障害のある子どもたちの成長を支える「障害児施設」での仕事に関心を持つ方が増えています。子どもたちの最も近い場所で、その発達や自立を支援する非常に重要でやりがいのある仕事です。
この記事では、障害児施設で働くために必要なこと、具体的な仕事内容、必要な資格、そして仕事の魅力について詳しく解説します。
障害児施設とは?
障害児施設は、障害のある子ども(主に18歳未満)に対し、日常生活の指導、知識技能の習得、集団生活への適応訓練などを提供する施設の総称です。
2012年の児童福祉法改正により、サービス内容が再編され、大きく「入所型」と「通所型」に分かれています。
入所型(障害児入所支援)
- 福祉型障害児入所施設: 日常生活の支援や指導を中心に行います。
- 医療型障害児入所施設: 福祉的な支援に加え、治療や看護などの医療的ケアを提供します。
通所型
- 児童発達支援(児発): 主に未就学児が対象。日常生活の基本動作や集団生活への適応を支援します。
- 放課後等デイサービス(放デイ): 就学児(小・中・高)が対象。放課後や学校休業日に、生活能力の向上や社会との交流を支援します。
補足:「障害者施設」との違い
「障害者施設で働くには」と考える方もいるかもしれませんが、「障害児施設」とは対象年齢と根拠法が異なります。
| 項目 | 障害児施設 | 障害者施設(障害者支援施設など) |
| 主な対象 | 18歳未満の児童 | 18歳以上の成人 |
| 主な根拠法 | 児童福祉法 | 障害者総合支援法 |
| 支援の焦点 | 発達支援、療育、自立に向けた準備 | 日常生活介護、自立訓練、就労支援 |
ただし、障害児施設で経験を積んだ後、障害者施設へキャリアチェンジする人や、その逆も多く、支援の根本的な考え方は共通しています。
障害児施設での主な仕事内容
職種によって役割は異なりますが、共通する主な仕事内容は以下の通りです。
1. 直接支援(療育)
子どもたちの日常生活に最も深く関わる仕事です。
- 日常生活のサポート: 食事、排泄、着替え、入浴(主に入所施設)などの介助や自立に向けた指導。
- 遊びや活動の提供: 子どもの発達段階や特性に合わせ、遊び(感覚遊び、運動遊び、ごっこ遊びなど)や創作活動を企画・実行し、心身の発達を促します。
- 学習支援: (特に放デイで)宿題のサポートや、個別の学習課題に取り組みます。
- 社会性の訓練: ルールを守ること、友達との関わり方、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などを通じて社会性を育みます。
2. 個別支援計画の作成・管理
児童発達支援管理責任者(児発管)が中心となり、子ども一人ひとりのニーズや目標に合わせた「個別支援計画」を作成します。他の職員はこの計画に基づき支援を行います。定期的にモニタリング(評価・見直し)も行います。
3. 家族支援
子どもだけでなく、その家族を支えることも重要な仕事です。
- 相談援助: 保護者の悩みや不安を聞き、家庭での関わり方について助言します。
- レスパイトケア: (主に入所施設や短期入所で)一時的に子どもを預かることで、家族の休息を支援します。
4. 関係機関との連携
子どもの支援は施設だけで完結しません。
- 学校(放デイの場合)
- 保育所・幼稚園(児発の場合)
- 病院やリハビリテーション機関
- 行政(児童相談所、市町村の福祉窓口)これらの関係機関と情報を共有し、連携して支援体制を構築します。
必要な資格とキャリアパス
「障害児施設で働くには資格が必須?」と疑問に思うかもしれませんが、無資格・未経験から「指導員(補助)」としてスタートできる事業所も多くあります。
ただし、専門的な支援を行うため、多くの施設で有資格者が中心となって活躍しています。
働く上で中心となる資格
障害児施設(特に児童発達支援や放課後等デイサービス)では、以下の資格を持つ職員の配置が義務付けられています。
- 保育士: 保育の専門家。国家資格です。子どもの発達に関する知識を活かし、療育の中核を担います。
- 児童指導員任用資格: 保育士と並び、子どもの支援に直接関わるための資格(任用資格)。
児童指導員任用資格の取得方法(主なルート)
学歴: 大学・大学院で社会福祉学、心理学、教育学、社会学を専修する学部・学科を卒業する。
実務経験: 高卒以上で、児童福祉施設での実務経験が2年以上ある。(無資格で働き始めた場合、このルートで取得を目指すことが多い)
資格: 社会福祉士、精神保健福祉士の資格を持っている。
教員免許: 小・中・高の教員免許を持っている。
専門性を高める資格
児童発達支援管理責任者(児発管):
個別支援計画を作成・管理する重要な役職です。上記の保育士や児童指導員などとして一定期間(3年または5年)の実務経験を積んだ後、必要な研修を修了することで要件を満たします。キャリアアップの大きな目標の一つです。
介護福祉士:
主に日常生活の介護(食事、入浴、排泄)が必要な医療型施設や重症心身障害児施設で需要が高い国家資格です。
機能訓練に関連する専門職:
理学療法士(PT)
作業療法士(OT)
言語聴覚士(ST)
公認心理師/臨床心理士専門的なリハビリテーションや心理的アセスメント・ケアを行います。特に医療型施設や児童発達支援センターで配置が求められます。
障害児施設で働く「やりがい」と「大変さ」
やりがい
子どもの成長を間近で実感できる
昨日までできなかったことが今日できるようになった瞬間や、心を開いてくれた時の喜びは、何物にも代えがたいやりがいです。
専門性が身につく
障害特性や療育に関する知識、個別支援計画の考え方など、専門的なスキルを日々高めることができます。
家族の支えになれる
保護者から感謝されたり、家族が前向きになったりする姿を見ることは、大きなモチベーションになります。
大変さ・難しさ
体力的な負担
子どもたちと全力で遊んだり、時には安全確保のために体を張ったりと、体力が必要な場面は多いです。
精神的な負担
子どもがパニックを起こしたり、うまくコミュニケーションが取れなかったりした時、根気強く向き合う忍耐力が求められます。
チームワークと連携の難しさ
職員間だけでなく、家族や学校など多くの人と連携する必要があり、調整が難しい場合もあります。
障害児施設に向いている人の特徴
- 子どもが好きで、根気強く向き合える人
- 小さな変化や成長に喜びを感じられる人
- チームで協力して働くことが好きな人
- 障害特性や支援方法について学び続ける意欲がある人
- 相手(子ども・保護者)の立場に立って考えられる人
まとめ
障害児施設での仕事は、子どもたちの未来の可能性を広げる、非常に社会的意義の大きな仕事です。資格がなくてもチャレンジできる道はありますが、保育士や児童指導員任用資格などを目指すことで、より専門的に、深く子どもたちの支援に関わることができます。
まずは「指導員補助」として現場を経験してみることから始めてはいかがでしょうか。
参考文献
厚生労働省「障害児支援の概要」
厚生労働省「児童指導員及び指導員の要件」
厚生労働省「児童発達支援管理責任者の要件」





