2025年10月15日
児童指導員に向いている人とは?現場で実践している「考え方」を知ろう
児童指導員の仕事は、支援計画の作成や保護者との連携、チーム内での報告・共有など、思っている以上に幅広い役割が求められます。
だからこそ「どんな人が児童指導員に向いているのか」を理解するには、まずこの仕事の本質を知ることが大切です。
この記事では、児童指導員に向いている人の特徴、現場で求められる考え方について解説します。
これから目指す方が「自分にもできるかもしれない」と思えるような、現場のリアルと成長のヒントをお届けします。
児童指導員という仕事の役割を知ろう
児童指導員に向いている人を考えるうえで、まず知っておきたいのは「児童指導員とはどんな仕事なのか」という点です。
児童指導員は、子どもと一緒に過ごすだけの職業ではありません。
子どもの成長を支えるために、家庭や地域、学校、行政など、さまざまな人や組織と協力しながら支援の輪を築く専門職です。
そのため、子どもと関わる“現場の仕事”と、支援を設計・調整する“裏側の仕事”の両方を担うという、多層的な役割を持っています。
この仕事の本質を理解することが、自分に向いているかどうかを判断する第一歩になります。
子どもだけでなく「家庭や地域とつながる支援」
児童指導員の仕事は、施設の中で子どもと関わるだけでは完結しません。
子どもの健やかな成長は、家庭・学校・地域社会が連携して初めて実現するものです。
そのため、児童指導員は「家庭」「学校」「行政」「地域」をつなぐ架け橋として、子どもを取り巻く支援のネットワークを整える役割を担います。
保護者とは日々の連絡や面談を通じて家庭での様子を共有し、子育ての悩みを一緒に考えます。
学校や児童相談所、自治体とも情報を連携しながら、一人ひとりの子どもに合わせた支援計画を立てることも欠かせません。
また、地域イベントやボランティア活動などを通して、子どもが社会と関わる機会を作るのも大切な役割です。
児童指導員はこうした関係をつなぎ、子ども・家庭・チーム・地域が一体となって支援できる「支援の輪」を築く存在です。
「支えながら、一緒に歩む」という考え方
児童指導員は、子どもに何かを一方的に“教える人”ではなく、そばで寄り添いながら“支え、一緒に歩む人”です。
子どもが自分のペースで成長していけるように、焦らず見守り、小さな変化を受け止める姿勢が求められます。
たとえば、言葉で気持ちを伝えにくい子どもが、行動でサインを出すことがあります。その行動を「問題」として叱るのではなく、「何を伝えようとしているのだろう?」と考えることが大切です。
児童指導員はその背景を理解し、安心できる環境を整えることで、子どもの自己肯定感や自立心を育てていきます。
このように“子どもと同じ目線で考え、支えながら歩む姿勢”を持てる人は、児童指導員に向いている人といえるでしょう。
相手を変えようとするのではなく、「一緒に成長していく」ことを大切にできる人こそ、この仕事の本質を理解している人です。
想像よりも幅広い「現場の仕事」
「児童指導員は子どもと遊ぶ仕事」というイメージを持つ人も多いですが、それは仕事のごく一部にすぎません。
実際には、子どもと直接関わる時間だけでなく、支援計画の作成や会議、保護者対応、教材準備、記録作成など、さまざまな業務があります。
あそびや活動も、ただ楽しむためではなく、子どもの発達段階に合わせた療育の一環として計画的に行われます。
たとえばソーシャルスキルトレーニング(SST)や運動療育など、目的に基づいた活動が日常的に行われます。また、送迎業務や環境整備、地域との行事運営なども重要な仕事です。
こうした多面的な仕事内容を理解することで、「思っていた仕事と違った」と感じるミスマッチを防ぐことができます。
専門知識とチームでの協働が求められる仕事だからこそ、幅広い視点と責任感を持つ人が、児童指導員に向いている人といえるでしょう。
次に、児童指導員に向いている人・向いていない人の特徴を具体的に見ていきましょう。
児童指導員に向いている人・向いていない人の特徴
児童指導員に向いている人は、子どもの小さな変化を見つけ、寄り添いながら支援できる人です。
現場では、子どもの変化を見逃さない観察力や、長期的に支援を続ける粘り強さ、そして感情をコントロールしながら関係を築く冷静さなど、専門職としての力が求められます。
児童指導員に向いている人
児童指導員には、子どもの心や行動のわずかな変化に気づき、適切な関わりで発達を支えていける感性と姿勢が求められます。
①観察力
たとえば、いつもより元気がない、表情が少し曇っている――そんな微細な変化に気づける観察力は欠かせません。子どもの言葉にならないサインを丁寧に読み取り、必要なサポートへつなげることが支援の第一歩になります。
②共感力
また、子どもの気持ちを理解しようとする共感力も重要です。ただし、感情的に同化するのではなく、子どもの立場を想像しつつ、客観的に支援できるバランス感覚が求められます。
③忍耐力・粘り強さ
一方で、子どもの成長はすぐに結果が出るものではありません。焦らず、時間をかけて関わる忍耐力や粘り強さがある人は、現場で信頼される児童指導員に育っていきます。うまくいかない日があっても、「今日できたこと」「昨日より少し頑張れたこと」を認めながら支援を続けられる人です。
④臨機応変さ・誠実さ
さらに、状況が変わっても柔軟に対応できる臨機応変さ、そして子どもや保護者から信頼を得られる誠実さ・温かさも欠かせません。
児童指導員に向いている人は、結果だけでなく“努力や過程”を一緒に喜べる人。小さな前進を共に喜ぶ姿勢が、子どもの自己肯定感を育てる力になります。
これらの特性は単なる「優しい人」という枠を超えた、専門職としての行動力と戦略性です。
観察力は「支援仮説を立てるためのデータ収集」、忍耐は「子どものペースを保障する支援戦略」と言い換えられます。児童指導員に向いている人とは、感情だけでなく、思考を使って支援をデザインできる人です。
児童指導員に向いていない人
一方で、特定の性格傾向が、児童指導員として働く際の壁となることがあります。
①感情の起伏が激しい人
感情の起伏が激しい人は、子どもの行動や保護者の言葉に感情的に反応してしまい、支援の冷静さを欠いてしまうことがあります。特にトラブル対応の場面では、自分の感情を一歩引いて見つめ、冷静に判断する力が求められます。
②自分の価値観を押し付けがちな人
「こうすべき」「普通はこう」という考えを一方的に伝えると、子どもの主体性を奪ってしまう可能性があります。児童指導員に向いている人は、自分の正しさではなく、子ども本人の“選び取る力”を尊重できる人です。
③完璧主義・他人と比べすぎる人
完璧主義や他人と比べすぎることは、疲弊の原因になります。児童支援は思い通りに進まないことが多く、他の職員や子どもと比べて落ち込んでしまう人は少なくありません。「できなかったこと」より「続けていること」に目を向けることが、長く働くためのコツです。
ただし、これらの傾向があるからといって「児童指導員に向いていない」と決めつける必要はありません。
感情コントロールを学ぶアンガーマネジメントや、ストレスと上手に向き合うセルフケア技術を身につけることで、大きく改善できます。
さらに、先輩職員の関わり方を観察したり、困った時はチームで相談したりすることで、支援の幅が広がっていきます。
児童指導員の仕事は、完璧さよりも「成長する姿勢」が何より大切です。最初から向いている人だけで成り立つ職場ではなく、経験を重ねながら“向いていく”職業と言えるでしょう。
児童指導員に向いている人・向いていない人の違いとは?
このように見ると、「児童指導員に向いている人」と「そうでない人」の違いは、性格の優劣ではなく、支援への向き合い方にあります。
努力や学びを重ねることで、誰でも支援の力を伸ばしていくことができます。
向いているかどうかを悩むよりも、「どうすればもっと良い支援者になれるか」を考え続けられる人こそ、真に児童指導員に向いている人といえるでしょう。
次に、児童指導員に向いている人の考え方やスキルを詳しく見ていきましょう。
児童指導員に向いている人が実践している考え方とスキル
児童指導員に向いている人は、生まれ持った性格だけでなく、日々の現場の中で“考え方”と“スキル”を磨いていける人です。
支援の質を高めるのは、感情的な優しさではなく、観察・記録・共有・協働・思考という一連の専門的な行動です。
①観察・記録・共有のスキル
児童指導員の支援は、感覚や経験だけに頼るものではありません。
子どもの行動や変化を客観的に「観察」し、それを具体的な言葉で「記録」し、チームで「共有」することが、質の高い支援の土台になります。
たとえば、「落ち着きがない」といった曖昧な表現ではなく、「5分間の活動中に椅子から3回立ち上がった」といった事実の記述が重要です。客観的な記録によって、感情的な判断や思い込みを防ぎ、子どもの行動の背景を正確に分析できます。
記録は個人のメモではなく、チーム全体の共通財産です。
「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」という5W1Hを意識し、事実・考察・今後の対応まで整理して書くことで、次の支援へとつながります。
この“観察→記録→共有”の流れを大切にする人は、確実に支援の質を高めていけるタイプです。
児童指導員に向いている人は、このプロセスを“書類作業”ではなく“子どもの成長を見える化する仕事”と捉えています。
②チームで支援を進めるスキル
児童指導員の仕事は、決して一人では完結しません。
心理士、保育士、看護師など、異なる専門職と連携し、チームとして子どもを支えることが求められます。
困ったときに一人で抱え込むのではなく、「相談」「共有」「協働」で課題を解決する姿勢が大切です。
たとえば、子どもの行動に悩んだとき、先輩に「この行動の背景をどう見ますか?」と意見を求めたり、保護者に「家庭ではどういう様子ですか?」と丁寧に尋ねたりする。
こうしたコミュニケーションを積み重ねることで、より現実的で一貫性のある支援が可能になります。
チームで支えることは、子どもにとって安心を生むだけでなく、支援者自身を守るセーフティネットにもなります。感情的な負担を分かち合い、共に学びながら成長していける環境をつくれる人こそ、児童指導員に向いている人といえるでしょう。
③行動の背景を読み解く「支援的思考」
児童指導員に向いている人は、子どもの行動を「問題」と捉えるのではなく、「伝えたいサイン」として理解しようとします。
これは「支援的思考」と呼ばれる考え方で、一見すると困った行動にも意味があると考える姿勢です。
たとえば、「授業中に立ち歩いてしまう」子どもがいたとします。
それは「わざとふざけている」のではなく、「内容が難しくて不安」「じっとしていると落ち着かない」「先の予定が分からず不安」といった理由が隠れているかもしれません。
このように、行動の“氷山の下”にある感情・特性・環境を読み取ることで、罰ではなくサポートへと支援を転換できます。
児童指導員に向いている人は、「なぜできないのか」ではなく、「どうすればできるようになるか」を考え続けられる人です。
支援は、「観察 → 仮説 → 実践 → 振り返り」というサイクルで成長していくものです。
この循環を意識し、失敗や試行錯誤を次の支援に活かせる人が、現場で信頼される児童指導員へと育っていきます。
児童指導員に向いている人が直面する理想と現実
児童指導員に向いている人ほど、「子どもの力になりたい」「支えになりたい」という強い理想を持っています。
しかし、実際に現場に立つと、その理想と現実のギャップに戸惑うことも少なくありません。
子どもとの関わりは喜びに満ちている一方で、想像以上に体力・精神力を必要とする場面も多くあります。
「優しい人=向いている」とは限らない
児童指導員の仕事には確かに“優しさ”が欠かせません。しかし、現場では「優しいだけでは支えきれない瞬間」が数多くあります。
本当に児童指導員に向いている人は、感情的な優しさに加えて「冷静な判断力」と「専門的な支援力」を持ち合わせています。
子どものつらい境遇や感情に深く共感しすぎると、自分自身がその感情に巻き込まれ、心身が疲弊してしまうことがあります。
これを「共感疲労」と呼び、支援者が陥りやすい落とし穴のひとつです。支援の現場では、子どもを思う気持ちを保ちながらも、少し距離を取って冷静に判断する“専門的な共感”が求められます。
また、「優しさ」と「甘やかし」は異なります。
子どもの要望をすべて受け入れることは一見優しさに見えても、子どもの成長機会を奪うことになりかねません。時には「今は我慢しよう」「次はこうしてみよう」と伝える勇気も、真の優しさです。
児童指導員に向いている人は、子どもの感情に寄り添いながらも、将来を見据えて“育つ力”を支える人。
そのためには、感情よりも冷静な支援を選ぶ場面も必要なのです。
体力・メンタルの壁
児童指導員の仕事は、子どもの安全と成長を預かる責任の重い仕事です。その分、体力面・精神面の両方に負担がかかるのは自然なことかもしれません。
疲れるのは「向いていないから」ではなく、それだけ真剣に子どもと向き合っている証拠です。
体力面では、外遊びや送迎、行事の準備など、意外と動きの多い仕事です。
特に長期休暇中は朝から夕方まで活動が続くため、体力的な疲労を感じやすい時期でもあります。
精神的にも、保護者との関係構築や記録業務、職員間の連携など、気を配ることが多く、プレッシャーがかかります。
こうした壁を乗り越えるために、児童指導員に向いている人はセルフケアの習慣を大切にしています。
- 仕事と私生活の切り替えを意識し、趣味や運動など“自分を整える時間”を確保する
- 疲れたときは無理をせず、上司や同僚に相談する
これらはどれも、支援の質を保つための立派なスキルです。
「しんどい」と感じたときに立ち止まれる人ほど、長く働ける人です。
自分の限界を知り、適切に助けを求められることも、児童指導員に向いている人の大切な特性といえるでしょう。
児童指導員に向いている人が「この仕事を続けられる」理由
児童指導員という仕事は、決して楽な道ではありません。体力・精神面の負担や、子どもの変化がすぐに見えないもどかしさから離職してしまう人もいます。
それでも、多くの児童指導員に向いている人が、この仕事を何年も続け、現場を支えています。
児童指導員を「続けられる人」の共通点
児童指導員として長く働き続けている人には、共通する考え方と価値観があります。
それは“完璧さ”ではなく、“誠実さ”と“柔軟さ”を大切にしているということです。
①成長を「目に見えない成果」として受け止められる
子どもの支援は、数値や成果で測れるものばかりではありません。
笑顔が増えた、落ち着いて話を聞けるようになった――そんな小さな変化の中に、大きな成長が隠れています。
児童指導員に向いている人は、こうした“目に見えない進歩”に価値を見出し、日々の支援を続ける力に変えています。
②仲間と支え合う文化を大切にしている
現場で困ったとき、一人で抱え込まず、同僚やチームと支え合えることも重要です。
「誰かに相談することは、弱さではなく強さ」――この価値観を持っている人ほど、長く働ける傾向があります。
会話や雑談の中で笑い合える職場関係が、明日も頑張ろうと思えるエネルギーになります。
③子どもの“小さな成功”を喜べる心
子どもが自分の気持ちを言葉にできた、仲間に「貸して」と言えた――そんな瞬間を共に喜べる人。
その積み重ねが、仕事の喜びや誇りへとつながります。
④仕事とプライベートの切り替えが上手
長く続けられる人は、「支援者としての自分」と「一人の自分」をきちんと分けています。
趣味や休息の時間を確保し、心と体を整えることも立派なプロ意識です。
セルフケアを“自分を守るスキル”として実践できる人ほど、持続的に力を発揮できます。
キャリアパスと資格のステップ
児童指導員は、経験を重ねることで次の段階へとステップアップできる専門職です。
直接支援の現場を経て、計画づくり・チーム運営・地域連携といったより広い役割を担う道が開けています。
役職 | 主な役割 | 必要な経験(例) | 必要な研修・資格(例) |
---|---|---|---|
児童指導員 | 子どもの直接支援、療育活動の実施 | 任用資格要件を満たす経験 | 児童指導員任用資格 |
児童発達支援管理責任者(児発管) | 個別支援計画の作成・管理、職員の指導 | 3年以上の支援・相談業務 | 基礎研修+実践研修修了 |
相談支援専門員 | サービス計画作成、関係機関との調整 | 3〜10年の相談・介護経験 | 相談支援従事者初任者研修 |
施設長 | 施設運営・職員統括 | 3年以上の児童福祉施設経験 | 社会福祉士資格など |
このように、児童指導員は「終わりのない仕事」ではなく、専門職としての成長ルートが明確に示されています。
現場で得た経験は、そのまま次のキャリアへの土台になります。
児童指導員を「続けてよかった」と感じる瞬間
児童指導員のやりがいは、時間をかけてじっくりと実感できるものです。
関わった子どもが成長し、笑顔で挨拶してくれた時。卒園や卒業の後に「先生、覚えてる?」と会いに来てくれた時。
そうした一つひとつの出会いが、仕事を続けてきた意味を教えてくれます。
「先生がいてくれたから今の自分がある」と言われた瞬間――。それは、どんな報酬よりも心に響く言葉です。
この仕事は、短期的な成果よりも、人の人生に深く関われる長期的な支援が中心にあります。
だからこそ、児童指導員に向いている人は“結果ではなく関わり”に価値を感じ続けられるのです。
退所後も施設を「帰る場所」として訪ねてくれる子どもたちとの関係(アフターケア)は、この仕事が“終わらない支援”であることを象徴しています。
時間が経っても残る絆、それこそが、児童指導員という職業が持つ最大の魅力です。
※現場で働く児童指導員へのインタビュー記事はこちらからご覧ください
こどもプラスでは、全国の教室で児童指導員を募集しています
児童指導員の仕事に「向いているかも」と感じた方は、実際の現場を見てみることから始めてみてください。
あなたの思いや強みを活かせる職場が、きっと見つかります。