福祉のお仕事をしていて、「また今日も残業…」と溜息をついたことはありませんか?

長時間労働を強要するパワハラや、当たり前のようにサービス残業をする職場で悩んでいる方も多いでしょう。

実は厚生労働省の調査で、残業が多い職場ではパワハラ発生率が31.9%と、普通の職場の20.5%より大幅に高いことがわかっています。

福祉の現場でも、「利用者さんのため」という理由で過度な残業を求められるケースが後を絶ちません。

でも本当に、これが当たり前なのでしょうか?

福祉業界の残業実態|見えない労働時間の真実

残業のイメージ

福祉業界の残業問題を正しく理解するには、表面的な統計数字だけでなく、現場で実際に起きているサービス残業の実態を知ることが重要です。

数字だけでは見えない現場の本音

「福祉業界って残業が多いイメージだけど、実際はどうなの?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省の調査によると、介護職の月平均残業時間は8.2時間です。

製造業の16.4時間や情報通信業の17.2時間と比べると、意外と少なく感じるかもしれません。

出典元:全国労働組合総連合|介護労働実態調査 報告書

ですが、この数字だけで安心することはできません。

正規職員に限ると月10.2時間、非正規の方でも5.3時間の残業をしているのが現実です。

そして何より驚くのは、「残業は全くない」と答えた方は全体の3割だけ。

つまり、7割の方が毎月何らかの残業をしているということなんです。

さらに詳しく見ると、週間残業時間の分布に大きな偏りがあることがわかります。

残業時間 割合 職員の状況
残業なし 約30% 定時で帰れている層
5時間未満 24.3% 軽度の残業(最多層)
5~10時間未満 9.7% 中程度の残業負担
10~15時間未満 3.0% 明らかな長時間労働
15時間以上 1.0% 過労死ラインに近い状況

出典元:公益財団法人介護労働安定センター|令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について

これは、残業の負担が一部の職員に集中している実態を示しており、平均値だけでは見えない深刻な格差があることを物語っています。

みんなが抱える「言えない残業」の実態

もっと深刻なのは、表に出てこない「サービス残業」の問題です。

全国労働組合総連合の調査では、なんと4人に1人がサービス残業をしていることが明らかになりました。

なぜ残業代を請求しないの?

理由 割合
自分から請求していない 70.9%
請求できる雰囲気ではない 40.3%

残業代について尋ねたところ、約7割の人が「請求していない」と答えました。

さらに注目すべきは、「請求できる雰囲気ではない」と答えた人が40%を超えている点です。

これは、職場で言いたいことが言えない状況があるということですよね。

サービス残業の中身とは?

内容 頻度の目安
記録・情報収集(始業前・終業後) 70%以上(最多)
ケアの準備・片付け 約40〜50%
会議・研修(主に終業後) 約30%

最も多いのは「記録や情報収集」で7割を超える職員が時間外に対応している実態があります。

続いて「ケアの準備や片付け」が約4〜5割、そして注目すべきは「会議や研修」で、終業後に行われているケースが3割にも上ります。

つまり、本来勤務時間内に終わらせるべき仕事が、時間外に押し付けられているのです。

このように福祉業界の残業は、公式統計では見えない深刻な実態があり、多くの職員がサービス残業に悩んでいるのが現実です。

これらの状況は、次にお話しする構造的な問題と深く関わっています。

福祉現場で残業が発生する構造的な原因

問題発生のイメージ

福祉業界で残業が慢性化する背景には、人手不足や非効率な業務フローなど、個人の努力だけでは解決困難な構造的問題があります。

人手不足という根深い問題

福祉業界の残業問題を語るとき、避けて通れないのが慢性的な人手不足です。

高齢化が進む一方で、働き手は減っている。

特に2025年問題と呼ばれる団塊世代の後期高齢者入りで、介護の需要はますます増えています。

でも新しい人材は思うように入ってこない。

これはなぜでしょうか?

離職率の高さが生む悪循環

その答えの一つが、高い離職率にあります。

介護職の離職率は16.7%。特に若い方ほど、数年で辞めてしまうケースが多いんです。

離職の理由で最も多いのが「職場の人間関係の問題」。

給与の低さや身体的な負担もありますが、やはり人間関係、つまり後でお話しするパワハラ問題が大きく影響しているんです。

こうして人が辞める→残った人の負担が増える→また人が辞める、という「負のスパイラル」が生まれています。

あなたの職場でも、こんな状況に心当たりはありませんか?

非効率な業務フローの問題

残業の原因をもう少し詳しく見てみましょう。

実は、直接的な介護業務よりも「周辺業務」が残業の主な原因になっています。

記録作成、ケアの準備、会議や研修…これらが勤務時間内に終わらない、または効率化されていないことが多いんです。

管理職の方なら、連絡調整や書類作成でさらに忙しくなりますよね。

こうした構造的な問題が、次に説明するパワハラ問題と深く結びついているのです。

福祉現場の残業問題は、人手不足や業務の非効率性という根本的な構造から生まれており、これらがパワハラを誘発する土壌となっています。

残業強要パワハラの実態と深刻な職場問題

働く女性のイメージ

福祉業界では残業の多い職場ほどパワハラが発生しやすく、特に「やりがい搾取」という形で残業を強要するパワハラが深刻化しています。

福祉現場で起きているハラスメントの現実

「うちの職場は大丈夫」と思っていませんか?

残念ながら、福祉業界のハラスメント実態は想像以上に深刻です。

介護士の87%が何らかのハラスメントを目撃し、53%の方が実際に被害を受けています。

出典元:介護士のハラスメントに関する簡単アンケート

特に多いのが上司からの「精神的攻撃」。

暴言や人格否定、過度な叱責などが日常的に行われているケースが少なくありません。

残業とパワハラの恐ろしい関係

ここで注目してほしいデータがあります。

厚生労働省の調査で明らかになった、残業とハラスメントの関係性です。

  • パワハラ被害者の31.9%が「残業が多い・休暇が取りづらい」職場にいる
  • セクハラ被害者でも24.7%が同様の環境
  • 利用者からのハラスメント被害者も26.6%が同じ状況

出典元:職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要 |令和5年度厚生労働省委託事業

これって偶然だと思いますか?

実は、残業が多い職場ほどあらゆるハラスメントが起きやすいという明確な傾向があるんです。

この背景には、「残業の感染」という深刻な現象があります。

調査によると、20代の職員は50代の職員と比べて1.7~1.9倍も「帰りづらさ」を感じており、上司の残業時間が長くなればなるほど部下も帰りにくくなることが明らかになっています。

つまり、一人の長時間労働が職場全体に「感染」し、みんなが疲弊してしまう構造があるんです。

疲れた職場では心の余裕がなくなり、些細なことでイライラしたり、感情的になったりしがち。

特に管理職の方が過労状態だと、部下への当たりが強くなってしまうケースも少なくありません。

「帰りづらい雰囲気」が組織の最大の残業要因であることからも、この心理的圧迫がいかに深刻かがわかります。

「やりがい搾取」という名のパワハラ

福祉業界特有のパワハラとして、「やりがい搾取」があります。

「こどもたちのため」「利用者さんのため」という言葉で、サービス残業や過重労働を正当化する手口です。

実際の事例では、到底終わらない量の仕事を「成長のチャンス」として押し付け、断ろうとすると「やる気がない」「向いていない」と人格否定されるケースも報告されています。

声を上げられない職場の現実

さらに深刻なのは、ハラスメントを受けても53%の方が「報告しなかった」という事実です。

報告した方でも28%が「適切な措置が取られなかった」と回答。

つまり、81%の方が泣き寝入りしている状況なんです。

「特定されるのが怖い」「上司からのハラスメントで相談先がない」「報告しても何も変わらない」…こんな声が聞こえてきます。

出典元:職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要 |令和5年度厚生労働省委託事業

心と身体への深刻な影響

ハラスメントを受けた方の47.1%が「出勤が憂鬱になった」と回答し、21.7%が「仕事に集中できない」、12.1%が「退職を考えた」と答えています。

胃痛、頭痛、不眠、食欲不振…中には精神科への通院が必要になった方もいます。

これは明らかに異常な状況ですよね。

福祉業界の残業とパワハラの関係は明確で、多くの職員が心身に深刻な影響を受けています。

ですが、安心してください。

これらの問題は、適切な対策により解決可能な問題です。

最後に、こうした問題を根本的に解決しているこどもプラスの取り組みをご紹介します。

こどもプラスの残業削減・パワハラ防止の取り組み

こどもプラスでは、福祉業界で問題となっている残業の強要やサービス残業を防ぎ、職員が定時で安心して帰れる職場環境をつくることに取り組んでいます。

「利用者のため」という理由での無理な残業は一切認めず、職員の働きやすさを最優先にした職場運営を行っています。

人手不足による残業を防ぐ適正な人員配置

残業が発生する最大の原因である人手不足を防ぐため、経験年数や資格に応じた適正な人員配置を行っています。

一つの業務に対して担当できる職員を2名以上置くことや業務マニュアルを整備することで、特定の職員に負担が集中しないようにしています。

こうすることで、急な休みがあっても無理な残業をしなくて済む体制をつくっています。

同じ法人内の別の教室の職員も何かあった時には応援に来られる体制を作っており、一つの職場だけで問題を抱え込まないよう配慮しています。

人手不足による悪循環を防ぎ、みんなで支え合える環境を整えています。

事務作業の効率化で残業時間を削減

記録作成や事務作業による残業を防ぐため、事務作業の効率化を図るためのシステムソフトの導入を進めています。

業務マニュアルを整備することで、職員がこどもたちとの時間により集中できる環境をつくっています。

帰りやすい雰囲気づくりと有給取得の推進

「帰りづらい雰囲気」による残業の感染を防ぐため、管理者等の担当者が個人の有給休暇の取得状況を把握して個別に声をかけています。

休暇の申請もシステム化して申請しやすい環境をつくり、「定時で帰るのが当たり前」「有給を取るのが当たり前」という職場風土を大切にしています。

月に1回程度の定期ミーティングを職員全員で行い、業務の進め方や時間の使い方について話し合い、みんなで残業を減らす工夫を共有しています。

ハラスメント防止と相談しやすい環境

残業の多い職場で起こりやすいパワハラを防ぐため、ハラスメント防止に関する指針を定めており、「やりがい搾取」や残業の強要も明確に禁止しています。

ハラスメントについて相談できる窓口を設置し、行政の相談先についても職員にお知らせしています。

管理者等の担当者が定期的に一人ひとりと面談を行い、残業の状況や働き方について相談できる環境をつくっています。

「最近残業が多くて」「帰りづらい雰囲気で困っている」といった悩みも気軽に相談していただけます。

心の健康を守るサポート体制

残業やパワハラによる心の負担を防ぐため、定期的にストレス調査を実施し、結果に応じて個別にお話を聞く機会も設けています。

疲れが溜まって心の余裕がなくなる前に、早めにケアできるよう心がけています。

連絡ツールも活用し、直接話しにくい悩みも相談しやすい環境を整えています。

一人で問題を抱え込むことがないよう、職員の心の健康を第一に考えた職場運営を行っています。

職員の成長と働きがいを大切にした評価

「やりがい搾取」を防ぐため、経験年数や資格に応じて給料が上がる仕組みを導入し、職員の頑張りが適切に評価される環境をつくっています。

サービス残業ではなく、正当な対価を支払うことで職員を大切にする姿勢を示しています。

利用者からの感謝の言葉や、うまくいった事例をみんなで共有し、職員のやりがいを高めています。

「利用者のため」という理由で無理をさせるのではなく、職員が心身ともに健康だからこそ良い支援ができるという考えを大切にしています。

女性職員の働きやすさへの配慮

女性職員が長く働けるよう、産休・育休取得率と復帰率の向上を目指すと共に、子育て中の職員に対する時短勤務制度も導入しています。

ライフステージの変化に応じて無理のない働き方ができるよう配慮し、残業を前提とした働き方を求めることはありません。

このような様々な取り組みにより、こどもプラスでは福祉業界の残業問題とパワハラを防ぎ、職員が安心して定時で帰れる職場環境をつくっています。

福祉業界の残業問題は、確かに根深い構造的課題です。

そして残業が多い職場ほどパワハラが起きやすいという事実も、データで明確に示されています。

こどもプラスでは、働きやすさを大切にしながらこどもたちの成長を一緒に支えてくださる職員を募集しています。

残業のない職場環境で、安心して働いてみませんか?