援の流れを一通り自分で管理できる状態」に到達することが求められます。
この段階を経て初めて、児発管として正式な配置が可能になります。
【特例ルート】6か月短縮制度の正式施行と要件
2023年6月30日付の厚生労働省およびこども家庭庁による告示改正により、OJT期間を6か月に短縮できる特例制度が正式に施行されました。
ただし、この制度は誰でも利用できるものではなく、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
①実務経験の先行充足
基礎研修の受講を開始する時点で、児発管として求められる実務経験(3〜8年)をすでに満たしていること。
②特定のOJT業務への従事
基礎研修修了後、個別支援計画の作成に関する一連の業務に6か月以上従事すること。
厚労省Q&Aでは「少なくとも概ね10回以上行うことを基本とする」と補足されています。
③指定権者への事前届出
上記の業務に従事することについて、管轄する都道府県または市町村へ事前に届出を行っていること。
届出の提出はOJTの開始前、実施中、実施後のいずれの時点までに提出するかは自治体によって大きく異なります。ですが、基本的にはOJT開始前に提出することが望ましいでしょう。
届出が未提出の場合はOJTの実務が無効扱いになることもあるため、法人・本人双方で確認と記録を徹底する必要があります。
届出は法人(管理者)が責任を持って提出しますが、児発管候補者本人も提出状況を必ず確認しましょう。
関連記事:児発管OJTとは?6か月の要件・実務内容を分かりやすく解説
OJTで現場経験を積んだ後は、いよいよ「実践研修」へと進みます。
児発管の実践研修の内容について
実践研修は、児発管としての「現場運営と支援管理の力」を高めるための研修です。
基礎研修で学んだ制度や理論を踏まえ、実務に直結する内容が中心となります。
受講対象は、基礎研修を修了し、一定期間(原則2年・特例6か月)のOJTを終えた方です。
実践研修は全体で14.5時間の講義・演習が行われ、主に以下のテーマを体系的に学びます。
- 個別支援計画の作成と見直しの手順
- アセスメントの実施方法と記録の標準化
- 支援会議の進行とチーム内調整の方法
- スタッフ育成や指導・助言の実践
- 地域や関係機関との連携方法
これらを通して、事業所運営を支えるリーダーとしての実践力を培います。
児発管実践研修のカリキュラム
実践研修は、講義とグループワークを組み合わせた参加型プログラムで構成されます。
受講者は、実際に自分が関わるケースを想定しながら、他職種との協働や計画の改善方法を学びます。
| 学習領域 | 内容 |
|---|---|
| アセスメントと支援計画 | 利用者の特性を踏まえた支援計画の立案・評価・記録 |
| チームマネジメント | 職員間の連携・助言・フィードバック方法 |
| 地域・多職種連携 | 医療・教育・行政との情報共有と協働体制づくり |
| 事業所運営・法令遵守 | 記録管理・事故防止・倫理・リスクマネジメント |
各セッションでは、障害福祉分野の最新動向を取り上げながら、現場で実践できるスキルを身につける構成です。
学んだ内容をその日のうちにディスカッションやケース検討で確認する構成になっており、現場経験が浅い人でも、自分の業務に置き換えて理解を深めやすいプログラムです。
実践研修を修了すると、事業所で正式に児発管として配置される資格が得られます。
ただし現場では、支援の質を高め続ける姿勢が求められます。そのために設けられているのが、定期的な「更新研修」です。
次の章で詳しく解説します。
児発管の更新研修の仕組みと受講要件について
児発管は資格取得からおおむね5年ごとに更新研修を受講し、最新の支援方法や制度改正への理解を深める必要があります。
更新研修は、これまでの実務を振り返りながら、支援の質向上と人材育成を図ることを目的としています。
特に、現場でのマネジメントやスーパービジョン(職員指導)のあり方を学び直す機会として重要な位置づけにあります。
研修内容とカリキュラム概要
更新研修は、講義と演習を組み合わせた約13時間のプログラムで構成され、主に以下のテーマが扱われます。
| 区分 | 内容 | 時間 |
|---|---|---|
| 講義 | 障害福祉分野の最新動向 | 約1時間 |
| 講義・演習 | サービス提供の自己検証と改善策 | 約5時間 |
| 講義・演習 | 支援の質向上とスーパービジョン | 約7時間 |
講義では法制度や国の方針改定を整理し、演習では実際のケースを通じて現場改善や職員指導の方法を検討します。
このプログラムにより、児発管としての支援力・組織運営力の両面を再確認することができます。
受講要件と対象者
更新研修を受講できるのは、以下のいずれかに該当する方です。
- 過去5年間のうち2年以上、児童発達支援管理責任者・サービス管理責任者・相談支援専門員として実務経験がある方
- 現在、児発管・サービス管理責任者・相談支援専門員として勤務している方
もし、一定期間職を離れた場合や、業務からブランクがある場合は、再度基礎・実践研修の受講が求められることがあります。
資格を維持し続けるためには、実務を継続しながら定期的に研修を受けることが必須です。
関連記事:児発管の更新研修とは?制度の概要と受講までの流れをわかりやすく解説
児発管研修にかかる費用は?自治体と民間の違いを比較【2025年版】
児発管研修の費用や開催頻度は、研修の実施主体によって大きく変わっています。
自治体が行う公的研修は費用が安い代わりに開催回数が少なく、
民間研修は受講料が高いものの、回数が多くオンラインで受けやすいという特徴があります。
自治体が実施する「公的研修」は無料または低料金で受けられる
多くの自治体では、障害福祉人材の育成を目的に、無料または低額での研修を提供しています。
たとえば東京都では、都内の事業所を対象に以下の研修をいずれも無料で実施しています。
- 基礎研修(定員:約1,200名)
- 実践研修(定員:約1,600名)
また、京都府(3,000〜4,500円)や和歌山県(5,000〜10,000円)など、委託団体を通じて比較的安価に受講できる地域もあります。
ただし、公的研修は年1〜2回の開催に限られることが多く、申込期間も短いため、人気のある地域では定員超過となるケースが少なくありません。
早めに募集情報を確認し、申込時期を逃さないようにしましょう。
「民間研修」はオンライン受講も可能
近年は、公的研修に申し込めなかった方や、より早く資格取得を目指す方のために、民間のオンライン研修が全国的に広がっています。
代表的な事業者と費用の目安は次の通りです。
| 提供主体 | 研修種別 | 費用(税込) | 実施頻度・形式 |
|---|---|---|---|
| 学研LX | 基礎研修 | 49,500円 | 年間複数回/オンデマンド+Zoom演習 |
| 学研LX | 実践研修 | 33,000円 | 年間複数回/同上 |
| 日本福祉アカデミー | 基礎研修 | 約25,000円 | 年間複数回/ハイブリッド形式 |
| 東北福祉カレッジ | 実践研修 | 約33,000円 | 年間複数回/オンライン+集合選択可 |
| 大阪府連携団体 | 基礎研修 | 約26,000円 | 通年で複数団体が開催 |
民間研修は、eラーニング部分を好きなタイミングで開始できるなど、働きながら受講しやすい柔軟な仕組みが支持されています。
地域によって研修費用がこんなに違う?今後の課題と受講のポイント
児発管研修は、地域によって費用や受けやすさに大きな差があります。
東京都のように無料で受講できる自治体もある一方で、
地方では民間研修しか受けられず、受講費が4〜5万円以上かかることもあります。
こうした地域格差は、児発管になりたい人のチャンスや人材の確保にも影響します。
今後は、どの地域でも公平に学べる体制づくりや、受講費の統一化が課題となっています。

