みなさんはお仕事やご家庭で、障害のある児童の運動指導をしたことがありますか?

未経験の方はもちろん、運動指導の経験や興味があっても、障害のある児童に初めて指導する際には、少々戸惑いや緊張を覚える方もいるでしょう。

事前にコツや気をつけることを知っておくことが安心につながるかもしれません。

こちらの記事では、そのような方に向けて、障害のある児童への運動指導のコツや気をつけることについて、詳しくお伝えしたいと思います。

障害のある児童への運動指導のコツや気をつけることとは?

障害のある児童への運動指導のコツや気をつけることとは、一人ひとりにあわせた個別の配慮とアプローチです。

具体的には以下のようなものが挙げられるでしょう。

障害のある児童への運動指導のコツや気をつけること

個別のニーズの理解

同じ障害名であっても、一人ひとりの状態や得意なこと、苦手なこと、どんな風になりたいかは異なります。それぞれの子どもの状況や特性を理解し、個別のアプローチを取ることが重要です。

安全性の確保

運動指導では、子どもの安全性が最優先です。特に運動が苦手な子どもの運動指導をするときには、より注意が必要です。環境や使用する道具の安全性を確認し、ケガや事故を予防するための対策を講じましょう。

適切な運動プログラムの選定

障害に応じて、適切で効果的な運動プログラムを選定しましょう。柔軟性や強度を向上させる運動、協力プレーなど、個々のニーズに合った活動を導入します。

保護者との連携

子ども自身からだけではなく、保護者の方からお子さんについての情報を得て、連携を図りましょう。子どもについて理解を深めることが運動指導の効果につながります。また保護者の方と連携することで、保護者の方から日常生活面での協力を得やすくする効果もあります。

コミュニケーション

運動指導はコミュニケーションの1つです。障害のある児童と運動を楽しむ方法を一緒に探しましょう。自己肯定感を高めるためのポジティブな声掛けも必要です。子どもたちが成功体験を積み、運動に限らず挑戦する心を養うことができます。

上記は一例です。上記を確認し、少し大変そうと思った方もいるかもしれません。ただ障害のある児童達にとって運動指導は、運動ができるようになること以外にも大きな意味を持っています。

障害のある児童に対する運動指導の効果

ASD・ADHDなど発達障害・障害傾向のある子ども達の中には、発達の特性によって生まれつき体幹が弱い子も多くいます。

体幹が弱いと体が安定しないので、運動だけではなく、日常生活の中でも困ることがあるのです。

例えば「食事に時間がかかる」、「勉強したくても長時間座ることが難しい」、「字を書くことがうまくできない」、「友達と同じように遊べない」、「すぐに疲れてしまう」など、日常のあらゆる場面での困り事が考えられます。

困りごとが増えることによって叱られる機会が増えたり、子ども自身が周囲の子どもと比べてストレスを感じたり、情緒不安定になることも少なくありません。

また、子どもの発達には、障害の有無に限らず、中心から末端に、上から下に向かって発達していく順序性があります。

つまり、体の中心である体幹が十分に発達していなければ、その先の腕や指先、足などの発達は促されません。

まずは体の軸になる体幹をしっかりと育てておくことが大事です。

このように運動の場面以外にも集中力や総合的な発達、安定した情緒のためにも運動指導が必要と言えるでしょう。
(関連記事:なぜ発達障害(ASD・ADHD)だと体幹が弱い?3つの理由と改善策

障害のある児童への運動指導のコツや気をつけることは、「一人ひとりにあわせた個別の配慮とアプローチ」でした。

一人ひとりの子どもについて理解を深めることは根気のいることですが、運動指導によりできることを増やしていくのは、子どもたちの人生においてとても大事なことなんですね。

それでは、障害のある児童への運動指導の具体例にはどんなものがあるのでしょうか?

障害のある児童への運動指導の具体例3選

障害のある児童への運動指導の具体例を3つご紹介します。

実際にこどもプラスの教室で提供している運動療育プログラムです。

ご家庭やお仕事で取り入れてみましょう。

すり足でジャングルツアー

縄やフープ、跳び箱、コーンなどいろいろな物を使って障害物のあるコースを作ります。

横向きや後ろ向きに進むところ、ジャンプしたりくぐるところ、凸凹道などで様々な動きができるようにします。

音を立てないようにすり足で進みながら、避けたりバランスをとったりすることで、空間認知力、体幹や足の指先の力などのバランス力が強く養われます。

1人1人に合わせた豊富なアレンジで、楽しみながら体や頭を使って遊びます。

どうしたらうまく進めるかを友達と話したり、見本を見せあったりしながら、社会性やコミュニケーション能力などもしっかりと育てていけるプログラムです。
(関連記事:一律ではなくその子が必要な力を見極め育てていくことが大切です。

跳び箱飛び移りジャンプ

1段と2段の跳び箱を、低い→高い、高い→低いというように並べておき、その上をジャンプしながら進んでいきます。

速さよりも1つずつ丁寧に跳んでいくことを大事にし、最後の両足着地まで確実に行うようにします。

この遊びで身に付く力は、バランス感覚や高さ感覚、空間認知力などで、昔なら日常の遊びの中で自然と身に付けられていた力ですが、今は意識的に育てていかなければ身に付かないものばかりです。

楽しく遊びの中で育て、成長につながる力にしていきます。

(関連記事:運動で子どもの成長の土台を作り、発達を促していきます。

障害物クマ歩き

床には積み木やぬいぐるみ、スリッパなど様々な形や大きさの障害物を、間隔を空けて配置しておきます。

そして、基本のクマ歩きで障害物をまたいで避けながら歩いていきます。

障害物があることでしっかり前を向いて歩くことができ、正しいクマ姿勢に導くこともできます。

障害物の量や配置などで難易度調整をしながら行い、体のコントロール力を上げていきましょう。クマ歩きはいろんなアレンジができます。

(関連記事:ボディイメージや空間認知力を育てる「障害物クマ歩き」です。

こどもプラスの教室が運営するInstagramでも、空間認識力やバランス力、コミュニケーション能力など、総合的な力を育てるトレーニング方法を、たくさん紹介しています。

画像や動画付きでわかりやすく解説しているので、あわせてご覧ください。

障害のある児童への運動指導の具体例を3つご紹介しました。

基本を押さえたら、応用も知りたくなるのが人間ですね。

次に、障害のある児童への運動指導のレベルアップを目指すにはどうしたら良いのか、見ていきましょう。

障害のある児童への運動指導のレベルアップを目指すには?

障害のある児童への運動指導のレベルアップを目指すには、継続的な学びと実践が大切です。

当たり前のことと思った方もいるかもしれませんね。

それでは、どのような学びと実践が必要なのか具体的に見ていきましょう。

運動指導のレベルアップ方法

継続的な学習

障害のある児童に対する運動指導は進化しています。最新の研究やアプローチについて学び続け、常にベストの運動指導方法を追求することが大切です。運動指導に限らず、近年は発達障害と診断される子どもも増えてきており、発達障害に関する研究も進んでいます。運動指導はコミュニケーションの1つです。障害児との適切で効果的なコミュニケーションスキルを向上させるためのトレーニングを受けられるといいですね。独学はもちろん、運動指導やコーチングに関するコースやワークショップに参加するのもいいかもしれません。きっと、コーチングスキルや指導技術を向上させてくれるでしょう。

実践

実践での経験が大きくスキル向上につながります。「習うより慣れよ」ですね。障害のある児童たちは個々の特性が異なります。運動指導を柔軟に調整し、個別化されたサポートを都度寄り添って提供することで、いつの間にか運動指導者としてのレベルがアップしていきます。また。様々な年齢層や異なるニーズに応え続けるためには、新しいことへの挑戦が必要です。その際には自分1人の力だけでは無く、周囲との連携も必要になってくるでしょう。チームや保護者、他の専門家との連携により、運動指導者としてのレベルアップはもちろん、対応力や調整力、リーダーシップ力等も向上していくでしょう。

障害のある児童への運動指導のレベルアップを目指すには、継続的な学びと実践が大切です。

とはいえ、なかなか独学でレベルアップしていくのは大変ですね。

障害のある児童に対する運動指導に特化した資格や働き方もあります。

体系的に障害の種類や特性に合わせたアプローチを学んだり、経験豊富な指導者やコーチからアドバイスや指導を受けたりすることで、運動指導者としてのレベルを上げていくことができるかもしれません。

子どもたちにとって、レベルの高い指導者との出会いが人生を良い方向に導いてくれるでしょう。