福祉業界は「離職率が高い」「人間関係が大変」といったネガティブなイメージを持たれがちです。

しかし実際のデータを見てみると、必ずしもすべての職場がそうとは限りません。

一方で、パワハラや長時間労働といった深刻な課題が一部に存在するのも事実です。

本記事では、介護・障害者支援・児童福祉など福祉業界の離職率をデータで分析し、安心して働ける職場を見つけるためのポイントをわかりやすく解説します。

「福祉は離職率が高い」は本当?業界比較で見る実態

「福祉業界は離職率が高くて大変」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか?

しかし、厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」を詳しく見てみると、実は意外な事実が浮かび上がってきます。

下の表は、令和5年の最新データに基づく各業界の離職率を比較したものです。

業界 離職率 特徴
生活関連サービス業・娯楽業 20.8% 最も高い離職率
サービス業(他に分類されないもの) 19.3% 高い水準
宿泊業・飲食サービス業 18.2% 依然として高水準
全産業平均 15.0% 基準となる数値
医療・福祉業界 14.6% 平均を下回る
卸売業・小売業 14.1% 平均的水準
建設業 10.1% 比較的低い
製造業 9.7% 安定した水準

出典元:厚生労働省|令和5年雇用動向調査結果の概況

このように、福祉業界の離職率14.6%は、実は全産業平均の15.0%を下回っています。

生活関連サービス業・娯楽業の20.8%と比較すると、なんと6%以上も低い水準です。

ではなぜ、福祉は離職率が高いというイメージが定着しているのでしょうか。

その背景には、福祉業界特有の「入職者数が多い一方で離職者数も多い」という状況を指します。

さらに注目すべきは、新規採用者の定着状況です。

厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」調査によると、全国の新規学卒者の就職後3年以内離職率は、大学卒で34.9%、高校卒で38.4%となっています。

これは、約3人に1人以上が早期に離職している状況です。

特に事業所規模別では、従業員5人未満の事業所で大学卒59.1%、高校卒62.5%と極めて高い離職率となっています。

これは、業界全体の離職率が平均的であっても、特に新規採用者の定着が大きな課題であることを示しています。

出典元:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)

つまり、多くの人が福祉業界に入ってくる一方で、同じくらい多くの人が辞めていきます。

そのため、常に求人が出ている状態になり、「福祉は離職率が高い業界」という印象を与えているのです。

それではなぜ、福祉は離職率が高いというイメージが生まれるのでしょうか。

なぜ「福祉=離職率高い」というイメージが生まれるのか?

福祉業界の離職率が実際には平均的であるにもかかわらず、なぜ「離職率が高い」というイメージが定着しているのでしょうか。

この背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。

メディア報道が作り出すイメージと現実のギャップ

まず、メディア報道の影響は無視できません。

介護施設での虐待事件やパワハラ問題が報道される際、センセーショナルな取り上げ方がされることが多く、これが「福祉=大変な職場」というイメージを強化しています。

一方で、日々の地道な支援や職員の成長、利用者の笑顔といったポジティブなニュースはあまり注目されません。

また、「3K(きつい・汚い・危険)」という昔からのイメージも根強く残っています。

確かに福祉の仕事には体力的・精神的な負担がありますが、これは他の多くの職業にも共通することです。

しかし、福祉業界だけが特別に「きつい」仕事として語られることが多いのが現状です。

福祉業界で働く人が直面する独特な悩み

福祉業界で働く人たちが「辞めたい」と感じる理由は、他の仕事と共通するものもあれば、福祉ならではの特殊な事情もあります。

どの業界でも共通する悩み

まず、どの業界でも起こりがちな問題があります。

  • 職場の人間関係がうまくいかない
  • 給料が思ったより少ない
  • 残業が多くて休みが取れない
  • 将来のキャリアアップが見えない

実際、介護労働実態調査では「職場の人間関係の問題」が離職理由のトップになっており、これは福祉業界だけの問題ではありません。

福祉業界ならではの特別な負担

しかし、福祉の仕事には他の業界にはない特殊な大変さがあります。

一つ目は「心の負担」です。

利用者やそのご家族に対して、常に思いやりを持って接し、相手の気持ちを理解しようと努めなければなりません。

この「感情労働」と呼ばれる負担は、想像以上に心を疲れさせます。

喜怒哀楽を表に出さず、いつも笑顔で接することを求められるのは、とても大変なことです。

二つ目は「責任の重さ」です。

高齢者や障がいのある方、こどもたちの命や安全を預かる責任は非常に重いです。

「もし何かあったらどうしよう」という緊張感の中で働き続けることになります。

三つ目は「社会からの評価の低さ」です。

福祉の仕事は高度な専門知識や技術が必要にもかかわらず、「優しい気持ちがあれば誰でもできる仕事」と誤解されがちです。

この社会の認識と現実のギャップが、職員のやる気を削いでしまうことがあります。

同じ福祉でも職場によってこんなに違う労働条件の誤解

福祉業界内でも、運営主体や規模によって労働条件に大きな格差が存在します。

これが業界全体のイメージを悪化させる要因の一つとなっています。

例えば、保育園では公立と私立で離職率に約2倍の差があります。

公立保育園の職員は公務員として安定した雇用条件で働けますが、

私立保育園では経営状況によって待遇に大きな差が生まれます。

法人の規模による違いも大きく、大規模法人では研修制度やキャリアパスが充実している一方で、

小規模法人ではアットホームな雰囲気はあるものの、制度面で課題を抱えていることが少なくありません。

また、都市部と地方の給与格差、求人倍率の地域差も存在し、これらの格差が「福祉業界は条件が悪い」という印象を与える一因となっています。

福祉業界内の格差や問題について理解したところで、実際の離職理由を詳しく見てみましょう。

福祉業界で職員が離職する本当の理由

実際に福祉業界で働く職員がなぜ離職してしまうのか、その具体的な理由を詳しく見てみましょう。

離職理由を正しく理解することで、安心して働ける職場の条件も見えてきます。

新人職員が直面する「最初の壁」

福祉業界では、特に入職から1年以内の離職が大きな課題となっています。

理想と現実のギャップ

新人職員が最初に直面するのは、学校で学んだ理想と現場の現実とのギャップです。

利用者への支援方法について学校では理論的に学びますが、実際の現場では一人ひとりの個性や状況に応じた臨機応変な対応が求められます。

教科書通りにいかない場面が続くと、「自分には向いていないのではないか」と不安になってしまうのです。

職場の人間関係に馴染めない

また、職場の人間関係に馴染めないことも大きな要因です。

先輩職員との関係、利用者やその家族との関わり方、他職種との連携など、様々な人間関係を同時に築いていく必要があります。

この複雑な人間関係の中で、新人は孤立感を感じやすくなってしまいます。

サポート体制の不十分さ

研修やサポート体制が不十分な職場では、新人が一人で悩みを抱え込んでしまうことが少なくありません。

「分からないことを聞きにくい雰囲気」「忙しくて指導を受ける時間がない」といった環境では、新人の不安は日々大きくなっていきます。

長期勤務者が感じる「成長の限界」

一方で、数年間勤務した職員の離職理由は新人とは異なります。

キャリアアップの悩み

最も多いのは、キャリアアップの道筋が見えないことです。

福祉の現場では日々の業務に追われがちで、「この先どんなスキルを身につけられるのか」「将来的にどんなポジションに就けるのか」が不透明な職場が多く存在します。

同じような業務を繰り返すだけで、専門性を高める機会や新しい挑戦をする場がないと感じると、モチベーションは徐々に低下していきます。

給与面での不満

給与面での不満も大きな要因です。

経験を積み、責任ある仕事を任されるようになっても、それに見合った待遇改善がなされない職場では、職員の不満が蓄積されていきます。

特に、結婚や出産といったライフステージの変化に伴い経済的な負担が増える時期に、給与が上がらないことへの不安は深刻になります。

職場の方針に合わない

さらに、職場の方針や運営方法に対する意見が反映されにくい環境も、長期勤務者の離職につながります。

現場の実情を知る職員の提案が受け入れられず、改善されない問題を見続けることで、職場への愛着や責任感が薄れてしまうのです。

福祉業界特有の心理的負担

福祉の仕事には、他の業界にはない特殊な心理的負担があります。

これらの負担が蓄積されることで、最終的に離職を選択する職員も少なくありません。

利用者への責任感の重さは、常に職員の心にプレッシャーを与えます。

高齢者の介護、障がい者の支援、こどもの発達支援など、どの分野でも利用者の安全と幸せに対する責任は非常に重大です。

「もし自分のミスで利用者に危険が及んだら」という不安は、日々の業務の中で常に職員の心に存在しています。

家族対応の難しさも福祉業界特有の課題です。

利用者の家族から理不尽な要求をされたり、支援方針について理解を得られなかったりすることがあります。

こうした板挟みの状況で、職員は大きなストレスを感じることになります。

職場でのパワハラ・ハラスメント問題

近年離職理由として深刻化しているのが、職場でのパワハラ問題です。

「利用者のためなら何でも我慢するべき」という福祉業界特有の風潮が、パワハラを見過ごす土壌を作ってしまうことがあります。

実際に福祉現場で起きているパワハラの例を見てみましょう。

上司からのパワハラ

「そんなこともできないなら福祉に向いていない」

「利用者に迷惑をかけるくらいなら辞めろ」

人格を否定するような叱責を繰り返されたり、他の職員の前で大声で怒鳴られたりするケースが報告されています。

同僚からの嫌がらせ

新人や若手職員に対して、わざと仕事を教えない、必要な情報を共有しない、無視するといった陰湿な嫌がらせも少なくありません。

福祉の仕事に就く人は「人の役に立ちたい」という優しい気持ちを持った方が多いため、パワハラを受けても「自分が悪いのかもしれない」と自分を責めてしまいがちです。

しかし、どんな理由があっても、人格を否定したり、精神的に追い詰めたりする行為は許されません。

「利用者のため」という大義名分でパワハラが正当化される職場では、職員が安心して働くことはできず、結果的に離職率の高さにつながってしまいます。

つまり、「福祉だから離職率が高い」のではなく、「適切な職場環境が整備されていない事業所で離職率が高い」というのが実態なのです。

この問題に真正面から取り組み、職員が安心して長く働ける環境づくりを実践している事業所も数多く存在します。

こどもプラスのその事業所の一つです。

これらの離職理由に対して、こどもプラスが実践している具体的な対策をご紹介します。

こどもプラスが実践する離職防止対策|職員が長く安心して働ける環境づくり

こどもプラスでは、福祉業界で働く職員が直面するさまざまな課題に対して、体系的な対策を講じています。

新人職員から長く働く職員まで、それぞれのキャリア段階で抱える悩みに寄り添った支援を行っています。

新人職員の「最初の壁」を乗り越えるサポート体制

新人職員に対してはエルダー・メンター制度を導入し、先輩職員が継続的にサポートする体制を整えています。

入職時には段階的な研修プログラムを実施し、仕事の心構えや療育の基礎知識から感染症対策、虐待防止といった法定研修まで、新人職員が安心してスタートできる環境を提供しています。

また、管理者等の担当者が定期的に一人ひとりと面談を行い、日頃の悩みを相談できる体制づくりを行っています。

直接話しにくい場合でも相談しやすいよう、チャット機能等の連絡ツールも活用し、新人職員が孤立することなく職場に馴染めるよう配慮しています。

キャリアアップと専門性向上への取り組み

長期勤務者のキャリアアップ支援にも力を入れています。

経験年数や資格に応じた昇給制度の導入により、職員の成長が適切に評価される仕組みを整えています。

支援に係る資格や研修の受講を職員全員に促しており、各機能団体や自治体主催の研修については年間スケジュールを職員に周知し参加を促しています。

研修参加日・試験日の特別有給休暇や受講料の助成も行い、職員の専門性向上を積極的にサポートしています。

心理的負担の軽減とメンタルケア

福祉業界特有の心理的負担に対しては、定期的なストレスチェックを実施し、結果に応じた個別面談などで相談しやすい環境づくりを行っています。

支援業務に影響が出ないよう、早期にケアを行うことを重視しています。

業務負担の軽減にも取り組んでいます。

経験年数や資格に応じた適正な人員配置を行うと共に、一つの業務に対して担当できる職員を2名以上置くこと、

業務マニュアルを整備することで、急な休みでも代理で対応できる体制づくりを行っています。

事務作業の効率化を図るためのシステムソフトの導入も進めています。

パワハラ防止と良好な職場環境の維持

ハラスメントに関する相談ができる専用窓口を設置し、行政機関による相談先についても職員に周知しています。

ハラスメント防止に関する指針を明確に定め、健全な職場環境の維持に努めています。

職員間のコミュニケーション改善のため、月に1回程度の定期ミーティングを職員全員で行い、課題の共有や解決策の検討を行っています。

小さな問題が大きなトラブルに発展することを防ぎ、みんなが働きやすい職場づくりを進めています。

職員一人ひとりに寄り添った働き方支援

こどもプラスでは、女性職員の産休・育休取得率と復帰率の向上を目指すと共に、子育て中の職員に対する時短勤務制度も導入しています。

管理者等の担当者が個人の有給休暇の取得率を把握して個別に取得を促す体制や、休暇の申請もシステム化して申請しやすい環境づくりを行っています。

このような包括的な取り組みを通じて、こどもプラスでは職員が長期間安心して働ける環境づくりに取り組んでいます。

福祉業界での転職に不安を感じている方も、こどもプラスなら安心して新しいキャリアをスタートできます。

こどもプラスでは、放課後等デイサービスでこどもたちの成長を一緒に支えてくださる職員を募集しています。

充実したサポート体制の中で、あなたもこどもたちの笑顔のために働いてみませんか?