放課後等デイサービスの指定取り消しと不祥事|こどもプラスの現在の取り組み
放課後等デイサービス業界では、指定取り消し処分という深刻な不祥事が発生しています。
この不祥事は事業所の閉鎖を意味し、そこで働く職員にも大きな影響を与える問題です。
こどもプラスでは、このような業界の不祥事のリスクを踏まえ、本部主導による指定取り消し防止策を講じています。
本記事では、放課後等デイサービス業界の指定取り消し問題と、こどもプラスが現在取り組んでいる対策について詳しく解説します。
放課後等デイサービス業界の不祥事とは
放課後等デイサービス業界で発生する不祥事の中でも、最も深刻な問題が指定取り消し処分です。
代表的な不祥事「指定取り消し」とは
放課後等デイサービス業界で最も深刻な不祥事の一つが、指定取り消し処分です。
指定取り消しとは、放課後等デイサービス事業所が都道府県から「もう営業してはダメ」と言われてしまう処分のこと。
児童福祉法第21条の5の24第1項に基づく行政処分で、事業所の存続を不可能にする最も重い処罰です。
この処分を受けると、事業所は放課後等デイサービスの提供を継続できなくなり、実質的に事業の閉鎖を意味します。
さらに、不正に受給した給付費の全額返還に加え、返還額の40%に相当する加算金の支払いが求められます。
また、取り消し日から5年間は新規指定申請や既存指定の更新ができなくなります。
指定取り消しが起こる具体的な理由
近年発生している指定取り消し事例を分析すると、以下のパターンが多く見られます。
1. 人員基準違反と虚偽報告
- 児童発達支援管理責任者(児発管)が実際には配置されていない
- 必要な人数の指導員がいないのに書類上は配置されているように偽装
- 実際は働いていないのに出勤簿や勤務表を偽造して「働いている」と虚偽報告
- 指定申請時に人員確保の見通しがないにも関わらず虚偽の申請を行う
2. 書類作成・管理の重大な不備
- 個別支援計画が適切なプロセスを経ずに作成されている
- アセスメント、支援会議、モニタリングの記録が存在しない
- 保護者の同意書や重要事項説明書を偽造
- サービス提供記録と実際の提供内容が一致していない
3. 不正請求・水増し請求
- 実際にはサービスを提供していない日について虚偽の記録を作成し請求
- 児発管欠如減算や個別支援計画未作成減算を適用せずに満額請求
- 人員配置基準を満たしていないのに児童指導員等加配加算を請求
- 要件を満たしていない福祉専門職配置等加算を不正に算定
4. 運営基準の慢性的な違反
- 利用者の安全管理体制が整備されていない
- 保護者への適切な説明や同意手続きが行われていない
- 衛生管理や事故対応マニュアルが未整備
- 職員への適切な指導・研修が実施されていない
指定取り消しに至る「不正の連鎖」
多くの事例で共通しているのは、単一の違反ではなく「不正の連鎖」が起きていることです。
例えば、人員確保の困難から始まった虚偽の配置報告が、その後の個別支援計画の不備、減算未適用による不正請求、監査時の虚偽答弁へと連鎖的に発展し、最終的に悪質性の高い不正として指定取り消しに至っています。
また、内部関係者(職員や保護者)からの情報提供により発覚するケースが多く、不正な運営は必ず外部の目に晒されるリスクが常に存在することも重要なポイントです。
放課後等デイサービス業界における不祥事の背景
急速な事業所増加に伴う問題
放課後等デイサービス事業所は近年急激に増加しており、一部では制度理解が十分でないまま参入するケースも見られます。
このような状況が、意図的ではない不正や運営基準違反を引き起こす要因の一つとなっています。
人材確保の困難さ
特に児発管や有資格者の確保は業界全体の課題となっており、人員基準を満たすことができずに虚偽の報告に至るケースが見られます。
制度の複雑さと頻繁な改正
報酬制度や加算・減算の要件は複雑で、頻繁に改正されるため、理解不足による過誤や不正が発生しやすい環境にあります。
経営的な圧力
経営環境の変化により、適切な運営基準の維持が困難になるケースが見られます。
不祥事の発覚パターン
内部関係者からの情報提供
多くの不祥事は、事業所内部の職員や利用者の保護者からの情報提供により発覚します。
運営上の問題を発見した職員が行政機関に通報するケースや、
サービスの質や対応に疑問を持った保護者からの情報提供により問題が明らかになるケースが見られます。
行政の定期監査による発覚
都道府県等による定期的な実地指導や運営指導の際に、書類の不備や運営実態の問題が発覚するケースです。
監査では、人員配置状況、個別支援計画の適切性、サービス提供記録の正確性などが詳細にチェックされます。
利用者・保護者からの相談・苦情
利用者への対応や支援の内容について、保護者から行政機関に相談や苦情が寄せられることで問題が発覚するケースです。
特に個別支援計画の内容と実際の支援が大きく乖離している場合や、適切な支援が提供されていない場合に起こりやすいパターンです。
外部機関との連携における発覚
学校や相談支援事業所、医療機関などとの連携の中で、事業所の運営や支援内容に問題があることが判明するケースもあります。
このような指定取り消しに至る不祥事は、放課後等デイサービス業界全体の信頼を損なう深刻な問題となっています。
次に、こうした不祥事が職員に与える影響について解説します。
放課後等デイサービスの不祥事が職員に与える影響
放課後等デイサービス業界で不祥事が発生すると、働く職員にも深刻な影響が及びます。
即座に発生する経済的打撃
突然の失業と収入の断絶
不祥事により事業所が閉鎖になるので、当然そこで働いている職員は仕事を失います。
特に問題となるのは、指定取り消し処分は即座に効力を発するため事前の予告期間がないことです。
労働基準法では解雇の30日前予告が必要ですが、指定取り消しの場合は行政処分のため、事業所側も予測できず、職員への事前通知が困難になります。
給与・賞与の未払いリスク
不正なお金の請求などの不祥事が発覚すると、事業所は大きな借金を背負うことになります。
返還金と加算金により、事業所の経営状況が急激に悪化する場合があります。
この負債により、事業所の資金繰りが急激に悪化し、職員の給料や賞与が払われなくなるケースが発生します。
退職金制度がある場合でも、支払い能力を失った事業所からの回収は極めて困難になります。
長期的なキャリアへの深刻な影響
転職活動での説明責任とハンディキャップ
特に管理職や児発管だった人は、転職の面接で「前の職場はなぜ辞めたんですか?」と聞かれたとき、指定取り消しについて説明が必要になります。
業界内では指定取り消し情報が共有されるため、関わった職員の経歴に疑問を持たれる可能性があります。
特に児発管のような責任の重い職種では、「なぜ不正を防げなかったのか」「管理能力に問題があったのではないか」といった疑念を持たれるリスクがあります。
専門職としての信頼性への打撃
放課後等デイサービス業界は比較的狭い業界のため、不祥事に関わった事業所の情報は業界内で広く知られることになります。
これにより、専門職としての信頼性に傷がつき、同業界での再就職が困難になる場合があります。
精神的・心理的な影響
法的責任への不安と恐怖
指定取り消しに至る不祥事では、場合によって法的な責任が問われることがあります。
職員個人が直接的な責任を問われなくても、「自分も何らかの責任を問われるのではないか」という不安を抱える職員が多く見られます。
職業への不信と燃え尽き症候群
真面目に働いていた職員ほど、「自分の専門性が無駄になったのではないか」「この業界で働く意味があるのか」といった深刻な疑問を抱くことがあります。
特にこどもの支援に情熱を持って取り組んでいた職員にとって、事業所の不正により支援が中断されることは大きな精神的ダメージとなります。
社会保険・雇用保険への影響
失業給付の受給条件
突然の事業所閉鎖により失業した場合、雇用保険の失業給付を受けることは可能ですが、離職理由の証明や必要書類の入手が困難になる場合があります。
事業所が機能停止状態になると、離職票の発行や各種証明書の取得に時間がかかることがあります。
社会保険の継続手続き
健康保険や厚生年金の継続手続きも、事業所の協力が得られない場合は職員自身で行う必要があり、手続きの煩雑さと費用負担が発生します。
このように、放課後等デイサービス業界の不祥事は職員のキャリアや生活に長期的な影響を与える可能性があります。
放課後等デイサービス業界での転職を検討する際、指定取り消しなどの不祥事リスクについて不安を感じる方も多いでしょう。
「書類作成って難しそう…間違えたらどうしよう」
「法律のこと、よくわからないけど大丈夫かな」
こうした不安を抱えている方にこそ、こどもプラスの取り組みについて知っていただきたいと思います。
不祥事に関するこどもプラスの取り組みについて
こどもプラスでは、放課後等デイサービス業界の不祥事リスクを踏まえた包括的なサポート体制を構築しています。
本部による情報提供とサポート
法令遵守やコンプライアンスに関する研修動画を提供し、職員の理解向上をサポートしています。
また、メールマガジンを通じて業界の最新情報を定期的に配信し、法改正があった場合は速やかに情報提供と対応案内を行っています。
教室運営に必要な書式のひな形も提供し、適切な書類作成をサポートしています。
巡回による現場サポート
担当スーパーバイザーが加盟教室を巡回し、運営に関する相談対応や情報提供を行っています。
その他の取り組み
請求業務においては複数人でのチェック体制を推奨し、ミスの防止に努めています。
また、同業者の不正事例に関する情報を共有し、類似の問題の予防に役立てています。
また、法改正時には変更のポイントを分かりやすく解説し、必要な書式の提供も行っています。
職員のメンタルヘルス面では、定期的なストレスチェックの実施を推奨するなど、安心して働ける環境づくりに取り組んでいます。
この記事では、放課後等デイサービス業界の指定取り消しや不祥事について詳しく解説してきました。
こどもプラスでは、職員がこどもたちの支援に集中できる環境を提供しています。
不祥事リスクに対して適切な対策を講じながら、長期的なキャリア形成をサポートする取り組みを今後も継続してまいります。
「こどもプラスのハラスメント対策」のカテゴリでは、こどもプラスの職員を守る各対策について詳しく解説しています。